2000安打超えの韓国球界のオッパ 「坂本(巨人)、柳田(ソフトバンク)ら同期と一緒にやりたかった」
日本のプロ野球(NPB)には2015年まで在籍したイ・デホ(当時ソフトバンク)、オ・スンファン(当時阪神)を最後にKBOリーグ出身の韓国人選手はいない。日本の球団が求める助っ人像にマッチする選手が、韓国にはいないのがその理由だ。
一方で「日本でプレーしたい」、「行きたかった」と思う韓国の選手は以前と変わらず少なくない。そのうちの一人がソン・アソプ(34、NC)だ。
ソン・アソプは今季、リーグタイ記録となる7年連続150安打を記録。通算安打数は歴代3位の2229本で現役ではトップ、通算打率3割2分1厘を誇る球界屈指の巧打者だ。
「幼い時から日本、アメリカの野球を見てきて、行ってみたい思いは常に持っていました。エージェントを通して日本の球団への交渉をトライしてもらったこともありますが、求めているのはイ・デホ、キム・テギュン先輩のような長打力のある選手でした。僕のようにホームランバッターじゃない強打者は日本にたくさんいますからね」
ソン・アソプは15年オフにポスティングシステムを利用して、メジャー行きを目指すも入札した球団はゼロ。そしてFA移籍での日本行きを夢に描くも、実現には至らなかった。叶わなかった日本でのプレー。しかし今でも「もし日本でやっていたらどうだったか?」という思いが脳裏をかすめる。
「これまで7度韓国代表チームでプレーしましたが、日本の同い年の選手との顔合わせは特別でした。坂本(勇人)、柳田(悠岐)、アメリカに行って戻ってきた秋山(翔吾)。そして田中(将大)、前田(健太)選手のこともいつも気にしています」
ソン・アソプは1988年3月18日生まれ。韓国では3月から新学期が始まることもあり、3月生まれでも日本の同年4月2日以降生まれと同じ学年となる。高卒のソン・アソプのプロ入りは2007年で坂本、田中、前田と同期だ。
「韓国ではキム・グァンヒョン(SSG)、ヤン・ヒョンジョン(KIA)と同い年ですが、彼らと対戦する時は他の選手とは違った集中力が出ます。そんな経験を日本でしたかったです」
ソン・アソプの口調はいつも雄弁で真剣。その真面目さが過ぎて、時にコミカルに見えるのもソン・アソプの魅力でもある。
彼が打席に入るとスタンドからは登場曲に合わせて一斉に「オッパ!」の声が飛ぶ。「オッパ」とは女性が実兄や親しい年上の男性、または彼氏を呼ぶときにかける言葉。ソン・アソプがそう呼ばれるエピソードが愉快だ。
ソン・アソプは中学生の時に現在のSNSにあたるプロフィールサイトを作っていて、それが後にファンによって発見され話題となった。
サイト上の自分のIDは「お兄さん素敵」という意味のプサンの方言「オッパ モッチナ」だった。中2のソン・アソプ少年は未来へ向けた言葉と共に自身の写真をサイトにアップ。ソファーに座ってカメラ目線でポーズを決めたその姿は、素敵なお兄さんの雰囲気を醸し出していた。
青春時代の恥ずかしい思い出を掘り起こされてしまったソン・アソプだったが、真面目な彼はそれを受け入れ、球団もそれに便乗。今年の夏にはその「オッパ モッチナ(OPPA MUZZINA)」という文言をデザインしたTシャツなどのグッズを販売し人気を集めた。
映像:NCダイノス グッズのプロモーション映像
彼はこれまでの現役生活を振り返りこう話した。「他の国のリーグを経験出来なかったことは今も残念です。その分、国内でいくつもの記録を打ち立てることで、気持ちを埋めようとしているところがあるかもしれません」
ソン・アソプは自宅の常に目に入る場所に記録達成時のボールやトロフィーを並べ、それを眺めては自らを奮い立たせているという。
◇ソン・アソプ 身長174cm体重84kg、右投左打の外野手。07年にロッテ入りし、22年に2度目のFA権行使でNCに移籍。12、13、17年にリーグ最多安打を記録した。通算記録は1834試合に出場、打率3割2分1厘、2229安打、169本塁打、921打点、212盗塁。
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