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永瀬拓矢王座(28)ヤバいほどに用意周到! 藤井聡太二冠(18)残り時間は大丈夫? 叡王戦本戦2回戦

松本博文将棋ライター

 5月31日10時。東京・シャトーアメーバにおいて第6期叡王戦本戦トーナメント2回戦▲永瀬拓矢王座(28歳)-△藤井聡太二冠(18歳)戦が始まりました。

 振り駒の結果、「歩」が1枚、「と」が4枚出て永瀬王座先手と決まり、画面向かって右側に永瀬王座、左側に藤井二冠が座りました。

 両者一礼して、対局開始。永瀬王座はすぐに飛車先の歩を伸ばしています。王道スタイルの藤井二冠はいつもどおり、お茶を飲んだあと、こちらも飛車の前の歩を進めます。

 角換わりに進むかと思われた最序盤。永瀬王座は角筋を止めてそれを拒否しました。ほとんど時間を使っていないところを見れば、練りに練った用意の作戦であることがうかがえます。

 永瀬王座は手早く銀を繰り出し、攻勢を取りました。対して藤井二冠は熟慮で腰掛銀に構えます。

 永瀬王座の側からは仕掛ける順も有力そうに見えました。しかし間髪をいれずノータイムで守りの銀を三段目に上がります。

 21手目。藤井二冠は6筋から歩を突っかけて仕掛けました。対して永瀬王座はまたもや間髪をいれず、飛車を6筋に回ります。「すべて研究しています」と言わんばかりの永瀬王座の姿勢。ABEMA解説は阿久津主税八段と村山慈明七段。両者ともに驚きの声をあげました。

村山「恐ろしい人ですね、永瀬王座、本当に」

阿久津「▲6八飛車、ノータイムで回るって、なんすかね?」

村山「研究であることは間違いないんですよね」

阿久津「これも研究してるんですね。いやあ・・・。なかなか、永瀬さんはやっぱり、ヤバいですね」

村山「すごいなあ・・・。ヤバいっすね」

 藤井二冠も意表を突かれたのは間違いないでしょう。ここでまた考慮に沈みます。

 時刻はそろそろ11時。持ち時間3時間のうち、永瀬王座が1分しか使っていないのに対して、藤井二冠はそろそろ1時間となります。中終盤でこの時間差がどう影響してくるでしょうか。

 本局の勝者は準決勝で丸山忠久九段と対戦します。

 反対側の山では佐々木大地五段がベスト4進出を決めています。

 明日6月1日の渡辺明名人-斎藤慎太郎八段戦をもって、2回戦はすべて終わります。両者が戦った将棋名人戦七番勝負は先日、渡辺名人防衛で終わりました。

 もし渡辺名人が挑決まで勝ち上がった場合。永瀬王座が対戦すれば棋聖戦挑決のカードが再現されることになります。また藤井二冠が対戦すれば、これから棋聖戦五番勝負で争う両者がこちらでもぶつかることになります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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