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「稼ぐ」よりも「どう使う」か ベストセラー作家、本田健が語る「幸せなお金の増やし方」

佐藤智子プロインタビュアー、元女性誌編集者
アイデアがあふれ出る本田健さんが世界に伝えたいこと(写真提供/アイウエオフィス)

 著書160冊以上、累計発行部数800万部のベストセラー作家である、本田健さん。経営コンサルタント、投資家としての経験をいかし、「お金と幸せ」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。

 2019年6月、『happy money』を英語で執筆し、長年の夢だった世界出版を果たす。

 お金の専門家でもある本田健さんに、「お金は人を幸せにするものなのか」を問う。

(3回連載の第1回目)

―― 2019年は、何冊本を出されましたか?

「ちゃんと数えないと分かりませんが、たぶん16冊ぐらいでしょうか」

―― この1~2カ月だけでも4冊出された。

「そうですね。何を1冊と考えるかによります。物理的な本という意味では、イギリス、アメリカ、スペイン、中国、タイ、ベトナム、韓国でも翻訳本が出ているので20冊ぐらいになるかもしれません」

―― では、常にどこかで出版されている。

「2週間に1冊のペースで、世界のどこかの出版社から僕の本が出ている計算ですね」

―― すごい状況。実際執筆となると、どのくらいのペースで書かれています?

「ここ数年でも年に数冊は書きましたね」

車の後部座席でも時間があれば執筆する

―― 年に数冊とは驚異的なスピードですが。書くペースとしては、毎日何ページずつとコンスタントに書くのか、それともドワーッと一気に書かれるのか。

「基本的にちょっとした空き時間があれば、ずっと書いています。車の後部座席に机があるので移動中も書いていますね」

―― どこか書斎みたいなところで改まってじゃなくて、もう隙間時間があったら書くと。

「そうですね。朝起きて家族が起きる前に少しだけ書いて、家族の顔を見てから書きに出かけたりしています」

―― それは何分ぐらいの話ですか。

「30分のときもあれば1時間のときもありますし。朝ご飯のちょっと前にも、5分、10分とこまめに書くときもありますし。そのときのスケジュールによります。たまに個人セッションをするときは、セッションの間を15分間空けています。その5分、10分の細切れ時間に少しずつ書き溜めています」

―― でも、切り替え時間が必要じゃないですか。

「僕にとってはそれが切り替え時間になるんです」

―― 文章を書くことが。

「はい、そうです。たばこが好きな人が『ちょっと一服してくるわ』みたいな感じでしょうか」

デスクは落ち着く空間で、お気に入りのものたちに囲まれて(写真提供/アイウエオフィス)
デスクは落ち着く空間で、お気に入りのものたちに囲まれて(写真提供/アイウエオフィス)

―― 一服するのが、本を書くこと。

「本を書いて、『あー、いい気分になった』と感じて、本当はもう少し書きたいけど次の人が来ちゃった、みたいな感じです」

―― では、書くことが全然ストレスじゃないんですね。

「そうなんです。将棋の羽生さんと対談させていただいたときに、新幹線でお見かけした話をしました。羽生さんは基本的に将棋のことをずっと考えていらっしゃると思いますが、そのときも将棋か何かをやっていたんですよ。新幹線の中ぐらい『少年ジャンプ』とか読んでもいいんじゃないかと思いますが。この人は休まないのかなと。そしたら、『僕の趣味はチェスです』と(笑)」

―― すごい(笑)、仕事が将棋で趣味がチェス。

「それだと全然頭が休まらないじゃないかと思いますが、村上春樹さんも小説が本業で翻訳が趣味と書いていました。気分転換に趣味をするというのは、超一流の人たちの共通点ともいえます」

アイデアが巻物のように次々と出てくる

今まで出版された著書の数々。今も次々と更新されている(写真提供/アイウエオフィス)
今まで出版された著書の数々。今も次々と更新されている(写真提供/アイウエオフィス)

―― 本田さんもそうですよね。

「僕はそこまでではないですが、本の執筆の気分転換にセミナーをやり、セミナーの気分転換に本の執筆をする。セミナーも2,000人ぐらいの大きなものから400人ぐらいのもの、10人の少人数のものもあって、僕の頭のリフレッシュになっています」

―― セミナーで話したことを本にして、本を書いたらセミナーで話してと、いろいろ切り替えて。アイデアがいくらでも浮かぶんですね。

「そうなんです」

―― 書かずにはいられないぐらい。

「そうですね。だから、書斎で、ずっと朝から晩まで1年書けるかというと、書ける人は少ないと思います」

―― こもって、「今日は誰も書斎に入れないでくれ」とか、今日は本を書く日です、ということではなくて、本を書いたり、いろいろ人に会ったりしながら。

「はい。書斎にこもって書く日もありますけど、4日で1冊書いてしまうこともあります。僕は隙間時間で書いたほうが書けるタイプですね」

―― 30分で1章ぐらいはバーッと書いてしまう?

「だいたい原稿でいくと、7~8分で1ページぐらいです。このペースで6時間書いたら、200ページの本を4~5日で書ける計算になります」

―― それを無理やり生み出しているんじゃなくて、あふれ出るアイデアでやっているというのが素晴らしいですね。

「イメージでいうと、第1章、第2章、第3章と、ペロンペロンと巻物のように章立てが出てきます。クリックしたら、またペロンペロンと小見出しが出てくる感じです」

―― では、書くことはメモをただ表現するという感じですね。

「そうですね」

―― 何か書こうと思って悩むことはないということですか。

「はい。なぜかと言うと、日常生活でもそれを体系立てて教えているので、インターネットの検索エンジンのように、キーワードを入れたらすぐ検索結果が出てきます」

―― すごいですね。発想が素早いというのはそういうことなんですね。

著書160冊累計発行部数800万部。世界出版も果たして

世界出版により、サインも英語表記の場合も(撮影/佐藤智子)
世界出版により、サインも英語表記の場合も(撮影/佐藤智子)

―― ちなみに、今までに出版した著書は、160冊でいいですか。

「別のシリーズになりますが、ベトナム語の翻訳本がすでに10冊ほど出版されているので、著作数は累計170冊になるかもしれません」

―― 累計出版部数も更新されていますよね。

「そうですね、今は800万部ですね」

―― デビュー作の『ユダヤ人大富豪の教え』が100万部を超えて。

「はい。その後も何回か1万部を増刷したので、108万部ぐらいになっていると思います」

―― 34歳で作家デビューされて、ついに、2019年6月に『happy money』で世界デビューされました。何カ国同時出版だったんですか。

「最初は、アメリカ、イギリス、オーストラリアの3カ国で同時出版されました。それから日本語版が7月に出版。12月にスペインとポーランドで出版。2020年には40カ国以上で出版される予定です」

2019年6月、初めて英語で書き下ろした『happy money』を自身で翻訳し、2019年7月には日本でも出版した(撮影/佐藤智子)
2019年6月、初めて英語で書き下ろした『happy money』を自身で翻訳し、2019年7月には日本でも出版した(撮影/佐藤智子)

―― その『happy money』が今全世界で合わせると、累計出版部数が。

「もう少しで20万部になるところです」

―― 素晴らしい。どうですか、国によって反応が違いますか。それとも同じですか。

「国によってというよりは、今いろんな国で展開されているので、アメリカ版とイギリス版が世界中のブックストアに入っています。だからタイやフィリピン、香港、中国をはじめ、日本も紀伊國屋さんとかの英語の本のコーナーに本が置かれています。さすがサイモン&シュスター(Simon & Schuster)の配本力だと思います」

―― では、日本語のコーナーにもあるし、外国語の本ということでも紹介されているということですか。

「はい。フィリピン、オランダ、ルーマニア、ポーランドでも英語版が展開されています。そういった意味では世界の相当な国に英語の本だけは流れていっています」

―― 今も世界の誰かが読んでいる、ということですね。

「そういう読者の方からメールが来ます」

―― どういうことが書かれていますか?

「『本を読んで、すごく人生が変わりました』『happy moneyについてもっと早く学びたかった』という感想をたくさんいただいています」

お金は人を幸せにするものなのか

―― 『happy money』は一言で言うと、どういう本ですか。

「『happy money』はあなたがお金と楽しく幸せに付き合うために書いた本です。というのは、ほとんどの人たちはお金を欲しがりながら、お金があるのはちょっと面倒くさいと思っています」

―― そうですよね。お金は欲しいですもんね、みんなね。

「はい。本当はお金が欲しいけど、なんか面倒くさいことになるならいいやと」

―― 分かります、分かります、なんかね。巻き込まれそうな感じがします。

「だから、『お金持ちになりたいですか?』と聞かれても、『お金持ちにはなりたいけれども、面倒くさいのは嫌だな』というのが正直なところだと思うんですよね。お金は謎が多いものです。コンビニで使うお金やFXで使うお金、仮想通貨、海外のお金は全く同じものですが、形が違うので、その違いがよく分からないと思います」

「感謝とともに払うお金、ワクワクしながら使うお金、誰かを信じて渡すお金はすべてハッピーマネーです」(本田健さん)(写真提供/アイウエオフィス)
「感謝とともに払うお金、ワクワクしながら使うお金、誰かを信じて渡すお金はすべてハッピーマネーです」(本田健さん)(写真提供/アイウエオフィス)

―― ちゃんとした現物として現金の場合と、形がないもの。キャッシュじゃない場合もありますしね。

「はい。だから、多くの人がSuicaのお金と現金のお金はどう違うのか? 何がお金かと問われると、ほとんどの人が実はもう答えられないと思います」

―― 確かにそうですよね。

「現金で紙幣とコインがお金だったときはよかったんです。でも、面白いことに『クレジットカードはお金ですか?』と聞くと、みんな『それはお金じゃない』と言うんです」

―― ただのカードですから(笑)。

「でも、これで限度額がなかったらいろんなところで買い物ができるわけですよね」

―― 今はもう現金を持たなくても海外旅行に行けてしまいますからね。

「じゃあ、これはお金なのかというと、それはお金ではない。そうするといったい何なのかな? みたいな」

―― お金の概念が今はもう変わってきてしまっていると。

「そうなんです。例えば小学生の10歳の子に『お金って何?』と聞かれたら、『お金は紙とコインがあって、これが千円札、1万円札、これが100円で』と言って、『知ってる』と。で、『クレジットカードもお金として使える。Suicaもお金として使えるんだよ』と。『うん、知ってる』。『じゃあ、Suicaのお金と暗号通貨のお金はどう違うの?』と聞かれたら、たちまち大人は『うーん』みたいになってしまうでしょう」

―― 答えられない。

「そもそも自分が毎月お給料でもらうお金とお金持ちの人が海外に投資して何百倍にも増やしているお金と、いったい何が違うんだと。なんかおかしいじゃないの、なんかずるい、というのが多くの人たちが感じていることでしょう」

お金は人を感情的にする

―― お金となると、いろいろと、みんな思うところがありますよね。

「お金というのは人の感情をすごくあぶり出すものです」

―― 例えば?

「例えば、お金を取られた。お金を貸したのに返してくれない。約束したのに同じ金額を振り込んでくれないと人は怒ります。恋人にお金を取られた。あるいは恋人にお金を貢いだのに、愛が返ってこなかった。あるいは子どもが世話に来ないと。あいつに遺産はやらない、みたいな。そういう、お金にまつわることで感情的な浮き沈みを私たちは体験しているんです」

―― お金を何かの対価にしていて、それがかなわないときに人は感情的になる。

「はい。そして、十分にお金が足りないのではないかと思って多くの人たちは不安を感じているんです」

―― 「もっとお金があったらな」とみんなが言いますものね。

「老後のことが心配。病気になったらどうしよう。子どもに十分な教育を受けさせてあげられないの。で、何かを我慢しないとと。全く自由にお金を使っている人はほとんどいなくて、ほとんどの人たちが何らかの節約モードに入っています」

―― そうです、今はよくても将来は、と不安に思ってしまいますものね。

「好きにお金を使っている多くの人はクレジットカード破産をしています」

―― 後先をある意味考えない。今がよければいいみたいな。

「基本的にはみんなお金に関しては恐れを抱いているわけです。でも、『お金はそもそも恐れるものなのか。それとも、お金は人を幸せにするものなのか』というのがこの本で投げかけている問いです」

「お金を使うときも受け取るときも愛と感謝と喜びを感じるのがhappy money」(本田さん)(撮影/佐藤智子)
「お金を使うときも受け取るときも愛と感謝と喜びを感じるのがhappy money」(本田さん)(撮影/佐藤智子)

―― そのお金に恐れや不安を抱いている人たちが不幸なお金の使い方だとしたら、幸せなお金、happy moneyというのはどういったことですか。

「happy moneyというのは、受け取ったときにすごく愛を感じたり、ワクワクしたり、楽しくなったりするお金。使うときも喜びで使うので、楽しくなったりワクワクしたり、感謝したり、されたり、という愛と感謝と友情が流れるのがhappy moneyなんです」

―― 分かりやすい例で、どういうときが。

「例えば、自分の息子がまだ8歳とか9歳なのに、お年玉の中からお母さんに母の日にカーネーションを買って、『お母さん、ありがとう』と。『いつもご飯を作ってくれて、ありがとう』と言って使ってくれたお金はhappy moneyですよね」

―― お母さんを喜ばせたいとか、感謝とか、愛からきているもの。

「あるいは友達が転職のお祝いというのでくれるお金もhappy money。おじいちゃん、おばあちゃんが結婚式のためにお金を送ってくるのもhappy money」

―― じゃ、そこには幸せな気持ちとかワクワクした気持ちとか喜びとか愛があれば。

「そうですね。そのお金はhappy moneyといえます」

―― 例えば、女の子にこれだけのプレゼントを渡したら、きっと愛を勝ち取れるだろうというのは。

「それはhappy moneyじゃなくて、unhappy moneyです」

―― やっぱりちょっと策略が。

「お金をあげて何かを手に入れようというのは、happy moneyじゃないです。例えば親から来るお金にしても、『おまえ、本当にこのお金を好きに使って』というのはhappy moneyですが、『このお金をあげるから、今度実家に帰ってこい』というのはunhappy moneyです」

―― 交換条件でね。

「そう。それは取引なんです。これを出したからこれをくれ、というね」

本田さんが教える「happy moneyとunhappy moneyの違い」とは (資料提供/アイウエオフィス)
本田さんが教える「happy moneyとunhappy moneyの違い」とは (資料提供/アイウエオフィス)
happy moneyの流れを作るためにできること (資料提供/アイウエオフィス)
happy moneyの流れを作るためにできること (資料提供/アイウエオフィス)

―― 逆に言えば、本当にギフトみたいな感じであげてしまって、返ってこなくても、それが幸せであればhappy money。

「そうなんです。例えば、お寿司屋さんがずっと若い頃から自分の店を持つのが夢で、毎月2万円ずつ積み立てている。ボロボロになっている通帳をお客さんが見て、何年掛かったんだと。24万ずつ積み立てて、5年で120万、20年で480万円。いくらまでためるんだ? 5,000万です。あと何年掛かるんだ? そのときはもうじいさんになってしまうよ? そうですね、でもやっぱりどこかから始めないと、と思ってるんですが、というふうに言ったら、じゃあ、俺が出してやる、と言ってポンと5,000万を出してくれたとする。粋なおじいちゃんに気に入られたお金もhappy moneyですよね」

―― それを、もらったほうも「申し訳ない」「こんなことをされて、何か裏があるんじゃないか」と罪悪感や疑念に思うんじゃなくて、使うほうも受け取るほうも幸せを感じるということですか。

「そうなんです。僕がすごいと思うのは、それだけほれ込まれる人ってどんだけすごいか? ということですよね。これがhappy moneyなんですよ。結局、誰かを信じて、見返りを期待せずにあげるお金かどうかということなんですよ」

―― それが本当の投資でしょうね。儲かる、自分の見返り、自分の得じゃなくて、この人にいくらあげてもいいくらいの、その人を信じるという。

「そう。あとは、お客さんが『ありがとう』と言って、『本当においしかったです』『マッサージ気持ちよかったです』と言って感謝とともに払ってくれるお金もhappy moneyなんです。同じように、自分が『おいしかったです、ごちそうさまでした』とか、『本当に楽しかった』『この1万円でお母さんに何か買ってあげて』というお金もhappy moneyです」

―― じゃ、払いながらちょっと惜しかったり、悔しかったり、損したなと思うのは、同じ「払った」でも全然意味が違う。

「そう。取られた、ぼられた、やられたと思うのは、unhappy moneyです」

―― 奪われたと思いながら払うのはね。

「はい。なんか自分の体の一部がもがれるみたいなことがあるじゃないですか。例えば、パーティーの会費が1人5,000円ですと。『5,000円もするの?』と言ってしまう。どうせ払うんだから『ありがとう』ぐらい言えばいいのに、嫌だという気持ちからイヤイヤ支払うのは、unhappy moneyです」

―― どうせお金を払うなら気持ちよく、快く、感謝を持って払うと。

「そうなんです。そうすると、そのプラスのエネルギーが、循環していきます」

会う人にオリジナルのペンを渡すなど、プレゼントを欠かさないという本田さん(撮影/佐藤智子)
会う人にオリジナルのペンを渡すなど、プレゼントを欠かさないという本田さん(撮影/佐藤智子)

―― happy moneyは、巡り巡って、循環していくものなんですね。

「そうです。そうすれば、お金は楽しいものだというふうに思えるようになります。そうじゃないと、お金は苦しいものだ、つらいものだといったように、お金を手放すと痛みを感じるという風になると、お金の便秘体質になってしまいます」

―― お金の便秘体質。

「お金が入ってくるのはいいけれども、絶対出さないみたいな。きれいに手放さないと循環が起きないですよね。変な話ですが、貯金が10万あるけれども収入が100万で支出が100万の人と、貯金は1億あるけれども、収入が10万で支出が10万の人だったら、どちらが楽しい生活をしているかということです」

―― 幸せにお金を使うということは、誰かに幸せが流れていく喜びがあったりとか。

「どちらに友達が多いと思います? 資産が1億だったとしても、収入と支出が少ない人というのは流れがないのです。支出が同じだけあって月末でゼロだったとしても、流れがある人のほうが将来お金持ちになる可能性が高いでしょう」

―― お金を独り占めしていたら、ないのと同じことですものね。1億円の貯蓄があったとしても。

「はい。多くの人たちを豊かに幸せにする会社ほど儲かっているものです」

―― やっぱりそれだけ社会に貢献というか、いろいろ循環させているということですね。

「そうなんです。考えてみたら、社会に善を与えている、社会の誰かの役に立っている人はお金持ちになっています」

―― 儲かっていることは、いかに多くの人を幸せにしているかということですね。

「本もそうなんですよね。同じ仕事なんですが、1万部売れる人、10万部売れる人と100万部売れる人がいます」

―― そういう意味では本田さんはベストセラーを何冊も出されています。多くの人を幸せにしていますね。私も今回インタビューさせてもらうことでできるだけ多く著書を読ませていただこうと思っても、本が売り切れていたり、図書館に行ったら、みんなが借りていて在庫がないくらいでした。

「ありがたいですね」

一行一行に祈りを込めて書いている

―― 本を読ませていただいて、素晴らしいなと思ったのが内容もさることながら、「あとがき」が泣けてきますね。こんなにも読んでくれたことに感謝されていて。

「ありがとうございます。パラパラ読んだぐらいでは最後まで読みませんからね。あとがきを読んだ人は本当に最後まで読んだ人ですから(笑)」

―― 「長い時間掛けてここまで読んでくれて、ありがとう」と。で、その読んだときにいろんな感情が出たと思う、つらかったかもしれないと読者の感情の状態にまで気遣われている。「僕の本、よかったでしょ」「ためになったでしょ」という話じゃなくて、「いろんな感情が出てきて、途中で読むのをやめる選択肢もあったかもしれない。でも、付き合って読んでくれて、本当にありがとう。そして、これから人生が変わるんだよ」と。何でしょうね、まるでそこに本田さんがいるかのような。読んだ人に対しての思いやりがすごいから、それがベストセラーになっているのかなと。

「僕の中では一行一行に祈りを込めて書いています。というのは、僕が今まで読んだ本の中でたった一行がずっと心に残って、それが僕にとって光となっている文章が結構あります」

―― 例えば?

「例えば、ナポレオン・ヒルがこう言ったとか、誰かが誰かにどう言ったというちょっとしたフレーズなんです。太字にもなっていませんが、自分にとってはすごく響く文章が結構あります。例えば、『夜明け前が一番暗いんだよ』とか。『君が悩んでも悩まなくても必ず夜は明けるんだよ』とか。誰が言ったかということに関しては覚えていなくても、その言葉が心にすごく刺さったりします」

―― その言葉が刺さった頃の本田さんはどういう状態だったんですか。

「そのときは八方ふさがりみたいな感じでした。これは難しいなと。死んでしまいたいというふうな気持ちのときに、そういう言葉が刺さるわけですよ」

―― 自分がそれを経験しているから、きっと誰かの心に届くだろうという気持ちで書かれている。

「その通りです」

多くの人の幸せを望んで本を書き続けている本田さん(写真提供/アイウエオフィス)
多くの人の幸せを望んで本を書き続けている本田さん(写真提供/アイウエオフィス)

―― 160冊ぐらい書かれていても、こんなもんだろう、ということではない。

「これは僕にとっての祈りの瞑想みたいなものなんです。ちょっとした一行、何かのフレーズで、はっと気が付く人もいるわけですよ。だから、祈りであり、本来の自分に気付くための目覚まし時計みたいなものでしょうか。目覚めるための仕掛けなんですよ」

―― ベルが鳴って。「今だよ」と。変わるときだよ、というわけですね。で、ときめくもの、感動するものを提供したいと。何冊書こうと、どれだけの人が読んでいようと。本田さんにとっては、何万部、何万人に読まれた、というのは数字じゃなくて、一人一人の人ということなんですね。

「何万人、というよりは、一対一の関係です。一対一の関係が何万も同時に存在するという感覚です」

―― だから、読んでいると、手紙みたいな感じがするんですね。

「20代の女性、30代の男性、50代の男性、10代の女性がそれぞれ複数の人間関係が僕の中では何万回も同時に発生しているという感じです」

―― だから、これは誰かのことじゃなくて、自分のことかもしれないと思えるということなんですね。

「あなたのこととして、書いています。本を読んだ読後感が『このままでいいんだ』というふうに感じるのか、『貯金もできないやつは一生落伍者だ』『ガーン!』みたいな、ビシッとビンタされたような読後感がある本もあるじゃないですか。それがウェイクアップコールになったりするんですが、僕はやっぱりしばらく本を閉じた後、『はー』となんか一息つきたいみたいな、そういう本を届けたいと思っています」

―― そうなっているし、優しさがあふれていると思いました。

お金を稼ぐことより、どう使うか、どうもらうのかのほうが大事

―― この『happy money』という、お金の話はやっぱり全ての人に共通する、全世界に通じるじゃないですか。本田さんと言えば、お金の専門家、お金を稼いでハッピーになるという本かと思いきや、そうじゃないというところが、概念を覆される。それは狙いというか、結局お金をきっかけに何を一番伝えたかったんですか。

「『自分は誰か』『今回の人生をどう生きるのか』ということにフォーカスしてもらうための本です。結局お金というのは、お金さえ手に入れればなんとかなると思っていたけれども、お金は関係ないわけです。それよりも、自分がそのお金をどういうふうに稼ぐのか。どういうふうにもらうのか。どういうふうに使うのかのほうが大事です」

―― なるほど。

「そして、お金に関する感情を読み解いたり、場合によっては癒やしたりすることのほうが大事だなというふうに思ってもらうと、お金をどれだけ稼ぐとかもらうとかいうよりも、大事だということになってくるわけです」

―― 今、自分が不幸なのはお金がないからだと、お金さえあればと思って頑張って働いて、実際にお金を稼いでも全然幸せじゃないということがあるかもしれない。それを、お金に対する考え方や感情を変えたら、というようなことを今世界に発信しているんですね。

「はい。実際に、少なくとも僕が個人的な感想をいただいている何千人の人たちの人生は変わりつつあるし、面白いのが本を読んだ後の行動が人によって全然違うことです。例えば、お父さんとお母さんに会いに行って、お父さんとお母さんに自分がお金のことでいかにつらかったかということを話して、親子3人で涙ながらにハグしたという人もいれば、夫婦で『お金で変な取引していたよね?』という話し合いをしてお金のストレスがグッと減ったりとか」

―― 私自身もお金を何かに使うときに罪悪感があるわけですよ。私ごときでこれに使っていいのだろうかとかね。そうするとやっぱりケチってしまう。そうなってくると、やっぱりさっきの便秘状態になりますよね。それを快く使う。そして、楽しく幸せに感謝して使って循環させる。それでまた、人生を転換させればいいんだと思えるから、潔くなった、気持ちよくなった感じがしますね。

「その通りだと思います」

●第2回目「願望達成」についてのインタビュー記事はこちら

●第3回目「人間関係」についてのインタビュー記事はこちら

プロインタビュアー、元女性誌編集者

著書『人見知りさんですけど こんなに話せます!』(最新刊)、『1万人インタビューで学んだ「聞き上手」さんの習慣』『みんなひとみしり 聞きかたひとつで願いはかなう』。雑誌編集者として20年以上のキャリア。大学時代から編プロ勤務。卒業後、出版社の女性誌編集部に在籍。一万人を超すインタビュー実績あり。人物、仕事、教育、恋愛、旅、芸能、健康、美容、生活、芸術、スピリチュアルの分野を取材。『暮しの手帖』などで連載。各種セミナー開催。小中高校でも授業を担当。可能性を見出すインタビュー他、個人セッションも行なう。

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