将棋「八冠制覇」はいつ、だれが達成するのか。羽生三冠?藤井四段?
2017年5月20日。人類最強の「叡王」(えいおう)と、コンピュータ将棋ソフト最強の「電王」が対戦する電王戦二番勝負の第2局がおこなわれました。結果は電王PONANZA(ポナンザ)が佐藤天彦叡王(名人)に勝ち、PONANZAの2連勝という結果で終わりました。6年間にわたって、棋士とコンピュータとの真剣舞台となった電王戦は、今回を持って、終了となりました。
その電王戦が終わった際の記者会見において、将棋連盟の佐藤康光新会長から、叡王(えいおう)戦がタイトル戦に昇格することが発表されました。これまでの竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖とともに、叡王が加えられて、八大タイトル戦となったのです。
ファンの間からはさっそく、次のような声が上がりました。
「八冠制覇を達成する棋士は、現れるだろうか?」
そして二人の棋士の名が、その候補として挙げられました。
一人は、羽生善治現三冠(王位・王座・棋聖)です。「虹をかける」とも表現された、1996年の七冠同時制覇は、将棋史上最高の奇跡かもしれません。以後も羽生現三冠は、常にタイトルを保持し、将棋界のトップクラスにいます。再び七冠を狙えるのではないか、とささやかれる場面も、これまで何度もありました。その間に獲得したタイトル数は、全部で98期です。
七冠、あるいは八冠というのは、今でも夢のようなことです。しかしもし実現するとすれば、現在でもその最短距離の位置にいるのは、羽生三冠で間違いはありません。
八冠候補のもう一人は、藤井聡太四段です。叡王戦のタイトル昇格があった日には、デビュー以来無敗の18連勝を達成していました。最終的にその記録は、史上最高の29連勝にまで伸びています。また、非公式戦ではありますが、AbemaTVで放映された「炎の七番勝負」において、羽生三冠に勝つなど、7人の強豪棋士を相手に、6勝1敗の成績を収めていました。いずれも、信じられないような勝ちぶりです。藤井四段が「未来の八冠候補」である可能性は、誰にも否定できないでしょう。
8月6日(日)。羽生善治三冠と及川拓馬六段との対局がおこなわれました。棋戦は、棋王戦挑戦者決定トーナメントの2回戦です。結果は及川六段の勝ち。王者から、大きな白星を挙げました。
羽生三冠の今年度中の棋王挑戦の可能性は、これで絶たれました。七冠、あるいは八冠は、しばらくの間は、持ち越しとなりました。
棋王戦挑戦者決定トーナメントでは、羽生三冠の近くの山に、予選を勝ち抜いてきた、藤井聡太四段の名前もありました。羽生三冠、藤井四段、どちらも2回ずつ勝ち上がれば、両者は公式戦で初めて対戦するところでした。それもまた、持ち越しとなっています。
お隣りの囲碁界では現在、棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段と、7つのタイトルが存在します。それらをすべて同時に保持するという偉業は、2016年、井山裕太七冠によって達成されました。以後、高尾紳路現名人にタイトルを一つ奪われたものの、六冠をキープし続けたまま一年が経ちました。そして高尾名人への挑戦権を獲得し、これから井山六冠によるリターンマッチ、再七冠への挑戦が始まるところです。
三十年後の将棋界は?
羽生三冠は現在竜王戦において、挑戦者決定戦三番勝負にまで勝ち進んでいます。そこで松尾歩八段に勝ち、挑戦権を得ることができれば、久しぶりの竜王戦七番勝負への登場となります。さらに渡辺明竜王に勝つことができれば、通算7期目の竜王位獲得。規定により、「永世竜王」の称号を得ることになります。羽生三冠は、他の6つのタイトルの永世称号は既に獲得済みなので、永世竜王まで揃えば、史上初の「永世七冠」を達成することになります。
15歳の羽生善治四段が1986年にデビュー戦を戦って以来、すでに31年が経ちました。現在、羽生三冠は46歳。9月27日の誕生日を迎えれば、47歳となります。
現在15歳の藤井聡太四段は、31年後の2048年、46歳の時点で、はたして、どれだけの実績を積み、どのような肩書を名乗っているのか。七冠や八冠、あるいは永世七冠や永世八冠を達成しているのか。それはもちろん、誰にもわかりません。
いまこの一文を読んでくださっている皆さまは、三十年後の将棋界を、どのように予想されるでしょうか。もう三十年後、その答え合わせをしながら、変わらず楽しく、将棋界の話題で盛り上がることができれば、と思います。