川崎鷹也 武部聡志プロデュースで初のフルオーケストラコンサートに挑む。「歌の新しい景色と出会いたい」
2025年3月『billboard classics「川崎鷹也 Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志』を開催
川崎鷹也、新たなステージへの挑戦――シンガー・ソングライター川崎鷹也が、編曲家・音楽プロデューサー・武部聡志のプロデュースによる初のフルオーケストラコンサート『billboard classics「川崎鷹也 Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志』に挑む(3月31日東京・すみだトリフォニーホール 大ホール、4月3日兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール)。2人にインタビューし、その出会いから現在に至るまでの軌跡、そしてコンサートへの思いを探った。
武部聡志プロデュースシリーズ第2弾。第1弾は薬師丸ひろ子
このコンサートは2024年6月に行われた『薬師丸ひろ子 Premium Orchestra Concert』に続く武部聡志プロデュースシリーズの第2弾だ。前回に続き編曲・指揮は岩城直也、そして演奏は岩城率いる若手が中心のNaoya Iwaki Pops Orchestra(NIPO)だ。このコンサートを観たが、薬師丸が歌う日本のポップスシーンを牽引してきた“名匠”達が紡いだ横綱クラスの名曲の数々が、武部プロデュースの元、若手音楽家の瑞々しい感性と“響鳴”し、得も言われぬ感動を運んできた。この時、薬師丸も40年を超えるキャリアの中で初のフルオーケストラコンサートだった。今回川崎も初のフルオーケストラとの共演に挑む。
川崎もこのコンサートを観ていた。「ただただすごいなって思ったし、お客さんも楽しんでいて、もちろん僕も楽しみましたが、でもあのステージに立つことを想定しながらは観ていなかったので、お話をいただいた時は嬉しい気持ちと、不安な気持ちもありました。もちろん今回も緊張はすると思うし、フルオーケストラがどういうものかということを完全に理解していたわけではありませんが、武部さんがプロデュースして下さるので大丈夫だと思います」。
武部は「(川崎)鷹也の声質とクラシックの楽器の相性はいいと思っていました。ただフルオーケストラの音圧に圧倒されないか心配もありました。そこで若手中心のオーケストラで挑戦するのはどうかと考えたのが今回のコンサートです」。そして「新しいムーブメントというのはいつも若い人が起こすので、当然僕らよりも後輩の若い音楽家に期待しているところが大きいです」と、この公演をひとつのステップとして、何かをつかんで欲しいと川崎にエールを送る。
2023年、武部聡志45周年記念コンサートで、武部、岩城、NIPOと共演し「魔法の絨毯」を披露。「曲が持つ別の表情、底力や可能性をに気づくことができた」(川崎)
『うたコン』(NHK)の指揮者としてもおなじみの、岩城直也の編曲と指揮、若手中心のNIPOの演奏、そして武部のピアノが川崎の歌がどう融合し、化学反応を起こすのか――。実はこの組み合わせは、2023年に行われた『武部聡志音楽活動45周年プレミアム・オーケストラ・コンサート』(Bunkamuraオーチャードホール)の時に実現している。川崎は代表曲「魔法の絨毯」を歌った。「あのコンサートで『魔法の絨毯』を歌った時、岩城さんのアレンジでガラッと変わった雰囲気になっていたので、ファンの方の表情もいつもとは違っていて、驚きもあったと思うし、あの曲の新たな部分を僕もお客さんも一緒に体感できたというところは、すごく達成感がありました。あの曲は元々アコギ1本で作った楽曲なので、そこにオーケストレーションや武部さんのピアノが加わることで『この曲ってこんな表情もするんだ』って改めて思ったと同時に、曲が持つ底力や可能性みたいなものも、あの瞬間に気づくことができました」(川崎)。
自身の著書の中でも川崎の声と歌を絶賛
武部と川崎は、2021年にテレビの音楽番組で初共演。その時川崎の歌に武部が引きつけられたという。武部は自身の著書『ユーミンの歌声はなぜ心を揺さぶるのか 語り継ぎたい最高の歌い手たち』(集英社新書)の中で川崎について、『大きな魅力になっているのは、甘く太い声質と、その声の表情です。ビブラートでも、ブレスでも、また地声とファルセットの切り替えでも、彼はそこに感情を込めることを大事にしています』と語り、さらに『歌唱する際、無理やり叫んだり、地声を無理に張ったりということをしないのは、彼が伸びやかさを大事にしているからかもしれません』と、その唯一無二の歌声を絶賛している。
「鷹也は、日本の音楽シーンにおいて正統なポップスを継承するシンガー・ソングライター」(武部)
「日本の音楽シーンにおいて正統なポップスを継承するシンガー・ソングライターだと感じました。声質って本当に大事です。テクニカルな部分は後から身につけられますが、声質や表現力は生まれ持ったものです。鷹也は自分の声の魅力をよく理解し、コントロールして歌うことができるボーカリストです」(武部)と、川崎にこれからのポップスシーンを牽引していって欲しいと、大きな期待を寄せている。
その川崎の声質と表現力を存分に楽しむことができるのが、武部のプロデュースで作り上げた川崎のカバーEP『白』(2022年)だろう。川崎の人生の中で大切にしている5曲が選ばれている。川崎は「美空ひばりさんの『愛燦燦』は僕の祖母がすごく好きな曲だったり、僕が東京に出てくるきっかけの曲や、それまで自分が歩んできた道のりの中で、ターニングポイントになった曲、思い出の曲を選びました」と語っている。武部はこのアルバムについて「鷹也の色合いみたいなものを、このカバーにどう投影できるかを追求した」と、白いキャンバスに川崎と共に、そのカラーと“節”を色濃く描き、映し出した。
昨年ピアノデュオスタイルで武部とセッション
川崎と武部は、この作品を携えバンドでのビルボードツアーを行ない、昨年は二人でBillboard Live TOKYOでピアノデュオスタイルのライヴを行なった。
「バンドでライヴをやってから去年ピアノのデュオをやって、そこでわずか一年でこんなに成長するんだって驚きました。 それだけ色々な場所で色々なお客さんの前で歌ってきたことが、経験として確実にプラスになっていることを感じました。 だからピアノデュオの時はどっしり感があったというか、地に足が着いた音楽家になったと感じました。 若いアーティストとの共演は僕にとっても刺激的です。鷹也の勢いや音楽に対する考え方、パフォーマンスなど、全てが新鮮で学ぶことが多いんです」(武部)
「ピアノデュオは、武部さんがアドリブを繰り出してくるのがすごく楽しくて。 僕もアコギ一本でやるステージではアドリブをやることが多くて、お客さんの表情を見たり空気感を感じながらステージを作るので、それをビルボードライブというステージで武部さんと2人でできたことが嬉しかったです。 練習してきたものを本番で披露するのではなく、その場でお客さんと一緒になって作っていくあの感覚は、武部さんと2人だったからできたと思うし、どこかヒリヒリした感じというか、緊張感が常にあったあのステージは本当に楽しかったです」(川崎)。
「今回のコンサートは、まだ鷹也のことを知らない人に、彼とその音楽を知ってほしいという思いが強いです」(武部)
そして川崎はいよいよ初となるフルオーケストラコンサートに挑む。
「まだ鷹也のことを知らない人に、彼とその音楽を知ってほしいという思いが今回は強いです。こんな素晴らしいボーカリストがいる、こんなにいい曲があるということを、今まで鷹也のライヴを観たことがない人、クラシック好きでも僕の音楽のファンでもいいし、そういう人に川崎鷹也を体感してもらういい機会だと思っているんです。ゴージャスなオーケストラのサウンドがその入口になれば嬉しいです」(武部)。
「これまで何度か武部さんと一緒にステージに立たせていただいていますが、僕のファンの方の中には、二人で出す音、音楽が好きと言ってくださる方も多いんです。だから今回は本当に楽しみですし、そこに岩城直也さんが参加してくださることでよりゴージャスに、パワフルにもなるのでそこも体感して欲しいです」(川崎)。
「色々な川崎鷹也が楽しめるコンサートにしたい」(武部)
「武部さんと岩城さんの力をお借りして、どんな新しい歌の景色を見ることができるのか、楽しみ」(川崎)
気になるセットリストだが、オリジナル曲はもちろんカバー曲も披露してくれそうだ。
「オリジナル曲はもちろん、カバー曲はカバーEP『白』もそうでしたが、鷹也の色合いをそこにどう投影できるかを考えながら選んでいます。 鷹也がギターでリードする曲、オーケストラがリードする曲、僕のピアノがリードする曲、かなりバラエティーに富んだセットリストになるはずです。そういう意味では色々な川崎鷹也が楽しめるコンサートにしたいと思っています」(武部)。
川崎は「武部さんとはこれまでアレンジ、レコーディング、そしてライヴと色々とご一緒させていただいていますが、いつも僕の歌やギターを一番大切にしてくださって、寄り添っていただいています。今回も武部さんのプロデュースで、岩城さんの力もお借りして、どんな新しい歌の景色を見ることができるのか、本当に楽しみです」と語ってくれた。
川崎とって大切な曲「君は天然色」
川崎がとても大切にしている曲も披露する予定だ。「君は天然色」(大滝詠一)だ。
「みんなでセットリストを考えていく中で、もう少し明るい曲が欲しいなと思ったのと、オーケストラでやったら素敵だろうなって思って。鷹也が他のライヴではやらない、 僕か亀田誠治さんと同じステージでしか歌わないという話も聞いていたので、このコンサートでやるべきだと思いました。皆さんも大好きな曲だと思うし、岩城君もこの曲が好きだと言っていたので、これはもうやるしかないなと思って」(武部)。
「『君は天然色』を松本隆さんのトリビュートアルバム『風街に連れてって!』(2021年)で歌わせていただいてから、色々なところから『この曲を歌って欲しい』とオファーをいただくようになって。 あのアルバムは亀田誠治さんプロデュースで、武部さんが僕を推してくれて、人生を変えてくれた曲なんです。お二人への感謝も込めて大事に歌っていきたいと思っています。だからこれまで『君は天然色』を歌って欲しいというリクエストはお断りして、武部さんと亀田さんがいるところ以外では歌わないということを大切にしてきました。それが僕がこの曲を歌わせていただく上でのマナーなんです」(川崎)。
「武部さん、岩城さんとアイディアを出しながら作っていく今回のコンサートで、色々なことをインプットし、自分のツアーにも活かしたい」(川崎)
2人の音楽家の相互理解と尊敬に基づいた、新たな音楽体験が今回のコンサートだ。川崎の歌が、フルオーケストラと交差した時どんな光が生まれ、感動が生まれるのか楽しみだ。
「いつもライヴやツアーは、自分にとってはアウトプットの時間なんです。演出やセットリストも全て自分で決めるのですが、今回は武部さんと岩城さんと3人でアイディアを出し合い、セットリスト、アレンジ、演出までディスカッションしながら作っていくコンサートです。とても得られるものも多く、インプットできる時間だと思います。これをまた自分のツアーにも活かしていきたいです」(川崎)。
『billboard classics「川崎鷹也 Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志』
2025年3月31日(月) 東京・すみだトリフォニーホール 大ホール
OPEN 18:00 / START 19:00
2025年4月3日(木) 兵庫・ 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
OPEN 18:15 / START 19:00
出演:川崎鷹也
ピアノ:武部聡志
指揮・編曲:岩城直也
管弦楽:
【東京】Naoya Iwaki Pops Orchestra(NIPO)
【兵庫】NIPO×大阪交響楽団
『billboard classics「川崎鷹也 Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志』オフィシャルサイト