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90年代ドジャース、野茂英雄氏のチームメートの息子たちがメジャーリーガーに。

谷口輝世子スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

今年のレッドソックスの開幕戦で三塁を守ったのは、「カンフーパンダ」の愛称で知られるサンドバルではなく、26歳のトラビス・ショーだった。昨年、メジャー昇格を果たしたショーは長打力のある打者で、キャンプ中には守備でもアピール。体重をコントロールできないサンドバルに代わって、レッドソックスの正三塁手の座を勝ち取った。

私は小さな男の子だったトラビス・ショーの姿をおぼろげながら覚えている。彼の父は90年代にレッズやドジャースでクローザーとして活躍したジェフ・ショーだ。ジェフ・ショーは1998年7月にレッズからドジャースに移籍。同年の6月に野茂氏はドジャースからメッツへ移籍しており、チームメートとしては重なってはいない。“ニアミス”だった。

試合の最終場面で仕事をする抑えのジェフ・ショーだったが、試合が終わると素早く着替えをすませ、出口で待つトラビスと娘、赤ちゃんだった二男とともに帰路についていた。ジェフ・ショーの帰り支度のスピードに私は驚き、父を待つ子どもたちの姿ととも記憶に残っていたのだ。

トラビスは少年時代から強豪チームに入るたびに、父親がメジャーリーガーなので強いチームに入ることができたのだ、と影で言われたことがある。それが間違いであることを証明しながら、メジャーリーグの大舞台まで昇ってきた。

トラビスは「父がメジャーリーガーであることで僕は助けられていると思う。父がメジャーリーガーとして経験をしていることで、僕が進むべき方向に僕を導いてくれていると思う。父はピッチャーなのでその視点から、僕が打者として成長していくのを助けてくれている」と父親にそっくりな顔で話す。幼児の頃から父とのキャッチボールで教わった「いつも同じように安定して投げること」が、今も三塁からの送球に活きている。

レンジャーズでは、昨年、22歳でデリーノ・デシールズ・ジュニア外野手がメジャー昇格を果たした。父は1995、96年、ドジャースで野茂氏とチームメートだったデリーノ・デシールズ。スピードは父親譲り。昨季のルーキーとしては最多の53四球を選んだ。

ショーとデシールズはモントリオール・エクスポズ時代にいっしょにプレーしており、トラビス・ショーによると「父親同士はよく知っている」そうだ。

昨シーズンのワールドシリーズではロイヤルズが、2Aからラウル・モンデシー内野手を出場登録して話題になった。父はドジャースで野茂氏とプレーしたラウル・モンデシー外野手。今季はマイナーで開幕を迎えている。

ドジャース時代には野茂氏とチームメートであり、対戦相手でもあったエリック・ヤングの息子、エリック・ヤング・ジュニアは30歳になっている。09年にロッキーズからメジャーデビュー。メジャーで7年間の実績があるが、今季はマイナーで開幕を迎えている。

父と息子という関係ではないが、昨季、20歳の若さで抑え投手を任されたブルージェイズのロベルト・オズナは、1995年からドジャースなどで中継ぎ投手として活躍したアントニオ・オズナの甥である。昨年途中にトレードで移籍してきたベテラン投手のラトロイ・ホーキンスがもしやと思って尋ねたところ、アントニオ・オズナの甥であることを知り、「彼のおじさんが投げていたのと同じチェンジアップだ」と驚いていた。

あれから20年。漫談家綾小路きみまろのギャグのように年月は流れ、父の教えを受けた二世たちがグラウンドに立っている。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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