「軍の兵士にやられた」北朝鮮で民間人が襲われる事件が続発
北朝鮮は2日、少なくとも23発のミサイルを発射。3日にも大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む3発を発射したと見られており、前例のない軍事挑発を続けている。
金正恩総書記の大胆さの裏には核武装を実現したことの「自信」があるのかもしれないが、それだけで国の安定は担保されない。実際のところ、北朝鮮国内の混乱は増す一方だ。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、兵役満了を控えた兵士が民家や農場を襲う事件が多発しているという。
両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の情報筋は、「現地に駐屯する朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第10軍団の兵士たちが部隊周辺の協同農場や村を襲撃し、収穫した農作物を強奪する事件が多発している」と伝えた。ただでさえ食糧難に苦しんでいる農民からは、当局と兵士に対する怨嗟の声が上がり、信訴(告発)が相次いでいる。その数は、道内の三水(サムス)、甲山(カプサン)などで、10月だけで11件に達する。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
豊山(プンサン)では、兵士の集団が夜に邑(郡の中心地)と周辺の農村を次々に襲撃、豚、犬、鶏、山羊などの家畜を盗む事件が複数件発生した。不満の高まりを受け、郡の保衛部(秘密警察)が慌てて捜査に乗り出し、犯人を摘発した。
逮捕された副小隊長は来年に除隊を控え、部下を連れて協同農場の脱穀場と農民の家を襲撃し、コメ400キロ、豚1頭、山羊5頭を盗み出し、顔見知りの民間人に売ってカネを受け取っていたことが明らかになった。
朝鮮人民軍では、横流しなどにより充分な食糧が届かず、空腹に耐えかねて農場や民家を襲う事件が多発しているが、今回の事件は腹が減ったために起こした事件ではなかった。
襲撃に参加した兵士は、副小隊長同様に除隊を控えており、その準備のために盗みを働いたという。軍団の中では、先立って除隊した兵士から届いた「除隊準備をまともにせずに除隊すれば餓死する」との手紙の内容が噂として広まり、犯行を煽ったようだ。それは根拠のない話ではない。
除隊してから職場に配属されるまでにはしばらく時間がかかるが、その間に商売をするなどして食いつながなければ、餓死のリスクが高まるのだ。それで、除隊後の生活のために盗みを働いたというわけだ。
現在、軍団やその傘下の旅団の政治部、参謀部は、軍官(将校)を教官としてすべての大隊に派遣し、民間人との関係を円満に保て、夜間に無断外出して悪事を働けば厳しく取り締まるなどと思想教育を行っている。だが、このようなカンパニア(一時的なキャンペーン)的な思想教育と統制教化で、問題は解決しないだろうと情報筋は見ている。