「最後思い出に残る試合でした」プロテニスプレーヤー・尾﨑里紗が、ラストマッチを終えて現役引退
2022年シーズン限りで現役引退することを表明していたプロテニスプレーヤー・尾﨑里紗が、全日本テニス選手権にワイルドカード(大会推薦枠)を得て出場し、女子シングルス1回戦で、6-7(1)、6-2、0-6で細木祐佳に敗れた。これが、28歳の尾﨑にとって、現役ラストマッチになった。
2年7カ月ぶりの公式試合となった尾﨑は、試合の出だしこそ上々のプレーで、尾﨑らしいフォアハンドストロークが見られたが、体力面でのブランクを埋めることはできず、尾﨑が第2セットを取る意地は見せたものの、2時間13分のフルセットの末力尽きた。
「今できる自分のプレーはできたかなと思います」と語った尾﨑は、ラストマッチを率直に振り返ってくれた。
「終わって、ちょっと肩の荷が下りたというか……。すぐ終わった時は、なんか終わった感じがしなかったんですけど、時間が少し経って、あぁ、これで終わりなんだと受け入れたというか、気持ちが少し楽になった感じがしました」
尾﨑の1回戦直後には、トーナメントディレクターの坂井利彰氏の粋な計らいと選手たちの愛情によって、尾﨑本人に知らされていないサプライズの引退セレモニーが、センターコートで行われた。
“94年組”と言われる尾﨑と同期の穂積絵莉、澤柳璃子、鮎川真奈をはじめ、尾﨑の先輩選手にあたる青山修子や大前綾希子、今季での引退を表明している今西美晴、加治遥、小堀桃子、今田穂、瀬間詠里花、そして、9月に引退したばかりの奈良くるみさんも駆けつけた。
引退セレモニーでは、女子国別対抗戦フェドカップ(現在のビリー ジーン・キングカップ)の元日本代表監督を務めていた吉田友佳さんから尾﨑に花束が贈られた。吉田さんは、2014年のアルゼンチン戦とオランダ戦(いずれもアウェー)で、尾﨑を代表入りさせた。尾崎は、青山と組んだダブルスで2勝を挙げている。
「一緒に戦った時を思い出します。成長をずっと身近で見てきた選手なので、引退と聞いて、本当にそういう時が来たんだなと感じました。里紗ちゃんは、次のステージに行くけど、今まで頑張って来たことが、これからさらにいろんなやりたいことにつながっていくと思う。選手としては引退したけど、これからもいい関係でいられればなと思います」(吉田さん)
「ちょっとびっくりし過ぎて泣いちゃいました」と語った尾﨑は、ラストマッチを有明コロシアムのセンターコートで終えるという、選手として幸せな形で引退を迎えられた。
「ランキングも無くなってしまって、2年半のブランクがあって、本戦のワイルドカードをいただけて、日本テニス協会の方々に本当に感謝しかありません。本当にもらえると思っていなかったので、最後の場を設けていただいて感謝です。このコロシアムで、たくさんのお客さんの前だったり、スポンサーに来ていただいたり、家族にも来てもらったりして、皆さんの前で最後プレーをして終われたのは、本当にすごく嬉しいですし、最後思い出に残る試合でした」
兵庫県神戸出身の尾﨑は、ジュニア時代に、2006年全国小学生大会でシングルス優勝、2010年全日本ジュニア16歳以下で単複優勝、2011年全日本ジュニア18歳以下で単複優勝するなどの活躍をして、2012年12月にプロへ転向した。
2017年シーズンには、テニスの4大メジャー大会であるグランドスラムにすべて本戦から出場を果たし、USオープン1回戦では、嬉しいグランドスラム初勝利を挙げた。
また、2017年マイアミオープンでは、グランドスラムに次ぐグレードのプレミアマンダトリー(現在のWTA1000)というレベルの高い大会で予選から勝ち上がり、本戦では強豪を連破してベスト16に進出し、尾﨑のハイライトの1つとなった。この大会直後には、自己最高となるWTAランキング70位(2017年4月24日付)を記録した。
「本当に幸せなテニス人生だったと思います」と振り返った尾﨑。ファンから愛された選手がまた一人、プロテニス界から別れを告げた。