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宮城県にデザインミュージアムを―/Chickadee&HOME 沼田寛彦

岡沼美樹恵フリーランスライター/編集者/翻訳者

宮城県仙台市に北欧ヴィンテージ家具や雑貨の店舗とギャラリーを構える「Chickadee&HOME」。“美しい”という言葉がしっくりくるヴィンテージ家具や雑貨の数々は、見ているだけでも気持ちを豊かにしてくれます。

代表の沼田寛彦さんは、そうした美しい北欧ヴィンテージと雑貨、そして現代アートを常設展示す

べく、東北にデザインミュージアムを建設しようと東奔西走しています。

3つ上の兄の影響でデザイン好きになった

「僕は専門学校でインテリアを専攻し、そこでプロダクトデザインの歴史やすばらしさ、美しさ、難しさを学びました。デザインに興味をもつきっかけは、3歳上の兄がいて、小学校高学年ぐらいから洋服を買いに行くようになったことです。80年代はブランドブームがあって、兄が外国のバイクや古い車に乗っていたのに影響されて、バイクに乗ったり、スケボーやったり、服を買うためにバイトをしたりしていました」

高校卒業後の進路に、自分の大好きなファッションの世界に進もうと考えた沼田さん。

Chickadee&HOMEのショールームには、ため息の出るような美しい家具が並びます
Chickadee&HOMEのショールームには、ため息の出るような美しい家具が並びます

「でも、親から反対されちゃって。当時、親戚が仙台デザイン専門学校の事務で働いていて『うち来なさい』ということで、デザイン専門学校に行くことになりました。あとは、当時、我々にとっては神様的な人が、インテリアとファッションを総合的に雑誌の中で紹介していて。ミッドセンチュリーの時代のアメリカのイームズという家具を紹介していて、僕も実際に買ったんです。だから、19、20歳ぐらいのときにそういうものを買っていたし、専門学校で勉強しているものに興味を持つようになっていったという感じです。その後海外研修があって、ロンドンでデザインミュージアムに行ったんです。『ダイソンのデザインは素晴らしい』っていうのを大々的にやっていて、美術館でデザインが展示されているのがすごいと思ったし、ものすごく興奮しました。いろいろな国のものが総合的に紹介されて、そこも私設ミュージアムだったのが驚きでした」

北欧のヴィンテージ家具に魅せられ、ついに店を持つことに

専門学校を卒業した沼田さんは、世界各国旅してまわり、北欧ヴィンテージ家具に魅了されます。

「デンマークの家具に惹かれて、自分自身で購入しました。その後、フィンランド、スウェーデンなどの北欧家具に魅せられて、どんどん購入していくうちに、ヴィンテージものを扱う店舗を持つことになったんです。取り扱っているのは、北欧を中心とした世界中の素晴らしいヴィンテージです」と、「Chickadee&HOME」をオープンさせた経緯を話してくれました。

北欧のヴィンテージ家具や雑貨を、その目利きで仕入れる沼田さん。

「個人宅の買取であったり、ディーラーであったり、オークションであったり、使えるものはすべて駆使して手に入れます。ただ、仕入れたすべてのものが完全な状態で入ってくるわけではありません。ですので、僕自身も現地の職人から修繕の技術を学び、きちんとリペアを施したうえで店頭に並べています」

来店のお客さまだけでなく、ネットを通して世界中から注文が入るそうです。

沼田夫妻の買い付けは、世界各国に渡ります
沼田夫妻の買い付けは、世界各国に渡ります

「年間だいたい500ピースから600ピースほど入ってきて、それが1年で売れてしまう感じですね。お客さまは、下は小学生から80歳くらいまでいます。学生さんも多いですね。親やおじいちゃんおばあちゃんが子どもや孫に机を買う、なんていうこともよくあります。『どうせ使うなら、いいものを使おう』『捨てることを前提としない買い物をしよう』という教育の一環ですね。また、将来的に資産価値があるものも多いので、そうした意味で購入されるお客さまも多いですよ」

コツコツ集めたパーマネントコレクションを一堂に

店舗を経営しながら、個人コレクションも増えていきました。

沼田さんのコレクションが並ぶギャラリー
沼田さんのコレクションが並ぶギャラリー

「コツコツ人生を歩んでいく中で、いろいろありながら収集してきたっていう感じです。ロンドンのデザインミュージアムを訪れたときに『やりたいな』っていう思いはあったけど、現実的には収入もなかったわけで。実際に私設ミュージアムができるかどうかっていうのは、経済的な部分とか仕事的な部分とかいろんな要素が絡んでいて。条件に合う不動産との出合いもあったりして、ようやくタイミングがきたのかな、と思うんです。あと、お世話になっているアートギャラリーのオーナーさんが、昨年私設ミュージアムをオープンするということで、いろいろと見せていただいたんです。そのときに、もうなんていうか夢の世界で。そういうのを身近で実現した人がいたことで、背中を押された感じになりました」

専門学校時代に知り合ったという沼田夫妻
専門学校時代に知り合ったという沼田夫妻

若き日に受けた、ロンドンのデザインミュージアムでの衝撃。そこから数十年を経て、今まさに私設ミュージアムのオーナーとなろうとしています。場所は、仙台市中心部から車で30分ほどの場所にある川崎町です。

「うちには子どもがいないので、自分たちが将来何を残せるかを考えたときに、やっぱりこういうものだよな、って思って。売ってしまえば、現金にはなるけれど、天国には持っていけないし。そう考えたときにやっぱり何か残せるような形で、晩年を終わらせたいというのが一つ。でも、一番の目的は教育ですよね。若い人たちに見る機会を作るっていうのが大事だと思うんです。だから、僕らが亡くなった後は、アートやデザインに理解のある企業さんに引き取っていただいて、恒久的に残せる施設としてバトンタッチするのがいいんじゃないかと考えています」

この私設ミュージアムがデスティネーションになれば

北欧ヴィンテージ家具や雑貨などを中心に、現代アートなど、国、地域、アイテムの種類を問わずに常設展示していく予定だそうです。

「企画展示のスペースもつくるので、定期的にいろいろな企画、エキシビジョンを行い、何度でも来たいと思ってもらえるようなミュージアムにしていきたいですよね。この場所が、ロンドンやデンマークのデザインミュージアムのように、デスティネーションになればいいなと思っています。ここを目指して日本全国、世界各国から世代を問わず『宮城に行きたい』と思ってくれたら」

宮城県西部にある川崎町に建設予定の私設ミュージアム(イメージ)
宮城県西部にある川崎町に建設予定の私設ミュージアム(イメージ)

沼田さんのチャレンジは道半ば。より多くの人たちの共感を得るためにクラウドファンディングにも挑戦するそうです。後学のためにも宮城県にデザインミュージアムを―。その思いに賛同された方は、ぜひ、沼田さんのクラウドファンディングもチェックしてみてください。

Chickadee&HOME
宮城県仙台市若林区遠見塚2-25-33
022-781-3060
10:00~17:00(最終入館16:30)
水曜定休
Instagram:chickadeeandhome_sendai

Numata (Design+Art )Museum

写真:堀井哲平株式会社ロル

フリーランスライター/編集者/翻訳者

大学卒業後、株式会社東京ニュース通信社に入社。編集局でテレビ誌の制作に携わり、その後仙台でフリーランスに。雑誌、新聞、ウェブでエンターテインメント、スポーツ、広告、ビジネスなど幅広いジャンルの執筆活動を行う。2016年よりウェブメディア「暮らす仙台」で東北のよいもの・よいことを発信。ローカルビジネスの発展に注力している。好きなものは、旅、おいしいものを食べること、筋トレ、お酒、こけし、猫と犬。夢は、クリスマスのニューヨーク・セントラルパークでスケートをすること。妄想は、そのスケートのお相手がジム・カヴィーゼルだということ。

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