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金正恩、日本製「禁断映像」など所持で軍幹部を一斉摘発

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

 北朝鮮軍当局が1月、軍幹部らを対象に「不純映像物」の一斉取り締まりを行ったと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。取り締まりの結果、多数の幹部が韓流や日本など外国の映画やドラマ、歌などが収められた記録媒体を隠し持っていたことが明らかになり、軍当局に緊張が走っているという。

 平壌市のある軍関連情報筋はRFAに対し、「朝鮮人民軍(北朝鮮軍)総政治局では今年1月初めから1ヶ月間、国防省の直轄部隊と総参謀部の直属部隊を対象に、不純映像媒体の利用と所持に関する集中検閲を進めた」と説明。

 続けて「総政治局の指示に従い、総参謀部、国防省、保衛局のメンバーからなる『109連合検閲組』が進めた検閲では、少なくない幹部が不純映像物を所持していたことが明らかになり、当該部隊の指揮官はもちろん、軍総参謀部の指揮部も非常に難しい立場に置かれた」と証言した。

(参考記事:【写真】美人女優ピョン・ミヒャンの公開処刑で幕を閉じた「禁断の映画」摘発の内幕

 情報筋はまた、「今回の検閲はノート型コンピュータやデスクトップ・コンピュータを所持していたり、業務上、コンピュータに常時アクセスができたりする幹部級兵士たちと携帯電話を所持した幹部たちを対象に抜き打ちで行われた」とし、「摘発された幹部は10人以上になる」と述べている。

 こうして摘発された幹部の中には、国防省直属のある貿易会社の上級幹部がいるという。

「貿易会社の上級幹部は韓国映画3本、日本の『成人映画』10本、『愛の不時着』『太陽の末裔』など韓国ドラマ7本と米国映画5本を保存していたことが発覚した」(情報筋)

 この幹部は3年前にも、韓国ドラマをはじめとする外国映画と日本の成人映画を隠し持っていたことがバレて摘発されていた。そのときは、貿易業務での優れた実績が評価されて寛大な処分を受けたが、当時と現在とでは状況が大きく変わっている。

 2020年12月、北朝鮮では韓流などを取り締まる「反動思想文化排撃法」が制定されており、同法違反で摘発された場合、最悪なら死刑もあり得るのだ。

 RFAの情報筋も、貿易会社幹部は「軍事裁判で厳重な処罰を受けると見られる」との見通しを語っている。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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