「トライデント660」が100万円切りで登場!トライアンフが目指す新たな3気筒ロードスター像とは
トライアンフの歴史に名を残す名車
トライアンフモーターサイクルズから新型3気筒ロードスター、「Trident660(トライデント660)」が登場する。トライデントとはギリシャ神話に由来する「三叉の槍」を意味する。新型3気筒マシンに相応しいトライアンフらしいネーミングだ。
トライデントと言えば思い出されるのが、かつて「スリッピー・サム」の愛称で親しまれたトライデントの3気筒レーサー。1968年から1975年まで5度のマン島TTレース優勝を含む数々の栄光を収めた。
その後1990年に蘇った新生トライアンフが当初モジュラーコンセプトによって送り出した750cc/900ccの並列3気筒ロードスターにもトライデントの名があったことは記憶に新しい。トライデントの名は伝統とともに歴史に刻まれているのだ。
新世代ライダーに最適なエントリーモデル
新型トライデント660は“3つの優位性”をコンセプトとして掲げている。
1)3気筒エンジンならではのパフォーマンス
2)クラスをリードするテクノロジーとハンドリング
3)魅力的な価格
である。
まったく新しいミドルクラスのロードスターとして、大型バイクビギナーやトライアンフの新世代ライダーがメインターゲットという。その理由として、大型スポーツバイク分野における最近の世界的傾向として、使い勝手が良くコスパに優れるミドルクラス(排気量600cc~900cc程度)の需要が高まっていることがある。
Moto2マシンの開発責任者でもあった同社のスティーブ・サージェント氏は「新型トライデントで実現したかったのは、中間排気量のロードスター分野における新たなスタンダードを打ち立てること。トライアンフとトリプルエンジンの長所を世界中の新世代ライダーに知ってもらいたい」と抱負を語る。
何故、既存のストリートトリプルRS系の765ccではなく、デイトナ系の675ccでもないのか? という疑問については「新世代ライダーがトライアンフの世界にエントリーするために最適なユニット」とのこと。欧州における入門クラスであるA2ライセンスへの対応も考慮した結果らしい。
ストリートトリプルSをベースに完全新設計
まずデザインが独特だ。新型トライデントが目指したのは、現代的ミニマルフォルムの中にトライアンフ伝統のDNAを織り込んだ独自のスタイル。
筋肉質な14Lフューエルタンクに象徴的な7インチフルLEDヘッドライトを装備し、カラーリングもスタイリッシュでモダンな4色を揃え、カスタムする楽しみを広げる45種類の専用アクセサリーも用意された。
排気量を聞いてピンときた人もいると思うが、エンジンはストリートトリプルSをベースに新開発された水冷4スト並列3気筒DOHC4バルブ660ccで最高出力81ps/10,250rpm、最大トルク64Nm/6250rpmを発生。67種類のコンポーネントを新たに投入し、最適化された6速ミッションとスリップアシストクラッチを標準装備。
スペックでは「S」の95.2psを下回るが、一方でほとんどの回転域で最大トルクの90%を生み出すなど、力強いリニアなパワーと全回転域にわたる豊かなトルクが特徴だ。エンジン下にコンパクトに収納されたスタイリッシュな新型サイレンサーによる3気筒サウンドにもこだわった。
軽快で扱いやすい走りを支える最新装備
車体も完全新設計で、スリムかつ軽量なスチール製フレームからなる新型シャーシは装備重量189kgという軽さと805mmの低いシート高を実現。幅広い層に受け入れられるアップライトポジションにより、安心感や快適性とともに「スポーティで俊敏かつダイナミック」なハンドリングを実現した。
前後サスはSHOWA製で、フロントはストローク量120mm の倒立フォーク(セパレートファンクションタイプ)、リアには新型スチール製スイングアームにトラベル量133.5mmのプリロード調整付きのリンク式モノショックを装備。
ブレーキは前後ニッシン製でABSを標準装備。軽量鋳造アルミホイールにミシュラン「ロード5」を標準装着するなど、オールラウンドな走りを支えている。
電子制御化も進められた。ライドバイワイヤによる「ロード」と「レイン」の2つのライディングモードと、これに連動したトラクションコントロールやABSを標準装備。コネクティビティ機能を持つ新型TFTディスプレイによってナビゲーションやGoPro、電話、音楽などを呼び出すことも可能だ。
100万円を切る価格で国産ライバルに挑む
気になる日本での発売価格は97万9,000円(税込)と魅力的なプライスが設定されているが、さらにコスパの高さも注目に値する。
たとえば、3年間の定期点検におけるコスト効率は同クラスのライバルに対して25%も優れ、16,000kmの走行時点での点検間隔も25~65%長く設定されるなど、長期的に見たランニングコストにも優れるという。
ちなみに新型トライデントが競合モデルと見なすのは「CB650R」や「MT-07」、「Z650」など主に国産ミドルネイキッドと聞く。その意味でも100万円を切る価格や維持費の安さはアドバンテージになるはずだ。
日本での発売日は2021年1月23日。新型トライデントが切り開く新たなステージに期待したい。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。