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ロス五輪狙う宮崎友花「自分の球も効いた」、元世界女王も撃破の欧州遠征で収穫

平野貴也スポーツライター
オルレアンマスターズを優勝し、欧州遠征から帰国した宮崎友花【筆者撮影】

 28年ロサンゼルス五輪を狙う期待の若手が、自信を持ち帰った。バドミントン日本A代表、女子シングルスの宮崎友花(柳井商工高校・3年)が4月2日、欧州遠征から帰国した。第1戦のオルレアンマスターズでは、BWFワールドツアースーパー300を初優勝。第2戦のスイスオープン(同スーパー300)では、ベスト4。3戦目のスペインマスターズは、疲労が影響して1回戦で敗れたが、貴重な経験を積んだ。

 同時期には、全国高校選抜大会が行われたが、国際大会を優先。羽田空港で取材に応じた宮崎は「(国内)合宿から続けて5週あって、こんなに長い遠征は初めて。少し落ち着かない部分もあったけど、最初のオルレアン(マスターズ)を優勝して、スイス(オープンでベスト4)と自分が思った以上の成績が出て、すごく嬉しかった。でも、最後のスペイン(マスターズ)まで体がもたなかったので、そこは反省」と欧州遠征を振り返った。

世界選手権の優勝経験者を撃破

 まだ17歳だが、楽しみな存在だ。3連戦で最も見応えがあったのは、第2戦のスイスオープンだった。2回戦で2019年世界選手権覇者のP.V.シンドゥ(インド)に2-1(16-21、21-19、21-16)の逆転で勝利。準々決勝では、大堀彩(トナミ運輸)との日本A代表対決にも勝利した。2週連続の決勝進出は逃したが、準決勝では五輪と世界選手権を合わせて4度世界女王に輝いているキャロリーナ・マリン(スペイン)を相手に第1ゲーム中盤まで競るなど健闘した。

 長身のシンドゥを破った一戦には「すごく身長が高くて、取りにくい球も多かったけど、思ったよりも足が動いて、食らいつくことができた。自分の球も結構効いていたかなと思う」と手応えを得ていた。一方、ストレートで敗れたマリン戦は「第1ゲームは、ちょっとチャンスがあったのかなと。最初は、自分が(相手のプレーとの)タイミングをずらすことができていたけど、最後は(相手がタイミングを)合わせて来たところが、すごいなと思った」と底力の差を感じていた。

 1回戦からファイナルゲームまでもつれる試合が3回戦まで続き、疲労や痛みを無視できず、自分の良いプレーを出し続けることができなかったとも話した。

明確な進歩

 宮崎は、23年11月の熊本マスターズジャパンで、2021年東京五輪金メダルの陳雨菲(チェン・ユーフェイ=中国)と対戦。高校2年生が世界王者に挑むカードだったが、第1ゲームで21-23と接戦を展開。ポテンシャルの高さを示したが「自分の球で取れたというより、相手のミスだった。いつもなら、スマッシュを打った後(浅くなったレシーブに対してネットの)前から変化できるけど、相手がレシーブで(次の球を)打たせないようにして来たのが上手だと思った」と、周囲の評価よりは、プレー内容に差を感じていた。しかし、今回は、世界のトップ選手に対し、自分の球が通用したと話しており、内容面で手応えを得られるようになったのは、確かな前進だ。

 宮崎の特長は、攻撃にあるが、シンドゥ戦では、粘り強さも発揮。着実にトップレベルに適応し始めている。

連戦でも特長を発揮できるコンディション作りが課題

国際大会を3連戦する難しさも今後の糧となる【筆者撮影】
国際大会を3連戦する難しさも今後の糧となる【筆者撮影】

 一方で、国際大会を戦い続ける上で欠かせない、連戦を乗り越える力については、まだ世界のトップとは確実な差がある。スイスオープンで宮崎を破ったマリンは、直前にBWFワールドツアー最高格であるスーパー1000の全英オープンを優勝しており、スイスで2週連続の優勝。より高いレベルで戦い続けて疲労も大きいはずの相手に、流れをひっくり返す力を見せつけられた。

 また、日本A代表の先輩である山口茜(再春館製薬所)も、スーパー750のフランスオープン、スーパー1000の全英オープンで2週連続決勝に進出するタフネスを発揮した。スピードを生かしたラリー、切れ味のあるオーバーハンドショット、相手のタイミングを外す配球など、宮崎が持てる力を発揮できれば、世界トップレベルの強敵とも勝負ができるが、その状態をどれだけ持続できるかは、今後の課題となる。

 オルレアンマスターズとスイスオープンで上位に入り、世界ランキングは25位まで上昇した。32位以内の選手が出場できる、より高いレベルの大会にも出場できるようになった。今後は、より高いレベルの相手と戦い続けることが前提となり、その中で勝ち上がることが求められる。

 宮崎は、今後に向けて「結構いろいろな選手と対戦してきて、自分の(ショットに相手の)タイミングが合わない選手もいる。そういう部分は、独特のタイミング(でプレーできているということ)なのかなとは思っていますが、まだまだ身体ができていない部分もあって、最終日まで(体力が)もたないことが多い。これからは(ハイレベルな戦いの連戦が増えて)ケガをしないことが大事になって来る。身体づくりをしっかりとしていきたい」と進化のイメージを描いた。体力強化だけでなく、勝ち上がるための体力配分や疲労を避ける戦術、疲弊した中での戦い方など、世界のトップで勝ち続けるために学ぶことがある。

前進するほど高くなるハードル、どこまで突き進めるか

 それでも、着実にステップアップを見せており、将来が楽しみな逸材であることは、間違いない。宮崎は、高校1年生だった2022年に世界ジュニア選手権で初優勝。23年に日本B代表に初選出され、シニアの国際大会にデビュー。24年は、日本A代表に昇格した。今回の欧州遠征で元世界女王を破ったように、トップ層との距離は少しずつ縮まっている。

 4月末でパリ五輪の出場権争いが終わり、5月から夏まではパリ五輪出場権獲得者が注目の的となる。世間の注目は、夏のパリ五輪に向いているが、その舞台が終われば、28年ロサンゼルス五輪を目指す宮崎たちの世代が、日本代表の中でも存在感を増していくはずだ。宮崎は、5月に行われる女子国別対抗戦のユーバー杯にも参加予定。「(2月の)アジア団体選手権は、体調を崩してしまって、良いプレーをできなかったし、迷惑をかけてしまった。まずは、しっかりと身体の調整をしっかりして、向かって行けたらいいと思う」と意気込みを話した。

 次世代のスター候補は、国際大会で少しずつ自分のプレーを発揮できるようになっている。前進すればするほどハードルは高くなるが、どこまで突き進むことができるか。

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

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