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ファストフードや保険業…米国でロボットやコンピューターに取って代わられそうな仕事をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ロボットの普及でエンジニアの仕事も……?!(ペイレスイメージズ/アフロ)

新技術は生産性を押し上げ、人の生活をより快適なものにするのが一般的なイメージだが、実態としてそれだけでなく、人が今までしていた仕事を奪うケースも多々ある。新技術の代表格として認識されているロボットやコンピューターのさらなる普及で、どのような仕事が取って代わられると思われているのだろうか。米国の実情を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月に発表した、技術と人々の暮らしに関わる調査報告書「Automation in Everyday Life」(※)をもとに確認する。

次に示すのはそれぞれの業種に関して、将来ロボットやコンピューターにその仕事が取って代わられそうになる度合いを尋ねたもの。科学的見地によるものではなく、回答者の認識として答えてもらっている。最近よく見聞きするようになった「今から●年後にAIの普及によって失われる職業」と似たようなものだと思えばよい。

↑ ロボットやコンピューターに取って代わられそうな仕事(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ ロボットやコンピューターに取って代わられそうな仕事(2017年5月、米国、18歳以上)

選択肢の中でもっとも代替されてしまいそうだと思われているのは、ファストフード従業員。大よそとそれなりを合わせた、相当に代替されるとの認識回答に該当する赤系統で着色した部分の回答率は実に77%。3/4以上の人が「将来ファストフードの従業員は多分にロボットやコンピューターに取って代わられてしまうのだろう」と考えている。単純作業の繰り返しが多いことを思い返せば、納得はできるというもの。単純作業の観点では保険金の請求従業者も代替されそうであるとの認識が強い。赤系統の回答率は66%。

専門職感の強いソフトウェアエンジニアや弁護士も、半数前後の人がロボットやコンピューターに多くが代替されると考えている。丸ごと入れ替わるのではなく、コンピューターのプログラムで対応できる領域が差し替えられるのだろうが、実態は別としても多くの人の考えとしては、このような結果が出ている。

他方教師や看護師など、対面による臨機応変な対応が強く求められる仕事では、ロボットやコンピューターに取って代わられるだろうとの認識は低め。SF漫画に出てきそうなロボット教師や看護師は、少なくとも近未来には有りそうにないと多くの人が考えていることになる。

具体的な仕事ではなく業種の仕切り分けで、さらに回答者の生存中に起きえるか否かをシンプルにありそう・なさそうで尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 自分が生きている間に相当部分がロボットやコンピューターに取って代わられそうな業種(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 自分が生きている間に相当部分がロボットやコンピューターに取って代わられそうな業種(2017年5月、米国、18歳以上)

大まかな仕切り分けによるものなので、該当業種内でも代替されやすい仕事、されにくい仕事が混在していることもあり、また回答者が若年層でも1世紀先の話になるとはほぼあり得ないので、相当部分が取って代わられそうとの回答率はいずれも半数に満たない。とはいえ、サービス業や小売業、銀行・金融・保険・不動産業などの金銭面では4割強の人が代替されてしまいそうだと認識している。

他方具体的な仕事でも代替は難しいだろうとの意見が多分を占めていた教育関連や、医療などは少数派。それでも1割から2割は相当部分が取って代わられそうと答えている。

今件はあくまでも回答者の考えに過ぎず、科学的見地も予想の裏付けもない。しかしながら多くの人は少なからずの仕事、業種で、そう遠くない将来にはロボットやコンピューターが人の代わりに従事することになるだろうとの認識をしているのもまた事実ではある。

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※Automation in Everyday Life

調査専用の調査対象母集団(RDD方式で選択された固定電話・携帯電話を有するアメリカ合衆国の18歳以上を対象に選択)を対象に2017年5月1日から15日にかけて実施されたもので、有効回答数は4135人、うち就業者は2510人。国勢調査の結果を基に性別、年齢、学歴、人種、支持政党、地域、就業中か否かなどの属性でウェイトバックが実施されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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