日清食品がカップヌードルの装飾模様を位置商標登録
2015年4月から登録可能になった、音商標、色彩のみからなる商標等の「新しいタイプの商標」については今までも記事を書いてきました。もうひとつ忘れてはならない「新しいタイプの商標」として位置商標があります。
位置商標とは、標章(文字やマーク等)とそれが商品等に付される位置の両方の要素によって構成される商標です。標章単独では識別力がなくても、その位置に特徴があれば全体として商標登録できる点がポイントです。
位置商標のわかりやすい例としてThinkPadの赤いトラックポイントがあります。赤いポッチだけですと単純すぎて商標登録は困難ですが「赤いポッチがキーボードのセンターポジションにある」というところまで含めれば、消費者にとっての識別力が増し登録可能性が高まります。(なお、ThinkPadのトラックポイントは米国では位置商標として登録されていますが日本では出願されていないようです、この例はあくまでも位置商標の概念の説明です)。
最近、日清食品ホールディングスがカップヌードルのカップの装飾デザインの一部のみ(タイトル画像参照)を位置商標登録することに成功しました(登録6034112号)。
位置商標でも標章自体に製品名が含まれているなどそれだけで識別力があれば登録は比較的容易です(ただし、この場合は、位置を限定した位置商標で出願するまでもなく通常の商標として登録した方がよいのではという議論はあります)。一方、今回のように単にパッケージ上の装飾のように見える場合には登録のハードルは高いです。審査基準によれば、このような場合には3条1項6号(需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標)の拒絶理由が通知されます。
出願人は、商標使用によって識別力が生じたこと(消費者がそれを見ればあの商品とわかる状態になっているということ)、いわゆる「セカンダリーミーニング」を立証しなければいけません。ちょっと前に書いた商品形状のみで立体商標登録するのと似たような高いハードルです(根拠条文は異なりますが)。
この出願の審査書類を請求して調べてみました(登録公報発行日(2018年5月8日)からまだ2カ月経っていないので無料で縦覧可能です)。
カップヌードルの歴史、市場シェア、メディアへの露出等々の情報に加えて、第三者機関による消費者認知度調査(消費者1,880人に当該位置商標部分のみを見せて調査したようです)などの証拠によりこのデザインが消費者に十分な識別力を提供できていることが分厚い意見書で主張されています。
さらには、ライターののざわよしのり氏のツイート(おそらくこれ↓)
が引き合いに出され、こういう線があるデザインのカップラーメンは消費者にカップヌードルと認識されるのであるとの主張が展開されています。私個人としてもこの装飾デザインだけで十分な識別力を発揮できていると思います。
審査に3年弱を要しましたが、この位置商標を登録できたことで、このデザインを付したカップ麺の製品ライン全般を保護できますし、商品名は似せずにこのデザインのみをパクった微妙な模倣品にも権利行使できるようになりましたので、日清食品的には一安心といったところでしょう。