元自衛官、安倍政権に怒り―南スーダン駆けつけ警護「負傷したら治療されずに死ぬ」
今月12日、南スーダンPKO活動に参加している自衛隊の部隊に「駆けつけ警護」が新たな任務として課せられた。自衛隊史上初、海外で戦闘行為を行うかもしれない危険な任務だが、一方で派遣される自衛隊の医療体制はあまりにお粗末だ。イラク自衛隊派遣で負傷し、後遺症が残った元自衛官の池田頼将さんは「南スーダンに派遣された自衛隊員たちが僕と同じような目に遭うことを心配しています」と言う。
〇手術できる医務官はなし、自衛隊員は痛み止めすら持たされない
危険な紛争地で、戦闘を行えば、必ず負傷者は出る。しかし、安倍政権は医療面での支えを無しに、他国のPKO隊員が死亡しているなど危険な南スーダンに自衛隊を送ってしまった。現在、PKOに派遣される部隊であっても、自衛隊員が持たされる救急キットは恐ろしくお粗末なものだ。止血帯とガーゼ、包帯くらいしかなく、驚くことに痛み止めすらない。手足がちぎれるなど、戦場で負うような大けがをした場合、痛みだけでショック死する可能性だってある。オスプレイなど高額な米国産の兵器をいろいろ買い込んでいる安倍政権だが、基本的な自衛隊員へのサポートが全くなっていないのだ。
南スーダンに派遣された自衛官は、一発でも銃弾が当たった場合、それが急所ではなくても、命を落とすかもしれない。戦場で使われるような、アサルトライフルで撃たれた場合、弾が身体を突き抜けた側に大穴が開く。包帯で何とかできる状況ではないのだが、呆れたことに、南スーダンに派遣される自衛隊の医務官で、まともに手術ができる者は一人もいないことが、国会答弁でも明らかになっている。
〇元イラク派遣自衛官「過ち繰り返すな」
こうした安倍政権のやり方に「ふざけないでほしい」と憤っているのが、元自衛官の池田頼将さんだ。池田さんは航空自衛隊の第9期イラク派遣部隊として、2006年、イラク隣国クウェートへ派遣された。そのクウェートで池田さんは米軍関係車両にはねられるという事故にあったが、まともな治療を受けることができなかったという。
「自衛隊宿舎の医務室は学校の保健室みたいなものでした。ただ、薬が置いてあるだけで、手術はおろか輸血すらできません。それどころか、『米軍にひかれたのだから、米軍に治療してもらえ!』と言われる始末でした」(池田さん)。
池田さんは派遣先ではまともな治療が受けられないとして、帰国を上官に求めたが曖昧にされ、2カ月弱ほどの間、帰国することができず、顎や首などの上半身に後遺症が残った。
池田さんは「事故を隠蔽しようとして、治療もしないまま帰国を遅れさせられたことで、後遺症を抱えることになった」と国を訴え、現在も係争中だ。南スーダンへの自衛隊の派遣部隊がお粗末な医療体制にあることについて、池田さんは「僕の事故の教訓がまるで活かされていません。悔しいです」と言う。
「このままでは、南スーダンへの派遣部隊の自衛隊員の中から第二の僕のような犠牲者が出てしまいます」(池田さん)。
〇あまりに無責任な安倍政権
なぜ、自衛隊の医療体制はここまでお粗末なのか。「基本的に日本国内での活動が前提になっていることが大きい」と、元自衛隊レンジャー部隊の井筒高雄さんは指摘する。「自衛官が負傷したら、病院に連れて行けばいいという発想なのです。しかし、応急処置を迅速にできるかが、その後の生存率や後遺症の有無にかかわります。まして、危険な紛争地へ派遣される自衛官にまともな医療キットも持たせないなど、本当に酷い。許せないことだと思います」(井筒さん)。
自衛隊の派遣される南スーダンは、日本より医療環境が悪く、そもそも南スーダン政府が負傷した自衛官を自国の病院で治療させるか、という問題もある。南スーダン政府軍自体が、現地で人権侵害を行っており、場合によっては「駆けつけ警護」での自衛隊の戦闘の相手は南スーダン政府軍ということもあり得るからだ。すでに、国連職員の車が南スーダン軍の検問で通行を妨害されるなどの事例も報告されている。ろくな応急処置もできず、また病院に行くまでに時間がかかれば、負傷した自衛官を助けられない、ということも起こり得るのだ。
前出の池田頼将さんは、こう憤る。「自衛官は、命令されたら、どこでも行くし、どんな危険な任務であっても、命令に従います。少なくとも嫌とは言えません。だからこそ、命令する側、安倍政権の責任はとても大きいと思います」。まるで、死んでこいとばかりに、医療体制も整えず、派遣のみを先行させる安倍政権。あまりに無責任だと言えるだろう。
(了)