Yahoo!ニュース

今季30号を放ったコディ・ベリンジャーに期待がかかるドジャース史上初の年間50本塁打

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
4日のパドレス戦で今季30号本塁打を放ったコディ・ベリンジャー選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【オールスター戦前の30本塁打はドジャース初】

 4日に行われたドジャース対パドレス戦で、「4番・右翼」で出場したドジャースのコディ・ベリンジャー選手が6回の第3打席に、打った瞬間本塁打と分かる打球を右翼スタンドに叩き込み、早くも今シーズン30本塁打に到達した。

 この本塁打がダメ押しとなり、チームも5-1で勝利し4連勝を飾った。この日は米国最大の祝日ともいえる独立記念日。ドジャース・ファンにとって何とも喜ばしい1日になったことだろう。

 実はドジャースの選手がオールスター戦前に30本塁打に到達したのは、史上初めてのことだ。この結果、本塁打数で両リーグトップを走るクリスチャン・イエリチ選手に1本差に肉薄。両者はシーズン開幕から熾烈な本塁打争いを繰り広げており、2011年のマット・ケンプ選手以来となるドジャース選手による本塁打王獲得にも期待がかかる。

【シーズン前半戦はMVP最有力候補に】

 シーズン前半戦も残り3試合となったが、今シーズンのベリンジャー選手の活躍ぶりは他を圧倒している。ここまで打者主要3部門は、打率.344(両リーグ2位)、30本塁打(同2位)、71打点(同2位)──を記録。また強打者の指標として使用される「OPS(長打率と出塁率を足した数値。0.800以上で強打者といわれる)」に至っては1.149と、両リーグトップを走っている。

 さらに選手の活躍度を指標化した「WAR(Wins Above Replacement)」は6.8と、こちらも両リーグトップを独走しており(2位はマイク・マイナー選手の5.7)、すでに多くのメディアがベリンジャー選手をナ・リーグMVPの最有力候補に挙げている。

 ただし6月の月間打率は.272とやや落ち込んでいたが、7月に入り3試合で3本塁打を放つなど、再び本塁打量産体制に入る気配を見せている。

【ドジャースタジアムは本塁打を量産できない?】

 こうなってくると気になるのが、ベリンジャー選手が最終的にどんな成績を残すかだ。中でも個人的に注目しているのが、彼がドジャース史上初めて年間50本塁打を突破できるかどうかだ。

 すでに年間本塁打記録は73本まで達し、これまでMLB全体でのべ45選手が50本塁打を記録している中、実はMLB屈指の老舗チームであるドジャースには、50本塁打に到達した選手が1人も存在していないのだ。

 これまでドジャースの年間最多本塁打数は、2001年にショーン・グリーン選手が記録した49本。しかもドジャースの年間40本塁打以上を記録した選手でさえのべ13人、正味7人に留まっている。

 しかもデューク・スナイダー選手(5回達成)、ギル・ホッジズ選手(2回達成)、ロイ・キャンパネラ選手(1回達成)はすべてブルックリン・ドジャース時代に所属していた選手たちだ。

 つまり1958年にロサンゼルスに移転し、1962年にドジャースタジアムが開設して以来、年間40本塁打以上を記録した選手はわずか4人(グリーン選手が2回達成で、エイドリアン・ベルトレ選手、ゲイリー・シェフィールド選手、マイク・ピアザ選手がそれぞれ1回達成)しかいないのだ。

【ドジャースにとっては奇跡ともいえる大記録】

 如何だろう。ロサンゼルス移転後のドジャースでは、年間40本塁打を2回達成した選手ですらグリーン選手のみなのだ。そんなチーム状況下で年間50本塁打を打つということは、もはや奇跡に近い偉業であることが理解できるだろう。

 ドジャースの残り試合は73試合。ベリンジャー選手がこのままシーズン前半戦のような活躍を続けられれば、あと20本塁打打つ可能性は十分にあるはずだ。

 MLB全体で見れば年間50本塁打は取るに足らない記録かもしれないが、ドジャースにとっては夢にまで見た大記録なのだ。ぜひシーズン後半戦も、ベリンジャー選手の打撃に注目して欲しい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事