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えっ!? 7種もくすりを飲んでるの?「介護リスク大」夏の帰省時、老親に確認を #令和の子#令和の親

太田差惠子介護・暮らしジャーナリスト
イメージ画像(提供:イメージマート)

「くすりの飲み過ぎに注意しよう」という話は、よく知られていることです。ポリファーマシーという言葉もあります。服薬数が多く、副作用を起こしたり、きちんと飲めなくなったりしている状態のこと。

 けれども、高齢の親世代はあいかわらずたくさんのくすりを飲んでいます。年齢を重ねるに従い複数の疾患を抱えるようになり、結果、複数の医療機関を受診、くすりが増えることにつながります。コロナがひと段落し、病院通いを再開している親も多いのではないでしょうか。夏の帰省の折りには、くすり事情を確認しましょう。

親のくすりの管理で悩む子は多い

 高齢の親のくすりの管理で悩む子は大勢います。事例を紹介します。

「70代の母親がくすりの副作用でパーキンソンのように」Aさん40代

 遠方で暮らす1人暮らしの母親は、複数の診療所にかかっていました。整形外科、内科、眼科、精神科。そして、あるときAさんが帰省すると、手足がふるえ、しかも顔の表情がこわばっており、内科に連れていくとパーキンソンの疑いを示唆されました。その後、専門医を受診したところ服用中のくすりの副作用かもしれないと言われ、医師の指示に従って一部くすりをやめたところ、その症状はなくなりました。

「睡眠導入剤を服用していた80代父親が転倒骨折、寝たきりに」Bさん50代

 両親は実家で2人暮らしでした。父親は「眠れない」と内科で訴えました。しかし、朝ごはんを食べたあとにウツラ、ウツラ。夕方、テレビを見ながらウツラ、ウツラ。夜に眠れないのは当然といえば当然です。それなのに、夜寝る前に睡眠導入剤を服用するようになりました。ある日、導入剤を飲んで眠りにつき、深夜目が覚めてトイレへ。まだ、くすりが効いていたようです。足元がフラフラして転倒し、骨折。寝たきりになりました。

「くすりが多い」が認知症の原因!?

 AさんBさんの親に限った話ではなく、子世代が、親のくすりの管理の難しさを訴えるケースはとても多く、事例にことかきません。

 薬剤が原因で認知症のような症状が出たという話を聞くこともあります。「薬剤起因性認知症」と呼ぶそうです。

 Cさん(50代)の母親は、まさにそれでした。

「母親(80代)は認知症のような症状が出ていました。実は、糖尿病のくすりが原因だったようです。気付いてくれた医師が、くすりを整理してくれたら、認知症のようだった症状はおさまりました」。

 日本神経学会の作成した「認知症診療診断ガイドライン」(2017)でも、認知症機能障害のある患者のうち、2~12%が薬剤に関連しているとされています。診断時には服薬内容を確認することを推奨しています。親に認知症を疑う症状が出た場合は、必ず医師に服用しているくすりを伝えましょう。

副作用が起こりやすい理由

 厚生労働省の調査によると、75歳以上の高齢者の4割は5種類以上のくすりを服用しています。さらに4人に1人は7種以上のくすりを飲んでいるとのこと。高齢者では、服薬数が6種類以上になると副作用を起こす人が増える、というデータもあるので注意が必要です。

 なぜ、加齢によって副作用は増えるのでしょうか。

 高齢になると、肝臓や腎臓の働きが弱くなり、くすりを分解したり、体の外に排泄したりするのに時間がかかるからです。そのため、くすりが効き過ぎてしまうことがあります。また、くすりの数が増えると、くすり同士が相互に影響。効きすぎてしまったり、効かなかったり、副作用が生じやすくなるそうです。

年齢層別の薬の数(院外処方)

75歳以上の4割は5種類以上、4人に1人は7種以上のくすりを服用:厚生労働省(令和2年6月審査分)
75歳以上の4割は5種類以上、4人に1人は7種以上のくすりを服用:厚生労働省(令和2年6月審査分)

実家はくすりの在庫過多かも

 あなたの親は、何種のくすりを飲んでいるでしょう。そもそもいくつの診療科や病院にかかっているか知っていますか。

 処方に慎重な医師がいる一方、簡単に処方する医師もいます。飲み忘れ(親が意識的に服用をやめているケースも)なども相まって、実家はくすりの在庫でいっぱいかもしれません。

 親には「おくすり手帳」を作るように言い、ときどき見せてもらうようにするといいでしょう。「おくすり手帳」は、保険調剤薬局でお願いすればもらえます。

 なかには、作っていても、不適切な使い方をしている親もいます。その代表例は、診療所ごとに分けて作っているケース(それぞれの診療所の近所の薬局を利用)。複数の手帳を持っていると、一緒に使用してはいけないくすりがないかなどの確認をしてもらうことができません。処方薬局もおくすり手帳も1つに統一しておくことが重要です。病歴や、利用している市販薬、くすりアレルギーを書くページもあるので記載しておくと、なお安心です。

 紙の手帳のほか、アプリの手帳もあります。家族のくすり情報を自分の分とまとめて管理できる無料アプリもあるので、利用するのも一案でしょう。

 親のくすり事情を確認して、気がかりなことがあれば、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。飲み忘れを防ぐ方法などについても一緒に考えてくれます。また、たとえ親がたくさんの種類のくすりを飲んでいることが判明しても、「飲み過ぎ」と言って、自己判断で服用を中止させることはNGです。その場合も、必ず、医師か薬剤師に相談してください。

介護・暮らしジャーナリスト

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。「遠距離介護」「高齢者住宅」「仕事と介護の両立」などの情報を発信。AFP(日本FP協会)の資格も持ち「介護とお金」にも詳しい。一方、1996年遠距離介護の情報交換場、NPO法人パオッコを立ち上げて子世代支援(~2023)。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第2版』(以上翔泳社)『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門』(共著,KADOKAWA)など。

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