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ロシア軍事高等研究財団「今後の戦争は人間の兵士からロボット兵士に置き換わっていく」

佐藤仁学術研究員・著述家
新型コロナウィルス感染防止のためにマスクをしているロシア兵(写真:ロイター/アフロ)

 ロシアの軍事高等研究財団はロシア政府に対して、今後の戦場では「従来の人間の兵士」から「ロボット兵士」に置き換わっていくであろうと提示した。軍事高等研究財団の副所長のヴィタリー・ダビドフ氏(Vitaly Davydov)は2020年4月にロシアのメディアで「人間の兵士は徐々にロボット兵士に置き換えられていくでしょう。ロボット兵士は人間の兵士よりも速く動くことができるし、人間よりも標的の選定力もあり、攻撃も精確に行うことができます。ロボット兵士ならセンサーに反応するだけで攻撃を行うことができます」と語っていた。

 2019年2月にはロシアの軍事高等研究財団はロボット型兵器の動画を公開し、人工知能(AI)を搭載した兵器が標的を判別して適確に攻撃を行うシーンを紹介していた。AIを搭載したロボット兵器の登場によって、「キラーロボット」と呼ばれる自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapons Systems:LAWS)に発展し、人間の判断を介さないでロボット自身の判断で標的や人間を攻撃して殺しに来ることに対して、NGOらが倫理的な観点から開発反対を訴えている。

 ドイツの哲学者カントは『永遠平和のために』の中で「兵士は人を殺害するため、または人に殺害されるために雇われており、国家が自由に使うことができる機械や道具として人間(兵士)を使用することである。これは我々の人格における人間性の権利と一致しない」と述べていた。ロボット兵士やロボット兵器の登場によって、人間の兵士は戦場に行かなくてもよくなる。兵士が新型コロナウィルスに感染する確率も低くなるだろう。ロボット兵士が戦うようになると戦場で自国の兵士の命が奪われることは以前に比べると少なくなり兵士の「人間の安全保障」は守られるようになる。

▼ロシア高等研究財団が公開しているロボット兵器の動画(2019年2月)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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