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サプライズの大会。101回目全国高校ラグビー大会総括&ベストフィフティーン+α【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
ヴァハフォラウが左手に巻いたテーピング(筆者撮影)

 会場の東大阪市花園ラグビー場では、2大会ぶりに出店が開いた。

 試合の合間には長蛇の列。全国高校ラグビー大会が、2年ぶりに一部有観客で実施された。グラウンド上では、驚きの戦いが続いた。

 それまで100点ゲームの多さや上位陣の固定化が論点となってきたが、今回は全ての試合が2桁に収まり、準々決勝に出た8チーム中4チームが昨季のそれと違う顔ぶれとなった。

 なかでも國學院栃木は、初の準決勝進出を果たすとそのままファイナリストになった。

 献身的な防御と2年生バックスの閃きが光った。ただし上位4強で唯一、高校日本代表候補がいないチームだった。

 2連覇中だった桐蔭学園を21―10で下した直後、就任34季目の吉岡肇監督は冗談交じりに言う。

「3年生に特筆した選手がいないのは確かです。私から見ても(高校代表候補になる選手は)いないなぁと思い花園へ来たのですが、今日見ていると負けていない選手がたくさん出てきた。頼もしい限りです」

 隣席した2年の伊藤龍之介はこうだ。

「スター選手がいないのが逆によかったのかなって。(相手にすれば)誰か(をキーマン)に絞ってということができないので」

 驚きを与えたのは、思うような結果の出なかったチームも然り。準決勝で優勝する東海大大阪仰星に敗れたのは、東福岡だった。

 春の選抜大会で圧倒的な力を示しており、準決勝でも序盤まではコンタクトの局面を制圧。大きく球を動かした。

 ところがミスを契機に失点すると、徐々に形勢を逆転される。22―42。藤田雄一郎監督は、「このチームさえ(決勝に)導いてあげられなかった。僕が監督をやっていいものか…」。実力と、本番で実力を発揮する実力の両方の必要性を感じさせた。

 筆者は大会初日から準決勝までを現地取材した。

 複数の試合が同時並行でおこなわれる3回戦までは、専門誌での担当試合を中心にカバー。それ以外はなるたけ映像で補い、準々決勝から先は現地および映像ですべてチェックした。

 上記の条件をもとに、大会のベストフィフティーンなどを独断で選ぶ。

★MVP=薄田周希(東海大大阪仰星)…表情の変わらぬタフガイ。攻守で激しさが際立った。

★新人王=ノロブサマブー・ダバジャブ(札幌山の手)…2年生で今大会デビュー。卒業生で日本代表前主将のリーチ マイケルのサポートでモンゴルから来日し、高校からラグビーを始めた。鋭いタックルを受けてもコンタクトした瞬間の姿勢を保ち、押し戻されずにボールを活かす。身体の「当て勘」と強さを発揮した。

★MIP=ティポアイ・ルーテル・ラリー(倉敷)…創部3年目のクラブで初の留学生。身長194センチ、体重116キロと恵まれた体躯で、複数名のタックラーを引きずる走りとカバーリングを披露した。進学先ではワークレートとフィジカリティをさらに磨けるか。

★ベストフィフティーン

1、西野帆平(東福岡)…フッカーでプレー。ピンチの場面でのカウンターラック。

2、吉田温広(國學院栃木)…スクラムを好リード。勝負所でのジャッカル、仕事量。

3、富田陸(大阪桐蔭)…京都成章との3回戦、要所でスクラムターンオーバー、接点でボールに絡む技術と強さも光った。

4、白丸智乃祐(長崎北陽台)…スペースへ駆け込み大きく突破。

5、奥平一麿呂(東海大大阪仰星)…大会中盤は故障離脱も、出場時は献身的。ルーズボールへの反応が鋭い。

6、シオネ・ポルテレ(目黒学院)…3年目の今季はフランカーで快走を重ねた。ただし東福岡戦では、高校から始めた右プロップでプレー。

7、薄田周希(東海大大阪仰星)…タックルが強烈。相手が勢いよく駆け込んできていても、その地点で倒し切れる。

8、茨木颯(東福岡)…自陣22メートルエリアで再三のジャッカル。グラウンドの端を切り裂くランも強烈。

9、石田太陽(東海大大阪仰星)…パスをするか、接点の脇に自ら仕掛けるかの判断力。バックスペースへの好キックも。

10、大島泰真(京都成章)…自陣でキックを捕球するや細かいフットワークでチェイスラインを攻略。圧力下でも人のいないところへ球をさばく。キック、パス、ランの使い分けの妙。

11、原小太郎(桐蔭学園)…タッチライン際、接点の周辺と、チャンスのありかへ駆け込みビッグゲイン。

12、野中健吾(東海大大阪仰星)…センター兼ウイングの中俊一郎とともに防御を安定させた。キックチェイス、チョークタックル。

13、ステファン・ヴァハフォラウ(札幌山の手)…司令塔に入って好ランを披露。防御が光った大阪桐蔭との2回戦では防御でも魅する。

14、青栁潤之助(國學院栃木)…フルバックとして、大外へ膨らみながら相手をかわし、そのままトライを獲り切るか味方に好パスを送る。ジャッカルも際立つ。

15、矢崎由高(桐蔭学園)…人垣をすり抜けるフットワーク、ランコースの選択。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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