組織は変化し成長する。『ティール組織』に登場したオズビジョンの当時と今
今年1月に日本語版が出版された『ティール組織』(フレデリック・ラルー著、英治出版)は、まだ少数ながらも世界のあちらこちらで出現しつつある革新的な組織のあり方を解説し、ビジネスパーソンの間で大きな話題を呼んでいる。
ポイントサイト「ハピタス」を運営する株式会社オズビジョンは、その本に登場する唯一の日本企業だ。しかし、書籍で紹介された制度は今では実施されていない。その理由や同社の変化と成長について、社長の鈴木良さんにインタビューした。
知らない間に、会社のことが本に載っていた
- 『ティール組織』第4章「全体性(ホールネス)を取り戻すための努力/一般的な慣行」の中に、御社が登場します。どのような経緯で本に取り上げられることになったのでしょう?
それが、分からないんですよ(笑)。アメリカでこの本が出たのが2014年だと思うんですけど、その時に何人かから「載ってるよ」と言われて。
- 事前に知らなかったんですか!?
取材があったわけではないですからね。
思い当たることは2つあって、ひとつは2011年にZapposなどのアメリカの企業の視察に行ったんです。その時にある経営コンサルタントの方と会食をして、オズビジョンは「オズの魔法使い」のコンセプトと自己実現というテーマを持っていますという話をしたら「面白い」と言ってくれました。その方から伝わったんだと思うんですが、その後、お話した内容がインドの経済誌のようなものに載ったんです。
- インドの、英語で書かれた雑誌ですか?
はい、なぜかインドの雑誌に(笑)。『ティール組織』の著者はそれを見た可能性があります。
もうひとつは、インターネットでたまたま私達のことを知ったのかもしれません。『ティール組織』の中では「自己実現」や「マズローの欲求段階」が取り上げられていますが、「自己実現」は英語では”self-actualization”です。うちの経営理念も”self-actualization”という言葉を使っているので、それで検索してヒットしたのか……。
ただ、『ティール組織』には当社の制度の内容がとても詳しく書かれていたので、雑誌の方で知られたんじゃないですかね。
機能しなくなった制度は廃止する
- 同書では、働く人が“仕事用の仮面”を着けることなく、自分のありのまま(全体性)を持ち込めるようにすることで、職場を情熱に溢れたものにし、人の可能性を引き出すことに成功している――という「進化型(ティール)組織」の特徴が描かれています。“全体性”を取り戻すのに「物語ること(ストーリーテリング)」を活用している例として、御社の2つの制度が紹介されていました。
でも、この2つの制度は今はなくなっているそうですね?
そうです。2つの制度のうち「Thanks Day」は、希望者に対して年に1日、誰かに感謝をするための特別な休暇と現金2万円を支給する代わりに、社内ブログで誰にどんな感謝をしたかを共有してもらう制度です。
これは単純に、利用者が減ったので止めました。最初は月に1人は利用者がいたのですが、それが2ヶ月に1人、3ヶ月に1人……、と毎年減っていったんです。
- 何年くらい続けたんですか?
3年と少しです。
- 制度があっても使われないという話もよく聞きますが、数十人規模の会社で毎月利用者がいたというのもすごいですね。
2万円もらえるし、会社が制度として推進している休みだから、普通の有給休暇より取りやすいですよね。
- 使う人が少なくなったのは、なぜでしょう?
はじめは物珍しさがあるし、例えば「奥さんへの感謝をこめて食事に連れて行ってあげたよ」みたいな報告を見ると「俺もそろそろやらなきゃ」と、触発されるんですよ。ただ、続けていくとやることも同じになってきて、マンネリ化してくるんですよね。
最初は誰かが投稿すると「誰々さん、そんな一面もあるんだ!」とか「その公園いいね。私も子どもを連れて行こう」とか、コメントがあったんですけど、だんだんそれも減ってきまして……。慣れてしまったということですね。
- 驚きが少なくなってきた、と。
そうなんです。もし続けていくなら、飽きないようにもっと盛り上げていかなければいけないでしょうね。
- そこまで手をかけて続ける必要がないと判断したんですか?
はい。別にやっちゃダメというわけじゃないんです。いい制度だし、会社は働くだけの場所じゃない、人間である限り労働のベースには感情というものがあって、それを大事にしたいよね、というメッセージを伝えるものにはなるんですよ。ただ、今となってはThanks Day以外にもそのメッセージを伝えるものはたくさんあるので、どうしても続けなければいけないものではなくなりました。
- 休暇と2万円がもらえるという権利がなくなることに、抵抗する社員はいませんでしたか?
「えー、寂しい」みたいな声はもちろんありましたよ。でも、初めから目的を徹底して伝えているんです。「これは福利厚生の位置付けだけれども、目的はこうだ」と。「形骸化したらやめるよ」と初めから言っていたので、それほど問題にはなりませんでしたね。
- そこは大事ですね。もうひとつの制度「Good or New」についてはどうですか?
これは、普段の仕事の関わりでは話をしない人同士が会話をする機会をつくるために、毎朝ランダムに5〜6人のグループを作ってGood(メンバーのいいところ)かNews(24時間以内にあったニュース)を順番に話していくものです。
こっちの方が長く続いたんですけど、1フロアだったオフィスを増床して複数フロアに分かれてから自然消滅しました。本当に必要な制度だったら、誰かから「やらないの?」「やろうよ!」という声が挙がるんでしょうけど、誰からも出なかったのでそのままなくしました。
- わざわざこれをしなくても、お互いよく知っている状態になれたということですか?
そうですね。それと、意図しない副作用も出てきたんです。
もともとの意図は普段絡まない人同士のコミュニケーションの場を用意することだったのですが、毎朝、自由参加とはいえみんなが参加していると義務感が出ちゃうんですよ。そうすると、話したい気分じゃないときも話さないといけないし、相手の良いところを無理やりひねり出さなければいけない、ということもあったりして。強制的にやってください、というのはちょっと気持ち悪いな、という面もあったんです。
- その違和感は、始めた頃からあったんですか?
そういう声も始めからありました。でも「まず、やってから判断しようよ」と運用していました。副作用もあるけれど、効果もあるんですよ。狙いどおり色々な社員同士が喋るようになりましたし、お互いのことが分かるようになったので。
- 面白いですね。本に成功事例として紹介されるような制度って、「良いものだからやるべき」と捉えられることもありますよね。でも、役割を終えたら止めるという選択もありなんですよね。
会社の目的に“自己実現”を掲げる理由
- 先ほど企業理念に“自己実現”を掲げているというお話がありましたが、それはなぜですか?
参考:オズビジョンの企業理念と、その説明(オズビジョンのWebサイトより)
人の幸せに貢献し、自己実現する集団で在る
童話「オズの魔法使い」の登場人物たちは、伝説のオズの魔法使いに願いを叶えてもらう旅を通じて自分たちの可能性を最大限発揮し、具現化していきました。
道中に巻き起こる数々の試練を仲間と乗り越えたものの、オズの魔法使いの正体は、ただのおじいさんでした。
登場人物たちは憤りましたが、この試練を乗り越える度にそれぞれの願いであった勇気や知恵、心などを既に手にしていたことに気付きます。
この物語は、まさに私たちの在り方と同じです。
幸せとは伝説の魔法使いのように、あいまいで不確実なものです。
しかし、すべての人がそれを求め、幸せになるために生きてもいます。
幸せという人にとって最も価値あることへの貢献を通じて、自分の可能性を最大現発揮し、具現化する集団で在ることが私たちオズビジョンです。
いろいろ考えはしたんですけど、仕事という活動の目的がそれしか思いつかなかったと言いますか……。
この会社を作ったときは、理念なんかなかったんですよ。人が増え、価値観も多様になって、意思決定の軸がないとまとまらない、という状態になったので、軸を作ろうと思って勉強し始めたんです。
- なるほど。
軸となるものは、コロコロ変わることのない普遍的なものでなければいけない。じゃあ、人は何のために働くのかということを考え始め、会社を作って3年目頃に、社員にメールを送って意見を集めました。
いろんな声があるわけです。「次の日曜日を楽しむために、自分をしごいている」とか「家族を幸せにするため」だとか「お給料をもらうため」だとか、バラバラでした。共通点は、結局みんな何か自分の成し遂げたいことを得るために仕事をやっているんだということなんですね。それがお金の人もいれば成長の人もいるわけです。
- そうでしょうね。
その時に「マズローの欲求段階」というのを見て「そうか、確かに欲求段階というものがあるな」と思いました。
オギャーと生まれたときにまず“生きる”という欲求の段階がある。お腹空いた、眠たい、とかですね。それから安全や人間関係への欲求があって、その次は認められたいという欲求、そして最終的には自分の可能性を実現したい、となる。そう考えると、腑に落ちたんです。
なんのために、1日最低8時間も働くのか? もし1億もらったらその活動をしなくなるかというと、そうじゃないなと。仕事というのは自分の可能性を最大限に具現化するためにあるんだな、そのための最高の仕組みだなと思って、“自己実現”を理念に置いたというわけです。
- 一緒にやっていくには、多様性を認めるということも大事ではないでしょうか。例えば、自己実現だけを重視すると、自己実現のために他者を犠牲にするということもあり得ますよね。
その観点で、理念の前半に「人の幸せに貢献」という言葉を入れているんです。
普通、会社のビジョンや理念というものがあり、それに個々の社員の目標のようなものを揃えていく、というようなことをよくやると思うんですけど、うちの考え方はそうではないんです。一番初めに個々のバラバラな目的、理念、人生でこうなりたい、というものがあって、会社のビジョンに向かうことで、それぞれが達成できるという発想です。だから、みんなの実現したいことはバラバラでもいいんです。ただし、この会社のビジョンがそれらを実現するための手段になり得ないんだったら、うちじゃないですよ、ということで。
採用面接でも、「ちなみにうちの会社はこういうのを目指してるんだけど、これってあなたのビジョンを実現するためのベストなソリューションですかね?」みたいなすり合わせをすごくやっています。
- 会社で働くことが手段になるんですね。
よく『ワンピース』の例とか『オズの魔法使い』の例で説明します。『ワンピース』だったら、海賊王になりたい人がいたり、料理人になりたい人がいたりして、それが「大秘宝(ワンピース)」というひとつのビジョンに向かっていく。『オズの魔法使い』は家に帰りたいドロシー、知恵が欲しいカカシ……、登場人物それぞれの目的や動機は違うけれども、幻のオズの魔法使いに会ってそれを叶えてもらうという手段、ビジョンは共通していて、だから力を合わせていく。その感覚に近いですね。
“個人の自己実現”と“事業による価値の提供”と理念の関係
- 個々人の夢や大事にするものが違っていても、同じビジョンに向かって力を合わせていけるということですね。『ワンピース』や『オズの魔法使い』の例えは分かりやすいです。
ただ、一時期悩んだことがあって。会社というのは事業をする仕組みとしてあるのに“自己実現”を目的にするのは、社外の人からすると「勝手にやれば」ということになりますよね。「で、お前たちは世の中にどういう価値を提供するんだ」と。この点にすごく悩んだこともあったんですけど、今は両方ありで、分ければいいと思っています。
オズビジョンはホールディングカンパニーとして存在し、その中にいろいろな事業会社を持つ。それぞれの事業会社の存在目的としては、事業で実現したいことを掲げます。ホールディングスであるオズビジョンは、新しい企業ガバナンスや新しい働き方、どうやったらいろんな人の可能性を引き出せるのかを科学的に研究しながらやっていくような形で、両者を棲み分ければいいという考え方です。
- なるほど。
自分自身のことを考えても、「何か世の中の役に立ちたい」という自己実現の欲求はあっても、具体的に「こういう社会課題を解決したい」というものがないときもありますよね。ある時、世界を変えられそうなすごいアイデアが生まれたら、そのときは事業を成功させることが目的になるわけです。そういうフェーズでは事業会社で活動すればいいし、他のことがやりたくなれば、また別の事業会社に行く――という形で、その時々のフェーズに合わせて組織の中を行き来できる仕組みが、人の可能性を最大限に具現化することにつながるんじゃないか、そんな風に考えています。
- そもそも、最初は理念がなかったところに、理念を作ることが突破口になるだろうと思われたのはなぜですか?
人がどんどん増えるたびに、この人はお金が欲しい人、この人は成長したい人……という感じで、どんどん望んでいるものが多様になっていくわけです。そのバラバラな人たちをひとつにまとめる軸が必要だったんですよね。
- 「社長の方針に従え」というやり方もありますが、そうではなく?
当時は、そうなっていたんですよ。でも、いつも自分が意思決定をするという状態に限界を感じたんです。事業の方針にしても人事制度にしても、毎回ゼロベースで考えていたら大変なので、自分にとっても会社にとっても軸となるものが必要でした。
- いつも社長が考える、という状況に無理が生じていたんですね。
会社の成り立ちも関係していますね。私は24歳のときにこの会社を作ったので、採用するのは自分よりスキルが上の人ばかりなんですよ。しかも給与が低い、事業もいつ潰れるかわからないという状況で、いかにやり甲斐を持って働いてもらうか。そのためには「自分たちの会社だ」と思ってもらわないといけないわけです。
- 社長の指示に応じて動く、というのではモチベーションの維持が難しかったと。
だから、オズビジョンという社名も社員が付けたんですよ。
- そうなんですか。
もともとイーカレンシーという名前でしたが、「社名を変えよう」と言って、社員から案を募集しました。私が「オズの魔法使いみたいな会社がいい」という話をしていたのもあって「オズ」というのが出てきて、誰かが「ビジョン」を付けたいと言い出したんです。私は「ビジョン」を付けるのは反対だったんですが、多数決で決まっちゃいました(笑)。でも、目的は社員に「自分で決めた」、「自分の会社だ」と思ってもらうことだったので、まあいいかなと思って。
……という感じで、トップダウンというのは初めから排除していたんです。
3分の1の社員が辞めた時代を乗り越えて
- 理念を中心にした経営に切り替えていく過程で、たくさんの社員が辞めたこともあったそうですね。
辞めた人と新しく入ってきた人がいて、3分の1が入れ替わりました。
- 辞める理由はなんだったのでしょう。理念が合わない、ということですか?
本質的に、理念が合わない人はあまりいないんですよ。
- あまり反対しようがない内容ですよね。
そうそう。ただ、会社が変化についていけない人もいて、ボタンの掛け違いが起きたり……。
一番大きかったのは、評価に対する不満かもしれませんね。理念を作って、クレド導入して、クレドを実践できているかどうかで評価することにしたんです。そうすると、今までは営業成績で評価されていた人が、全然評価が上がらなくなったりして。
- 納得いかない、と?
そうです。なんでクレドなんていう曖昧なもので評価をするのか、と。
- 確かに、難しいですね。今も理念やクレドに合致しているかどうかで評価されているんですか?
いえ、今はそもそも価値観が合う人しか採用していないので。当時は採用のときに価値観を見るということはしていなくて、「こういう価値観でいきます」と途中から決めたので、合わない人はもちろんいるわけですよね。
- なるほど。では、3分の1が入れ替わるというのは必要なことだったと思いますか?
会社にとって必ずしも必要だったとも思いませんが、人が辞めたとしても理念を徹底するという覚悟を決めてやり通したのは、必要な経験だったと思います。
経営者も人間ですから、良いと思って採用した人に「辞めます」と言われたら振られている気分になるわけですよ。3分の1もの人にそう言われると、人格否定されているくらいの感じになってきます。でも、そこで「ただでさえ人数が少ないのに、業績は大丈夫か?」みたいな感じでブレてしまうとよくない。そこで折れなかったという経験を積んだことで、その後も自分の本心から正しいと思うことを実行できるようになりました。
時間をかけなくても価値観の合う社員を見極められるようになった
- 今は価値観の合う人しかいないということですが、採用の段階でどのように価値観の一致を確かめるのでしょうか?
価値観を見るプロセスというのが確立されているわけではありません。自分の場合は行動を見ます。価値観を確かめようすると、多くの方は考え方を尋ねると思うのですが。
- 考え方を言葉で説明してもらう、ということですね。
昔は私達も、そういう感じだったんですよ。例えば、こちらから「こういう理念を大事にして自己実現をしたいんです」と説明すると、応募者も「僕も、自分の可能性を追求するためにやりたいです。すごいいい理念だと思います!」みたいな反応をしてくれて、「あ、共感してくれる。よし採用!」みたいな(笑)。
今は、思想とか共感ではなく、「で、どういう行動をしたんですか?」というところを見る。それが、唯一のコツです。
- そのために、長い時間をかけていますか?
以前は職場体験といって、1時間でも8時間でも一緒に働いてもらって判断する、ということもしていましたが、こちらの体力も結構いるので、今は面接だけですね。3次面接まで、それぞれ1時間程度です。
ただ、採用率は極めて低いです。応募者を100とすると、最終面接を通過するのは0.7%くらいですかね。意図的にそうしているわけではないですが。
- 面接だけでも見極められるようになったということですね。
もうひとつ、採用の後の受け入れのレベル感が今と昔では全然違うんです。なぜかというと、今はもう文化が整っているので、受け入れられる幅が広くなっていると思います。昔辞めた社員も、そのうちの半数くらいは今なら気持ちよく働けたんだろうな、と思います。
- その変化は過去の痛みも含む経験あってのことで、いきなりこのレベルには到達できなかった、という感じですか?
そうですね。学んだことはたくさんあるので、昔に戻ったらもっと工夫する余地はたくさんあるし、人の入れ替わりも3分の1じゃなくて5分の1くらいで収められたかもしれません(笑)。
“いいヤツの集団”を“チャレンジする集団”に変える、新たな挑戦
- 今の社員の皆さんに共通する特徴はありますか?
“いいヤツ”しかいないです。そこが共通点ですね。とにかく性格がいいんですよ。
- そうなると、会社の雰囲気が良くなりますね。一般的には、転職の理由は人間関係というのが非常に多いですが、それもないですか?
ないですね。
- 組織としては、ちょっとのんびりした雰囲気にもなりそうですね。
まさにおっしゃるとおりです。何事にも副作用があるので。
もともと、3分の1が辞めた時期は、すごく不信感が漂っていて空気が良くなかったんです。その反動で、性格重視、成果より人間性を見よう、という感じになって、ちょっと偏りが出たんですね。だから居心地はすごくいいし家族みたいなんだけれども、ぬるいところもあって。“自己実現”というテーマからすると、半分欠けているとも感じます。
- それを変えていこうとされているんですか?
はい。そのためにこの1〜2年間でまず大きく変えたのがビジョンです。以前は「5つのステークホルダーの欲求を満たす」といった内容でしたが、もっと具体的な目標を入れました。「2020年までに1千万人のサービスを作る。2025年までに世界に向けたプロダクトを生み出す」という、達成したかどうか明確にわかるものです。こうなると、いつまでにどのくらいのことをやらないといけないのかが見えてくるので、よりスピード感のある組織にシフトしていっています。
採用も挑戦マインドがどれだけあるのかを見ますし、社内表彰制度もこれまではチームワークを評価していたものを、挑戦したかどうかという視点を入れるようにしたり、全てがそちらに向かって変わっていっている状況です。
- 過去のように、その変化についていけなくて辞めていく人はいないですか?
それがですね、前と違って多少コツを覚えたのか、いい感じで動いています。
- ポイントは伝え方でしょうか?
ひとつは、いきなり評価制度にブチ込まないということですね(笑)。
まずは文化を作ることが先です。本当は話せば理解できることも、いきなり評価制度で強制的にやってしまうと、誰でも反抗しますよね。あとは、伝え方や伝える回数です。例えば、トップと中間管理職の間で溝ができて全体的にうまくいかなくなるということはよくあることなので、3ヶ月に1回合宿をやったり、チームビルディングをしたり、幹部陣たちとのコミュニケーションをすごく重視しています。その結果、社員のみんなも変化を受け入れてくれていると思います。
(インタビューはここまで)
成長するのは人間だけではない。組織も経験を経て強くなっていく
鈴木さんのお話を伺い、オズビジョンという組織が過去の痛みも糧に、どんどん強くなっていることを感じた。
お話の中で何度か「副作用」という言葉が出てきたが、組織を良くしたり、事業を成功させたりするのに万能薬はない。世の中には色々な仕組みや制度が紹介されているが、その方法が効くかどうか、副作用が強すぎないかどうかは、個々の組織の置かれた環境や体質によるのだ。その環境や体質も固定的なものではなく、時間とともに変化していく。自分たちの状況をよく観察し、常に処方箋を書き換えたりトレーニングのやり方を変えたり――。そうやって少しずつ鍛えられていく生命体のような組織のあり方を感じたインタビューだった。