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水原一平容疑者が大谷選手から盗んだ金が支えた、リアリティ番組スターの贅沢な生活

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(ジェニファー・ペドランティのインスタグラムより)

 水原一平容疑者が大谷翔平選手から盗んだ金は、送金先に指定された男とその恋人の贅沢な暮らしを支えていた。このカップルが出演するリアリティ番組「The Real Housewives of Orange County」の第18シーズンも後半を迎えた今、その様子が少しずつ見え始めた。

 違法賭博で多額の借金を作った水原容疑者が大谷選手の口座から金を盗んでいたことが判明し、ドジャースを解雇されたのは、今年3月なかば。胴元マシュー・ボウヤーに指定され、水原容疑者が金を送った“アソシエイト1”が「The Real Housewives of Orange County」に“ライアン”として出演するライアン・ボヤジアンだとわかったのは、その2ヶ月後のことだ。ライアンは、ハウスワイフのひとり“ジェン”ことジェニファー・ペドランティの恋人で、ふたりは昨年放映された第17シーズンで初登場した。

 第18シーズンの撮影がスタートしたのは、今年1月。まだ衝撃のニュースが世間を騒がせる前だったが、ライアンが違法賭博がらみでFBIの捜査を受けていることを知らされ、ハウスワイフ仲間が驚くくだりは、先月末に放映された第12話に出てくる。ただ、まさかスポーツ界の、それも地元オレンジ郡で6年も活躍してきた大谷選手が巻き込まれているなど、この段階では誰も想像もしていない。

 仕事をしているようには見えないライアンと、長年別居してきた夫と離婚を決めたが条件がまとまっておらず「お金がない」と嘆いてばかりいるジェンが贅沢三昧を続けられるのはギャンブルのおかげだと、ここまでで次第にわかってきた。現地時間17日に放映された第15話で、あるハウスワイフは、ライアンとジェンが2週間おきのペースでバハマやラスベガスに行ってギャンブルをしていることについて話す。それも、カジノが提供してくれるプライベートジェットで優雅に旅するというのだ。そこまでしてもらえるのは、相当に大口の顧客だけである。

水原容疑者からの送金を元手にギャンブル

 このハウスワイフ仲間は知らなかったが、それらの旅には、ライアンの親友である胴元ボウヤーとその妻も一緒に行っていた。水原容疑者から送金があると、ライアンはカジノの口座にチップの形で移し、それを元手にふたりで派手にギャンブルをしたのだ。もちろん、ボウヤーにはほかにも顧客がいたので、大谷選手から盗んだ金だけで賭け事をしたわけではない。それでも、水原容疑者が大谷選手の口座から勝手に送金した額は、なんと1,700万ドルにも及ぶ。

 大きく賭けるので大きく負けることもあるだろうが、ハウスワイフのひとりが「ライアンは仕事に行くかのようにベガスに行く」と言ったように、彼はなかなかのプロで、かなり稼げてきたのだろう。その恩恵は、ジェンも受けている。

 経済的に独り立ちしたことがないジェンは、40代にして自分名義のクレジットカードすら持っていない。ヨガスタジオを経営しているとはいえ、夫がお金を出してくれたもので、インストラクターとしては1クラス教えて50ドル程度しか稼げず、彼女が慣れたライフスタイルを続けるのは不可能だ。

 これまで住んできた家を夫が売ると決め、賃貸するにも家賃を払えないジェンは、5人の子供を連れてライアンの住む広々とした家に引っ越した。にもかかわらず、ジェンが生活水準を落とす気配はなく、2,000ドルもするドルチェ&ガッバーナのドレスも、一応迷うことはしたものの、結局買った。それを知ったハウスワイフ仲間から「月に6,000ドルしか入ってこないと言っていたのに、2,000ドルをドレスに使うの?」「ライアンのお金で買ったの?」などと聞かれ、ジェンは余計なお世話だと怒る。

 もともとライアンにあまり良い印象を持っていなかった上、FBIが捜査をしていると知った今、ハウスワイフ仲間の何人かは、ライアンに依存しすぎて、彼に何かあったり、彼との仲が終わったりしたらどうするのかと、ジェンを心配する。だが、ジェンは聞く耳をもたない。

ジェンはすべてを知っていた

 それに、ジェンは、すべて知っていたのだ。現在放映されているところまででは彼女がどこまで知っているのか見えないが、第18シーズンの放映が始まったばかりの今年7月、インタビューで、ジェンは「あの記事が出ることを、私たちは知っていた」と語っているのである。彼女はさらに、「ライアンは何も悪くない」と主張し、自分がリアリティ番組に出たせいで彼のこの事件への関与が世間にさらされてしまったことに罪悪感を覚えるとも述べている。また、「今もまだこれを乗り越えようとしている友達」、つまりボウヤーとその妻のことを「完全にサポートする」と、同情を示した。大金を盗まれた大谷選手への言葉はない。

 このインタビューの翌月、ボウヤーは司法取引に応じ、有罪を認めた。判決は来年2月だが、おそらく3ヶ月ほどの実刑を言い渡されるだろうと見られる。ライアンは、捜査に協力する代わりに起訴されないことになったと報じられている。

 第18シーズンは全20話で、残りあと5回。ライアンの関与が明らかになった後、一度終了していたこのシーズンの撮影は再開されており、最後のほうではおそらくハウスワイフたちの生々しい反応が出てくると思われる。ライアンとジェンはそこにどう立ち向かうのか。女たちの醜い言い争い場面を好む番組だけに、かなりの修羅場が展開されそうだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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