北朝鮮国民も衝撃「飢えた若い女性」の危険行為
北朝鮮のコメ価格は、秋の収穫を迎えると下落傾向となるのが例年の流れだが、今年に関しては一時的に若干下がったものの、11月からは再び上昇した。毎年のように凶作続きの北朝鮮だが、今年はより一層ひどかったことが価格に現れているのだ。
2020年の北朝鮮を振り返る(上)
そんな中、飢えに苦しむ「絶糧世帯」(食べ物が底をついた世帯)が続出しているが、餓死する前に自ら命を絶つ人もいる。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
道内の豊西(プンソ)郡在住の30代後半の夫婦は、ポリオ(小児麻痺)による障害のある小学生の息子と暮らしていた。近隣住民によると、一家は絶糧世帯となって、夫は数カ月前からほとんど職場に出勤しなくなり、妻も栄養失調で顔がむくんで外出もできない状況となっていた。また、子どもも登校していなかったという。
息子の世話をするため、妻は思うように市場での商売ができず、一家は困窮していたものと思われる。
そして11月末。3人は変わり果てた姿で発見された。安全員(警察官)が米びつを開くと、穀物はほとんどなく、家の中には衣類もほとんど見当たらなかった。安全部は、夫婦が毒を入れた砂糖水を息子に飲ませた後に、後を追って亡くなったものと見ている。
ただ、村人たちの間では、家族が服毒自殺を図ったのではなく、ほぼ同時に餓死した可能性のほうが高いとの噂が立っている。
一方、4月にはこんなショッキングな事件も起きた。咸興(ハムン)市の沙浦(サポ)区域で、チェという若い女性が貨物トラックの前に自ら飛び込んだのだ。幸い、命に別状はなかったが、トラックにぶつかった衝撃で倒れて、脳震盪を起こし、足に傷を負った。
彼女は、補償金の名目で2万元(約38万8000円)をトラックのドライバーに要求。北朝鮮の庶民にとっては大金である。そしてなぜか、所轄の安全員(警察官)も彼女と一緒になり、過失のないドライバーを責め立てたという。
デイリーNKの現地情報筋によれば、2人は「当たり屋」だという。
情報筋は、「最近、このような当たり屋になる人が少なくない」とし、そのほとんどが厳しい食糧難の中で一家の生計を担っている女性で、家族を飢えさせないために手段を選ばず、自分の命をかけて食糧を手に入れているのだという。
(参考記事:美女2人は「ある物」を盗み公開処刑でズタズタにされた)
しかし、そうして食べ物を得られるのも、国内の市場に食糧が存在してこそだ。農業の構造的な欠陥に加え、コロナ鎖国による肥料不足・営農資材不足が来年も続くなら、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」が再現される可能性も小さくはないのだ。