男を奪われ、会社を追われても悲劇のヒロインにならない!過去にとらわれず前を向く彼女がくれる勇気
香港から届いた「人生の運転手(ドライバー) 明るい未来に進む路」は、いまを生きる女性たちに温かなエールを送るようなヒューマン・ドラマだ。
主人公のソックは、結婚寸前までいった恋人に裏切られ関係が破綻。
しかも彼と築き上げてきた会社を彼の新たな恋人の策略で追われる身に。
自暴自棄になってもおかしくない状況の中、彼女が路線バスの運転手となって新たな人生を切り拓いていく様が、ユーモアを交えながら描かれる。
ともすると卑屈に映ってもおかしくない、このヒロインを実にたおやかに演じ切って深い印象を残すのが、イヴァナ・ウォン。
香港で人気シンガーソングライターで女優としても活躍する彼女に訊くインタビューの第三回に入る。(全三回)
過去にとらわれないで未来へ進むと、その先に新しい何かが拓けてくる
この映画に込められたメッセージは、コロナ禍のいま人々に届くのではないか
本作は昨年11月に香港で公開。ところがコロナ禍の影響を受け、1週間ほどで公開がストップとなってしまった。
ただ、公開が途中で終わってしまったことに対し、惜しむ声が相次ぎ、今年の2月に再上映が決定し、ヒットとなった。
「この映画の公開がストップしたというより、映画館自体が閉めざるえなかった。
『人生の運転手(ドライバー) 明るい未来に進む路』のほかにも、公開が延期になった映画もありましたから、公開中止は当時の状況を踏まえると仕方ないことでした。
ただ、残念でしたけど、同時に勇気づけられることもありました。
公開1週間で終わってしまったことで、知人たちがすごく悔しがってくれて、わたしに励ましの声をかけてくれたんです。
そのほか、映画をみたいと思っていた人たちからも、多くの声が寄せられました。それで再上映の方向に向かっていったんです。
このことを前に、わたしは映画と同じことが起こたと思いました。
つまり『人生の運転手(ドライバー) 明るい未来に進む路』の物語と同じようなことが起きている。
ソックはいろいろな人生の曲がり角に直面しますが、その都度、いつか好転すると信じて前を向いて生きていく。
過去にとらわれないで未来へ進むと、その先に新しい何かが拓けてくる。
この映画の公開も、ソックと同じような道をたどっているなと思ったんです。
そして、いまこうして海を越えて日本で公開されている。
わたしは自分が主演を務めた映画がまさか日本で公開されるなんて夢にも思いませんでした。いまも信じられない気持ちでいっぱいで、この幸運に感謝しています。
だから、わたしはいまこう思っています。『人生には困難が伴うけれども、そこにとらわれるのではなく、前を向いて歩むことがとても大切だ』と。
いままでの道を外れてみたら、別の道があって自分が考えもしなかった新たな目的にたどり着け、違う素晴らしい風景に出会うかもしれない
この映画に込められたメッセージは、コロナ禍のいま人々に届くのではないかと、わたしは思っています。
ですから、いま日本で公開されることがとてもうれしいです」
日本のタイトル『人生の運転手(ドライバー) 明るい未来に進む路』を
ものすごく気に入ってます!
日本のタイトル『人生の運転手(ドライバー) 明るい未来に進む路』をものすごく気に入っているという。
「『人生の運転手(ドライバー)』というタイトルが、わたしは大好きなんです。
なぜかといいますと、前で少し触れたように要は一言で、この映画のメッセージそのものをストレートで表現していると思うんです。
さきほどの繰り返しになりますけど、人生には必ずターニングポイントに直面するときがあって、そのときあえて方向を変えてみると新しい方向が現れて、最終的にはあなたのたどり着く目的に連れて行ってくれる
このメッセージを日本のタイトルは表している。
まさにこのタイトルの通りの物語だと思うので、ぜひ一人でも多くの方にみていただいて、少しでも勇気を与えられたらと思っています」
パフォーミング・アーティストと自分のことを認識しています
彼女は俳優だけではく、シンガーソングライターとしても活躍している。
演技と音楽、双方の活動をする理由をこう語る。
「元々シンガーとしてキャリアをスタートさせたのですが、数年後に俳優としての活動も始めました。
いま自身としては、実演家といいますか、パフォーミング・アーティストと自分のことを認識しています。
音楽を作ることも、映画の中でひとつの役を演じることも、私にとってはクリエイティブな一つの創作活動であまり区分けしていません。
わたしにとってパフォーミング・アーティストはある意味で、夢のような職業で目指すところでもあります。
これまで音楽にしても映画にしてもいろいろなプロジェクトを通して、さまざまな表現形式を追求して、自分の可能性をどんどん発見して、それを伸ばしていこうということをずっと続けてきました。
音楽で表現したいこともあれば、映画で表現したいこともある。でも、そこにわたしの中で区分けすることはないです」
演技も音楽も表現の形式は違いますけど、アートとしてつながっている
演技からも音楽からもえることがあり、それぞれに反映できているところがあるという。
「たとえば、今回のソックを演じるにあたって、一生けんめいに役作りをしていくと、いろいろと理解を深めることができる。
ああ、こういう瞬間、ソックはこういうことを感じるんだとか、こういうこと思うのか、自分の価値観とは違ったことに気づくことがある。
そういうことが音楽制作における曲作りに反映されることがある。
逆に音楽のパフォーマンスをしているときの表現が、演技につながることもある。
演技も音楽も表現の形式は違いますけど、アートとしてつながっている。
どちらもわたしにインスピレーションやアイデアをもたらしてくれる。
そういう意味で、相通じるものがある。わたしの中で、音楽とお芝居および映像制作はボーダレスでつながっている。
近年、わたしは自分の楽曲のミュージック・ビデオに関しては、自分自身で監督をして自ら編集をしています。
このようなクリエイティブをできるようになったのは、映画に出演していたから。映画に出演する中で、音楽をどうしたら映像で表現できるのかと考えるようになりました。
ですから、これからも音楽と映画とどちらも続けていきたいです」
ひょっとしたら作りたい映画ができて撮るかもしれません
そうなってくると、自身で映画を作る可能性もあるのではないかと思うが?
「そうですね。ある日、ひょっとしたら作りたい映画ができて撮るかもしれません。
現段階ではその予定はありませんが(笑)」
実は、その活動はいまアートにも伸びているという。
「ここ2年ぐらいなんですけど、アートにも力をいれての作品を発表しています。
少し前に展覧会をしまして、今年の年末に向けて新たな展覧会を開く予定になっています。
私としては、まだまだアートには学ぶことがあると思っていて。
これらを融合して、演技であったり、音楽であったり、アート作品であったりと、その都度、みなさんの心に届く表現ができたらと思っています」
最後にこうメッセージを寄せる。
「わたしの出演する映画が日本で公開されて夢のようです。
これからも自分の出演した映画が日本で公開されることを願っています。
コロナ禍で今回、日本を訪れることは叶わなかったのですが、いつか日本のみなさんに直接お会いできたらと思っています」
「人生の運転手(ドライバー) 明るい未来に進む路」
監督:パトリック・コン
出演:イヴァナ・ウォン、フィリップ・キョン、エドモンド・リョン、
ジャッキー・ツァイ
シネマカリテほか全国順次公開中
公式サイト http://jinsei-driver.musashino-k.jp/
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