N501Y変異株の急激な増加によって懸念される東京都内の危機的状況とは
2021年4月現在、関西地域で爆発的な新型コロナ患者の増加が見られています。
その要因として、N501Yという変異を持つイギリス由来のVOC202012/01変異株(またはB.1.1.7、本稿では簡潔にN501Y変異株とします)の増加が関連していると考えられますが、東京都内でも変異株の増加が見られており、今後の患者数・重症者数の増加が懸念されます。
関西地域では「急激な患者数増加」「重症者の割合の増加」「若年層での重症化」が起こっている
大阪府や兵庫県など関西地域では新型コロナ患者数が急増しており、医療体制は危機的状況に至っています。
第4波は、3週間以上にわたり、第3波を大きく上回る速度・規模で急拡大していることが分かります。
また、重症者も急激に増加し4月16日時点で274人となっており、すでに重症病床数のキャパシティを大きく超えています。
これまでの第3波までの傾向と異なる点として、重症化する感染者の割合が高いこと、そして重症者の中に比較的若い年齢層の患者が見られることが挙げられます。
東京都の第3波のピーク時には1日2000人を超える感染者がいましたが、重症者数のピークは160人でした(それでも十分多いですが)。
大阪府の第4波の感染者数は、現時点では東京都の第3波よりも合計の感染者数は下回っているにもかかわらず、重症者数は274人と東京都の重症者数のピークを大きく上回っています。
年齢層の内訳や重症者の定義が異なるため正確な比較はできませんが、第4波では重症者の割合が多いことがうかがえます。
また4月16日の大阪府の発表資料を見ても新規重症者の中に「20代女性 基礎疾患なし」とあり、これまではあまり重症化していなかった若い基礎疾患のない人も一部重症化していることが分かります。
これらの「急激な患者数の増加」「感染者のうち重症者の割合の増加」「若い世代における重症者の増加」は、変異株の感染拡大が大きく影響していると考えられます。
大阪府では、新規感染者数のうち2〜3割でN501Y変異を有する変異株かどうかを判定するためのPCR検査が行われています。
この変異株PCR検査が行われている事例の中で、陽性の占める割合は3月以降急激に増加しており、現在は8割を超えています。
つまり、大阪府での新型コロナウイルスはN501Y変異株が従来のウイルスに置き換わってきている状況です。
現在、国内で検出されるN501Y変異を持つ変異株の大半はイギリス由来の変異株であることが分かっており、この変異株は従来の新型コロナウイルスと比較して、
になることが分かっています。
東京都でもN501Y変異株が急激に増加している
これまで東京都では、E484K変異という免疫逃避と呼ばれる変異の入った変異株が多くを占めていました。
この変異株は、
・ワクチン効果の低下
・再感染のリスク
などが懸念されていますが、N501Y変異のような感染性増加や重症化との関連は指摘されていません。
しかし、3月下旬から、東京都でもN501Y変異株の占める割合が増加しており、40%に迫る勢いとなっています。
これは非常に危険な徴候と考えられます。
現在の東京都内でのN501Y変異株の占める割合は、ちょうど大阪府の1ヶ月前の状況に近いと考えられます。
イギリスでの拡大の状況を見ても、N501Y変異株が占める割合が1ヶ月ほどで40%→80%に達している地域もあります。
この状況が続けば東京都でもN501Y変異株が主流となり、関西地域のような感染者の急激な拡大、重症者数の増加、若い世代での重症化につながる可能性があります。
N501Y変異を有する変異株は現時点ではE484K変異を持たないイギリス由来の変異株が大半を占めており、新型コロナワクチンが有効と考えられます。
流行の拡大抑制のために、ワクチン接種を進めていく必要がありますが、現状の接種スケジュールではこの第4波を抑えることは難しいでしょう。
また、東京都内でも蔓延防止等重点措置が適用されましたが、これまでのような対策では変異株に対しては十分な効果が得られず、より強力な措置が必要となるかもしれません。
私たち一人ひとりができることは、感染対策の徹底です。
・できる限り外出を控える
・屋内ではマスクを装着する
・3密を避ける
・こまめに手洗いをする
といった基本的な感染対策をより一層遵守するようにしましょう。