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1年でもっとも喘息が増えるのはなぜ秋なのか? 急激な気温低下で増加する「秋の喘息発作」に要注意

倉原優呼吸器内科医
(提供:イメージマート)

春や秋の季節の変わり目は、「喘息シーズン」と呼ばれています。特に気温が急激に低下する秋は、喘息による入院が1年でもっとも多いため注意が必要です。

喘息の悪化は秋に多い

喘息は、気管支がデリケートな炎症状態にあります。ちょっとした刺激によって気管支が狭くなり、ヒューヒュー、ぜえぜえといった発作が出ます。

さいたま市民医療センターの小児科において、喘息様症状の入院例を調査したところ、比較的秋に多いことが報告されています(図1)(1)。

図1. 喘息様症状での月別入院患者数(参考資料1より引用)
図1. 喘息様症状での月別入院患者数(参考資料1より引用)

また別の研究では、200人の喘息患者さんに、喘息コントロールが悪化しやすい時期についてアンケートをおこなったところ、「秋の冷え込み」を選択した人が最も多いことも分かっています(2)。

なぜ秋に悪化するのか?

秋だけでなく、春の花粉症の時期にも喘息は悪化することがあります。アレルギー性鼻炎を合併している人については確かにその通りですが、喘息発作で呼吸器内科や小児科を受診する人の全体をみると、やはり秋が一番多いです。

この理由は複合的なものです。主に、①気温の急激な低下②アレルゲンの飛散③ウイルス感染症の増加、の3つが挙げられます(図2)。

図2. 「秋の喘息」の要因(筆者作成、イラストはシルエットイラスト・イラストACより使用)
図2. 「秋の喘息」の要因(筆者作成、イラストはシルエットイラスト・イラストACより使用)

①気温の急激な低下

前日と比較して3度以上気温が低下した場合や、過去5時間以内に3度以上気温が低下した場合に、喘息発作が起きやすいというデータがあります(3)。湿度や気温が低下すると、生理的に気道が収縮しますので、喘息の人ではこの現象がなおさら起こりやすいのです。気温が下がれば下がるほど喘息のリスクが上がり(4)、高齢者では救急搬送が増えることも示されています(5)

②アレルゲンの飛散

アレルゲンのうち、特にハウスダストの影響が大きいとされています。ハウスダストの主原因であるダニは、アジアでは高温多湿の夏に増加します。その後、秋に移り変わり、ダニの糞や死骸が重要なアレルゲンとなるのです(6)。

③ウイルス感染症の増加

風邪の代表的なウイルスであるライノウイルスの流行は、秋にピークがやってきます。また、ダニアレルギーとライノウイルスの感染には、それぞれ相互に悪影響があることも分かっています(7)。もちろんライノウイルスだけでなく、新型コロナやインフルエンザも、喘息にとってリスクとなる感染症であることは言うまでもありません。

まとめ

気温が大きく変動する秋では、喘息の悪化に注意が必要です。ライノウイルスだけでなく、新型コロナによっても喘息は悪化することがあります。もともと喘息がある人では、ひどい咳になりやすいです。

ヒューヒュー、ぜえぜえといった喘息発作が出ていれば、早めに病院を受診するようにしてください。

アストラゼネカ社の「ぜんそく天気予報」(URL:https://www.naruhodo-zensoku.com/forecast/)などのツールを使うことで、喘息症状が出やすいかどうかある程度予測できるとされており、活用してみてください。

ちなみに、マスクを着用しているとマスク内の湿度が上がり、病原微生物やアレルゲンを吸いにくくなることから、喘息発作を起こしにくいという見解もあります。

(参考)

(1) 喘息様症状での入院者数とエンテロウイルスD68型流行との関連―さいたま市. (URL:https://www.niid.go.jp/niid/ja/niid/ja/diseases/a/ev-d68/2335-idsc/iasr-news/6134-pr4311.html

(2) 山口宗大, 他. アレルギー. 2013; 62(2): 171-178.

(3) 村山貢司. アレルギーの領域. 1998; 5: 574-580.

(4) Cong X, et al. Environ Sci Pollut Res Int. 2017;24(28):22535-22546.

(5) Grjibovski AM, et al. Int J Circumpolar Health. 2021;80(1):1978228.

(6) Sun Y, et al. Indoor Air. 2022; 32(8): e13084.

(7) Bossios A, et al. Clin Exp Allergy. 2008 Oct;38(10):1615-26.

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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