ウクライナ政府、世界70か国からの寄付で中国DJI製監視ドローン30機購入:高まる中国製への依存
2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民用品ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。
ウクライナ政府はウクライナ軍が監視・偵察、攻撃で使用するためのドローンを調達するために、政府が運営しているメディアを通じて世界中に寄付を呼びかけている。「drone(ドローン)」と「donation(寄付)」を掛け合わせて「dronation(ドロネーション)」という造語も作っている。
2022年12月31日に調達したドローンが1577機に到達し、既に928機が戦場に投入されていた。2023年1月に入ってからも世界中からの支援金、募金が集まっており、ドローン以外にも救急車や衣料、医療品なども購入されている。そして2023年3月2日には世界70か国から63万ドル(約8500万円)の募金が集まった。その募金の中から中国製の監視・偵察ドローン「DJI Matrice RTK 300」を30機購入したことをウクライナのメディアU24が発表していた。
中国メーカーの民用品ドローンで監視・偵察を目的とした「DJI Mavic 3 Fly More Combo」、「DJI Matrice RTK 300」、「Autel EVO ІI」はウクライナ軍で多く使用されている。他にもポーランドやウクライナ自国で開発された民生品ドローンや攻撃ドローンも購入されている。だが市民からの寄付で購入されているのドローンのほとんどが中国のDJI社製の監視・偵察ドローンである。
ロシア軍も中国製のドローンを多く使用している。ロシア軍はロシア製の監視・偵察ドローン「Oralan-10」で監視を行うことが多いが、ウクライナ軍は中国製のドローンがないと監視や偵察が行えないくらい中国製ドローンへの依存度は高い。中国政府がロシア軍に対して中国の西安冰果智能航空科技製の軍事ドローン「ZT-180」100機を提供する計画があるとドイツのメディア・シュピーゲルが報じていた。だがウクライナ軍も中国製の民生品の監視・偵察ドローンに大きく依存している。
現在、ウクライナでは民用品ドローンは監視・偵察としての使用だけでなく小型爆弾や手りゅう弾を搭載して標的のロシア軍に投下したり、突っ込んでいき爆破したり、攻撃ドローンとしても使用されている。民用品ドローンと攻撃ドローンの境目がなくなったことはウクライナ戦争における戦術の特徴の1つである。そして民用品ドローンだけでなく攻撃ドローンも上空でロシア軍に探知されると機能停止させられるか破壊されてしまう。そのため戦場ではドローンは何機あっても足らない。
ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍もドローンを監視・偵察、攻撃で多く使用している。「上空からの目」として戦場では欠かせない兵器の1つになっている。上空から敵の様子を探り、敵を発見したら、その場所をめがけてミサイル攻撃を行ったり、ドローンから爆弾を投下したり、神風ドローンが標的に突っ込んでいき爆発したりしている。これほど多くのドローンが戦場で活用されているのは人類の戦争の歴史上でも初めてである。
▼世界70か国からの寄付で30機の「DJI Matrice RTK 300」を購入したことを報告