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「家庭が趣味」笑福亭鶴瓶の“鶴瓶以上に鶴瓶的”な妻との夫婦円満の秘訣

てれびのスキマライター。テレビっ子

笑福亭鶴瓶は韓流アイドル「2PM」のファンであることは一部で有名だ。

今では、ハイタッチ会などのイベントに一般客として並ぶほどの“おっかけ”。

そのきっっかけは、鶴瓶の妻が2PMを好きになったことだった。

鶴瓶は妻を喜ばせるために、自身も2PMのことを知ろうと徹底的に調べ上げ、いつしか自分も大ファンになった。事前に下見までして、サプライズで韓国旅行も企画した。

結婚して、40年以上経つ2人だがいまだラブラブ。

今でもね、だんだんだんだん好きになる。今でも照れまんねん、嫁はんの前で

なぜそんなに仲睦まじくいられるのだろうか。

鶴瓶より鶴瓶的な妻

笑福亭鶴瓶論』では、鶴瓶の妻・玲子について、様々なエピソードを通して「鶴瓶以上に鶴瓶的」だと考察している。

たとえば、鶴瓶から「10年後に結婚しよう」とプロポーズを受けた後だ。

玲子はこのプロポーズの少し後、鶴瓶も驚く行動をとる。

突然、鶴瓶の実家を黙ってひとりで訪れたのだ。しかも、そこで鶴瓶不在にもかかわらず、一泊している。

さぞかし、鶴瓶の両親も驚いただろう。なにしろ、いきなり見ず知らずの若い女性が訪ねてきたのだから。鶴瓶以上の行動力である。

    (略)

玲子は、その交際や将来の結婚を親に認めてもらおう、といった意図もなにもなく実家に行ったのだという。

ただ、未来の亭主が、どんなところで生まれ、どんなところで育ったのか、自分の目で確かめたかったのだ。

出典:『笑福亭鶴瓶論』

さらに、自分の両親に交際すら反対されていた遠距離恋愛中、仕事の合間を縫って鶴瓶のもとにやってきた彼女は、またも思わぬ行動に出る。

帰らなければならない時間になって、2人は別れた。鶴瓶は公開放送のラジオの生放送に、彼女は空港に向かった……はずだった。

その日、公開放送をしていたのはあるホテルのプール。プールには多くの人がいたが、その中になぜか彼女もいたのだ。

プールにプカプカと浮いている玲子を見て鶴瓶は焦った。

(何してんねん? 間に合わないやないか)

玲子は鶴瓶の視線に気づくと、鶴瓶の心配をよそにのんきに手を振り始めた。

そして、小さな紙切れを掲げ、それを細かくちぎったかと思うと、紙吹雪のように散らしてしまった。

プールに美しく散る紙吹雪。それは帰りの飛行機のチケットだったのだ。

わたし、もう帰られへん

出典:『笑福亭鶴瓶論』

結局、2人は彼女の父親の猛反対を受けながらも同棲を始めることになる。

大胆不敵で神出鬼没、後先考えずにすぐに行動、まず人に会いに行くといえば笑福亭鶴瓶の芸風や生き方だが、彼女こそが鶴瓶的な思想の体現者なのだ。

鶴瓶がベタ惚れになるのは無理はない。

家庭が趣味

かつては、「飲む打つ買う」というような「道楽が芸の肥やしになる」という芸人観に従い、夜遊び回っていた鶴瓶だが、考え方が180度変わった。

普通の生活をしていないものが、どうして普通の人たちを満足させられるのか、と。そのためには普通の夫、普通の父親でいなければならない。今は「普通の生活こそが芸の肥やし」なのだ。

鶴瓶夫婦の間には、長女と現在は俳優として活躍する長男・太郎という2人の子供がいるが、鶴瓶は「子はかすがい」という考え方も真っ向から否定している。

なぜなら、その考えだと子育てが終わったら夫婦関係がぎこちなくなってしまう。だから、家庭ではあくまでも「夫婦が中心」。夫婦自身が楽しむことを第一にした。結果、2人の子供が独立した現在も夫婦仲は健在だ。

今でも夫婦2人きりで旅行に行くというと、周りの人から、「よくそんなに話すことがあるなあ」と言われるという。

それに対し、鶴瓶は「それはクセ」だと言うのだ。普段から、夫婦でしゃべるクセをつけておくのだ。つまり、最初は「自然」ではない。ちゃんと意識して会話することが大事なのだ。そうやってクセをつけると、いつしかそれが「自然」となっていく。

恋人時代の恋愛感情は、結婚したら続かないとはよく言われる。それは鶴瓶だってそうだ。相手の魅力だけでその熱を持続させることはできない。

「最初の純な気持ちはそのまま続かないと思うから……だから努力してますもの、お互いに

絶えずお互いに気にかけ「ポイント稼ぎ」をし合っているという。愛情を見せることで相手にも愛される。お互いに助け合い、尽くし合う。

出典:『笑福亭鶴瓶論』

よく鶴瓶は「縁は努力」と言う。「出会い」はつなげる努力をして初めて「縁」になるのだと。

愛も同じ。「愛は努力」なのだ。

常に相手のために何ができるかを考え、「何がしたい?」と確かめ、2人の時間を大切にする。その時間と思いの蓄積が愛なのだ。

いつも鶴瓶が持ち歩いている手帳には、家族の写真が挟まっている。とりわけ大事にしているのが、夫婦2人の笑顔のツーショット写真だ。

家庭が趣味なんです。特に嫁はんが趣味

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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