携帯電話契約件数動向とiPhone効果
契約者数増減動向とiPhoneの主要イベントとの関係
現時点で日本国内においてAppleのスマートフォン「iPhone」を販売している主要キャリアは、au(KDDI)とソフトバンクモバイル(以後「SBM」)のみ。もう一社NTTドコモ(以後「ドコモ」)はスマートフォンそのものは多機種の展開をしているものの、iPhoneの販売には至っていない。
ところが昨今、現地時間の9月10日に行われるとされるアップルの新商品発表会をきっかけに、ドコモもiPhoneの発売を始めるのではないかとの話が複数ルートで伝えられている。携帯電話市場ではiPhoneの販売が大きなカギを握っており、この噂話が事実となれば、今後市場では小さからぬ動きが生じる。そこで今回は2つの視点「携帯電話契約件数の増減」「MNPの動向」から、iPhoneがどこまで市場に影響を及ぼしているのかの状況確認・推測を行うことにする。
まずは主要キャリアにおける携帯電話契約件数の増減を折れ線グラフにし、その上で国内のiPhone販売動向の主な出来事を加えたもの。
iPhone4が発売された2010年6月頃からSBMの飛躍が始まる。そしてドコモとauがそれに後れを取る形で両社横並びで追随。1年強の後にauも4SからiPhoneの販売を始めるようになるのと同じタイミングで、ドコモとの横並びからSBMの背中を追いかける形に移行しているのが分かる。ほぼそれと時を同じくして、ドコモは増減数の上で低迷を始め、前月比で純減を繰り返すようになる。
これらの動きを示した原因は、iPhone以外にもいくつか考えられる。また契約総数はまだまだドコモの方が上ではあるが(フィーチャーフォン時代の蓄積が大きい)、月次純増数の動向の上でiPhoneの販売の是非が少なからず関係していることは容易に想像できる。
MNP動向でさらに良くわかる「iPhone効果」
次に示すのはMNP(Mobile Number Portability。ナンバーポータビリティ。電話番号を継続しつつ契約会社=キャリアを変更できる仕組み)の推移。iPhone発売に絡んだ主要動向をかぶせてみると、各社のMNP変動の理由が良くわかる
iPhoneの展開前からドコモはMNP制度の上では「自社のお得意様が他企業に移転してしまう」状態。auはSBMとドコモの板挟み的な雰囲気で、プラスとマイナスを行き来。SBMは概して堅調だが、移入数はさほど多くは無かった。
それがiPhone4の発売をきっかけに、状況が大きく変化する。SBMは移入数が大いに増加する一方、auとドコモはマイナス常連となる。シンプルに表現すれば「ドコモとauからSBM(のiPhone)に利用客が移転する」ような状態。
これが2011年10月に、auもiPhoneの販売を始めることで事態は一転する。SBMへの移入者数はやや抑え気味となり、auは一挙にマイナスから浮上しプラスの常連に。しかもSBMを抜いてMNP増加数ではトップを維持するようになる。他方ドコモはSBMだけでなくauへも「iPhoneを求めてMNPを使った移転組」が現れるようになり、減少幅は拡大する。そして今なお、その拡大傾向は継続中である。
「もしも ドコモも iPhoneなら 小さな変化に 留まらない」?
契約者数の純減増、MNPの増減、共にiPhoneの販売動向がすべてを握っているわけではない。料金サービス体系、サポート動向、通信環境の良し悪し、そしてiPhone以外の多種多様な新機種の展開が、少なからぬ影響を与えている(そもそも論として今回の数値から導き出せるのは相関関係でしかなく、因果関係までは立証できないことに注意してほしい)。
とはいえ、日本では海外以上にiPhoneが一種のブランドと化して絶対視されていることや、実際の販売普及動向、そして複数の数字の変移とiPhone関連の事象とのタイミングの一致性を見るに、大きな要因であることには違いない。
仮に噂通りドコモがiPhoneの販売を始めるとしても、SIMロックや料金体系、通信環境の問題など、気になる点は多い。しかし多くの携帯電話ユーザーにしてみれば、そこまで深いことは考えず、単に「ドコモでもiPhoneが出る」という、ブランドレベルでの認識に留まるのがオチ。そしてその状況は、新規に携帯電話を購入する人、買い替えをする人の多くに、これまでとは異なる選択環境を呈することになる。
「ドコモからもiPhoneを販売する」という噂が事実か否かは、日本時間では9月11日以降に明らかになる。現実のものとなれば、日本の携帯電話市場、そして国産の携帯電話開発・製造メーカーにも、小さからぬインパクトを与えることは間違いあるまい。
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