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【SUPER GT】恒例のゴールデンウィーク富士決戦!スープラの連勝か?ライバルの大逆転か?

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
SUPER GT 開幕戦・岡山のスターティンググリッド 【写真:GTA】

4月に岡山国際サーキットで開幕した「SUPER GT」富士スピードウェイ(静岡県)で第2戦を迎える。5月3日(月)4日(火)というゴールデンウィークの祝日に開催する恒例の大会はレース距離が普段のレースより長めの500kmに設定されている。第2戦のプレビューをお届けしていこう。

開幕戦・岡山はスープラが表彰台独占

蓋を開けてみると、GT500クラスはやはりトヨタ・GRスープラの独壇場だった。開幕戦・岡山では予選からトップ5をGRスープラが占め、決勝でも表彰台独占はもちろん上位4台がGRスープラという圧勝ぶりだった。昨年のGT500規定変更によりデビューしたGRスープラだが、あと僅かなところでタイトルを逃した悔しさを今季のマシンの進化に結びつけてきた印象だ。GRスープラ勢の中でも特にブリヂストンタイヤを履くチームが強さを見せている。

ビッグバトルを展開した14号車 ENEOSと36号車 au 【写真:GTA】
ビッグバトルを展開した14号車 ENEOSと36号車 au 【写真:GTA】

開幕戦を制したのはまさにその組み合わせの「#14 ENEOS X PRIME GR Supra」(大嶋和也/山下健太)。トヨタ自動車の豊田章男社長がオーナーを務めるプライベートチーム「ROOKIE RACING」は今季から自社でマシン製作・整備を行う新体制に切り替えたが、その初陣でいきなりの優勝を飾ることになった。しかも、今季最大のライバルになるであろう「#36 au TOM’S GR Supra」(関口雄飛/坪井翔)との大接戦を制しての勝利は大きな価値がある。山下健太vs坪井翔のビッグバトルは今後も「SUPER GT」の名勝負の一つとして語り継がれていくことになるだろう。

ファンを熱くさせた戦いを尻目に悔しい3位となったのがポールポジションスタートだった「#37 Keeper TOM’S GR Supra」(平川亮/阪口晴南)だ。今季はニック・キャシディに代わってサッシャ・フェネストラズが平川のチームメイトになる予定だったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で外国人の入国に制限がかかっており、代役で阪口を起用している。開幕戦の岡山ではピットインの際に順位を落とし、勝利を逃してしまったことが残念だったが、ロングディスタンスの富士ではそのリベンジに期待したい。

大混乱となったピットインも明暗を分けた。左奥にいる #37 Keeper【写真:GTA】
大混乱となったピットインも明暗を分けた。左奥にいる #37 Keeper【写真:GTA】

富士ではNSX、GT-Rも応戦できる?

開幕戦の予選はGRスープラ、ホンダNSX、日産GT-Rの3車種の差がクッキリと表れ、3つの階層が作られた印象だったが、富士ではどうだろう?

昨年も富士で速さを見せたのはホンダNSX。昨年は2戦連続で開催された富士の第2戦でホンダNSXがフロントローを独占。REAL RACINGのKEIHIN NSXが優勝を飾っている。 NSXの中で開幕戦・岡山の最上位は今季からメインスポンサーのブランド変更により赤いカラーリングに一新された「#17 Astemo NSX-GT」(塚越広大/ベルトラン・バゲット)の5位。GRスープラ勢がウェイトを積むことを考えれば、NSXのパフォーマンスに期待がかかる。

今年から赤いカラーリングになったREAL RACINGの17号車【写真:GTA】
今年から赤いカラーリングになったREAL RACINGの17号車【写真:GTA】

昨年の第2戦でポールポジションからスタートするも勝利を逃した「#8 ARTA NSX-GT」(野尻智紀/福住仁嶺)はNSX勢の中でも本命と言えるだろう。なぜならドライバーの2人、野尻と福住は先週末のスーパーフォーミュラでも優勝争いを展開するなど、今や日本一を争うライバルだ。そんな2人が組むARTAは昨年のツインリンクもてぎのレースでようやく優勝。昨年勝てなかった富士でのリベンジを狙う。

そして開幕戦で大苦戦したのが日産勢。最上位は「#3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R」(千代勝正/平手晃平)の8位という厳しい結果になった。ただ、日産勢は開幕戦・岡山で落胆する結果を残しながらも、ゴールデンウィークの富士では復調するというのがいつものパターン。特に「#23 MOTUL AUTECH GT-R」(松田次生/ロニー・クインタレッリ)のアタッカー、ロニー・クインタレッリの富士での速さはもはや伝説レベル。厳しい状況をはねのける日産勢の復活をファンは信じているはずだ。

厳しい戦いが続く日産勢【写真:GTA】
厳しい戦いが続く日産勢【写真:GTA】

昨年「#23 MOTUL AUTECH GT-R」はセーフティカー導入のタイミングを見計らった作戦で奇跡の大逆転優勝を成し遂げたが、motorsport.comなどが報じた情報によると今回の富士から全車一斉に速度制限をするFCY(フルコースイエロー)が導入される方向で話が進んでいるようだ。開幕戦でもセーフティカーの運用を巡って混乱が起きていただけに、FCYが導入されれば正々堂々と戦うレースが展開されることになる。

GT300は過激なタイヤ戦争で予測不能

開幕戦・岡山ではGT300クラスの戦いも見逃せない戦いとなった。GT300はFIA GT3、JAF GT、マザーシャシーなど様々なアプローチのマシンが同じ土俵で戦い、ドライバーも元GT500チャンピオンを含めたプロドライバーが目白押し。それに加えてブリヂストン、横浜ゴム、ダンロップの3メーカーが参戦し、複雑な要素が絡み合って接戦が展開されている。

横浜ゴム、ブリヂストン、ダンロップ。異なるタイヤを履いたマシンが入り乱れ合うGT300【写真:GTA】
横浜ゴム、ブリヂストン、ダンロップ。異なるタイヤを履いたマシンが入り乱れ合うGT300【写真:GTA】

昨年から続く傾向としてはダンロップユーザーが予選でが一発の速さを示し、決勝では横浜ゴムユーザーが強さを見せている。今年の開幕戦もそのパターンとなり、「#56 リアライズ日産自動車大学校GT-R」(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)が予選4番手から優勝を果たした。チーム代表で監督の近藤真彦は今回の富士も来場しないということだが、チームは好調。長距離のレースで同チームはジワジワと順位を上げてくることになるだろう。

決勝で強さを見せたという意味では今季大きく台数を増やしたGT300用のGRスープラも注目。今回の大会のメインスポンサーである「たかのこの湯」がオーナーとなる「#244 たかのこの湯 GR Supra GT」(三宅淳詞/堤優威)は若手ドライバー同士で組むコンビながらも予選5位から決勝も順位キープの5位と健闘した。同チームも横浜ゴムユーザーである。

みきゃんカラーの244号車 たかのこの湯 GR Supra GT 【写真:GTA】
みきゃんカラーの244号車 たかのこの湯 GR Supra GT 【写真:GTA】

また、昨年の開幕戦を制した「#52 埼玉トヨペット GB GR Supra GT」(吉田広樹/川合孝汰)も今大会の大本命。こちらはGRスープラにブリヂストンタイヤの組み合わせで、昨年の富士最終戦でもポールトゥウインを達成している。開幕戦は3位表彰台と好スタートを切っているだけに、長丁場の500kmレースでは何とか連続表彰台という結果に繋げたいはずだ。

岡山で上位に来た日産GT-R、GRスープラが富士でも上位につけるのか、それとも急浮上してくる伏兵がいるのか、微妙なコンディションの変化にも左右され、戦況は予測不能なGT300クラス。長丁場のレースではある意味、GT500クラス以上にドラマチックなレースを展開してくれそうだ。

天気予報も良好な予報が出ており、素晴らしいコンディションの中でレースが展開できそうなゴールデンウィークの「SUPER GT」。シリーズの流れをいち早く掴むのはどのメーカー、どのチームだろうか。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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