【泉南市】街で見かけた『おもしろチラシ』おとぼけジャズ奏者に「樽井再起動!」って何?主催者直撃で感動
最近、街の掲示板に“おもしろいチラシ”が掲示されているのをご存知ですか?
場所は“樽井”周辺です。
おとぼけ顔のジャズ奏者に「樽井再起動!」の文字。
実は、隠れている部分には「たるいなめんな!」とも書かれています。え?
おいおい、これはただ事じゃないぞ…と、地域クリエイターとしては、居ても立っても居られず、主催者を探して直撃しました。
そのチラシには、ほかにもこんなことが書かれています。
「樽井区民センター 12/4(月) 6時だよ! 全員集合!」(ドリフやん…)
「タルイカイギ」(何の会議?)
FREE ENTRY (自由に参加できるの?)
さて、その目的と内容とは?
主催者二人とカフェで待ち合わせ。真相を直撃
主催者の一人、泉南市観光案内所にお勤めの 井手尾(いでお) ちほみさんと連絡をとり合い、とあるカフェで待ち合わせをしました。もう一人の主催者の方は、Happy Go Lucky代表 中西 加奈(なかにし かな)さん。樽井駅前でハンドメイドと輸入雑貨のお店を営む傍ら、近畿管区全域の司法通訳人(第一号)として通訳もされている異色の経歴の持ち主(泉南市観光協会の方でもあります)。
あの “クジャク” のいる「PAVOハンドメイド雑貨店」の店主さんです。
おもろいけど衝撃的なチラシの内容から、どんな“いかつい”方が来るのかと思ったら、とても柔らかい雰囲気のお二人でほっと一安心。
早速、「タルイカイギ」って一体何なのか、開催の目的やその想いを尋ねてみました。
(中西さん)
南海「樽井」駅は、みなさんもご存知のように近隣の駅に比べてとても利用客の多い駅です。それなのに人の流れを見てみると「イオンモールりんくう泉南」や海へ向かう人ばかり。「樽井」に来る人はほとんどいないと言っても過言ではないほど、駅前通りはいつも閑散としています。JR「和泉砂川」駅付近は、新しいお店もできていつも賑わっていますよね。「樽井」も人の流れを作りたいんです。
(井手尾さん)
わたしは、「泉南市観光案内所」で案内人をしていますが、「ふじまつり」の時期なんて一日 100人ほどの人が観光案内所を訪れるのに、「梶本家の野田藤」や「長慶寺」「イオンモールりんくう泉南」までの道を尋ねられることはあっても「樽井」のスポットを尋ねられることはほとんどありません。「樽井」は、なんだかポツンとしていて寂しいなぁって。くやしい気持ちもあります。
(中西さん)
とにかく、「樽井」の街中に人を集めたいんです。シャッター商店街(駅前通り)をなんとかしたい。たとえば貸してくれる人を探して “ポップアップショップ” を開いたり、駅前の古民家(空き家)で “マーケット” を開催したり。今、「婦人会」と「老人会」が同じくらいの年齢層になってきちゃってて(笑)。
「婦人会」はもっと若い人に活躍してもらいたいですね。
「樽井」って、クリスマスムードもないでしょ? 子どもたちが楽しめるイベントも企画したいなぁ。わたしは、砂川で「子ども食堂」を運営しているのですが、「樽井」にも「子ども食堂」をつくって地域活性化を目指す構想もあります。農家の方たちと繋がってフードロスをなくしていきたいですね。
認知症の人やその家族、地域の人たちが集う「オレンジカフェ」もいいですね。相談員を配置して、認知症に関する相談や、認知症への理解を深める取り組みをしていきたい。主人が福祉関係の仕事をしているので何かお役に立てることもあるかもしれないと感じています。
お会いして、まだ数十分しか経っていないのに「樽井」へのあふれる想いが止まりません。
まるで、女子高生の集まりみたいにワチャワチャと盛り上がっていて、もしかすると周りの人からは「ちょっと騒がしい女子会」と思われていたかも 笑。
そういう想いもあって、「樽井に住む人」「樽井で事業を行う人」老若男女を問わずみんなでお話しませんか? というのが「タルイカイギ」のようです。
実は、この打ち合わせ(取材)をするにあたって、事前に準備していただいたものがあります。それは「『樽井』の懐かしい写真」と「お二人のおすすめスポット」に関する資料です。樽井駅の近くに昔「映画館」があったという話は、ご存知の方も多いと思いますが、その「映画館」の写真を探してください! とむちゃぶりをしたのです。
当時の「樽井」を知る人は、決まってこう話します。「昔は、樽井駅近くに『映画館』があってなぁ。そりゃ、もう賑わってたんよ…」と。“あの頃”を語るときに、必ず登場する「映画館」の存在。それを想うと、賑わっていた当時の「樽井」の情景がありありと目に浮かびます。昔は、今と違って「記念日」しか写真を撮らない時代でもあったため、“記念写真”はあるけれど、“日常の風景写真” はそうないとのこと。でも、探してくださいました。あっちこっちの方に声をかけて写真を集めてくださったのです。
その写真がこちらです。
これが、「樽井」駅の近くにあった「映画館」の写真です。
大人 180円、中学生 140円…。とても感動しました。胸が熱くなりました。
わたし自身、噂では聞いていたものの、「映画館」の写真を見るのは初めてです。
この時、上映していた映画は「十七才の狼」のようです!(どんな映画かな?)
わたしと同じように噂では聞いていたけれど「樽井」にあった「映画館」を初めて見た! という方も多いのではないでしょうか。写真の少年は、映画館を経営していた方の長男さん。今も「樽井」で元気に暮らしているとのこと。
ほかにも貴重な写真がいっぱい!
この「堤防」って、「サザンぴあ」からも見えるあの辺りじゃない?!
なんと「樽井小学校」の運動会の様子だそうですよ! 昭和30年前半頃だとか。我が子もお世話になった小学校なので感慨深いです。お父さんたち、がんばっていますね!
井手尾さんのおじいさまですって! 男前ですね。 ここは「樽井駅」近くにある「(現)三井住友銀行」ですよ! いや~ホント貴重な写真ばかりです。
そして、この場所の現在の様子がこちら。
すっかりご立派になられて…。お世話になっている方も多いのではないでしょうか。
ここがどこだかわかりますか?
なんと「樽井公民館」です! 建設して間もない頃の写真でしょうか。まだ周りには空き地がいっぱいありますね。こんな貴重な写真、なかなか見ることはできません。
「樽井公民館」も もっと賑わってほしいなぁ…と中西さん。
そして、現在の「樽井公民館」の様子がこちら。
おそらく建て替えたのでしょうね。階段の位置も建物のデザインも変わっています。
では、ここはどこだと思いますか?
駅前のインド・ネパールレストラン「Aama(アーマ)」さん が店を構えるあの場所です! 「森商店」というお店があったようですよ。服が売っていますね。
衣料品店かな?
こちらが現在の様子。
時代の流れと共に建物は様変わりしていますが、通りに面影が残っています。
おー! わー! と叫び声をあげながら、懐かしい「樽井」の写真を見て語り合いました。
賑わっていたあの頃の「樽井」を取り戻したい。
「樽井」が動いていることをみんなに伝えたい。
そんな話を「樽井」のみんなとしたい。
「タルイカイギ」は、未来の「樽井」のための会議です。
ここで、お二人にご準備いただいた資料をもとに「樽井のおすすめスポット」をご紹介します。
井手尾さん、中西さんプレゼンツ「樽井のおすすめスポット」
井手尾さんのおすすめスポットは…
「樽井七坂」
井手尾さんの文章、ちょっとストーリー仕立てでおもしろいですよ。
【樽井七坂のお話】
大阪南部の町は、海抜0mの大阪湾側から和泉山脈にかけて海抜が高くなる海と山を持つ地形です。樽井の町は、地形的に洪積段丘という丘の上に発達したもので、海から少し山側に行くと急に高くなっていて坂がいくつもある。
浜街道から山側に向けて幾筋もの坂道がある。
①地蔵坂
農家が飼育する牛の無事息災を祈願して祀られた民間信仰の牛神さんも祀られている。次の坂へ
②暗がり坂
浜街道を南へ次の坂を登り
③仁右衛門坂
受法寺山門を出て仁右衛門坂を見下ろすと…
昔は、大阪湾(茅渟の海)が一望できた。
根来街道道標より専徳寺へ続く
④専徳寺坂(根来街道坂)
山之井遺跡公園の山側には
⑤山之井坂
坂の真ん中ぐらいに山之井坂の碑が建っている。登りきって右折、少し歩くと
⑥道祖神坂
南泉寺の裏坂途中にある。旅の安全を願い道祖神(さかいのかみ)が村の入り口や坂道の上に建てられている。悪霊を防ぐ威力のある神とされている。
登り続けて右折すると南泉寺。南泉寺を南に行くと
⑦南泉寺坂
これで七つの坂だ。他の地域にはない場所だ。暗がり坂と仁右衛門坂は、ジェットコースターのような急こう配…。昼間に歩いていても、人通りは少なくゴーストタウンに迷い込んだような場所だ。
どうです? 読んでいると まるで自分も歩いているような気分になりませんか?
実は井手尾さん、「樽井愛」が強すぎてインスタグラムで「“樽井”専用アカウント」を作ってしまうほど(そんな人初めて出逢ったわ…)。
その中で「樽井七坂」も紹介されていますので「mooco‘s2 (tarui.style)」(公式インスタグラム)も要チェックですよ。
みなさんも実際に歩いてみてくださいね!(下記地図参照)
次は、中西さんのおすすめスポットです。
喫茶「若草」(樽井駅前にある喫茶店)
あの 喫茶「若草」の「え、そうだったの?!」という裏話や、貴重な情報てんこ盛りですよ~!
祖母がなんの知識もなく始めたお店でアメリカの文学作品『若草物語』に由来する店名。(母と娘たちの物語)
有名ホテルのシェフを引退された方が当時ご近所にいて、あれこれ指導監修してくれたおかげで本当に寂れてしまった今も、実はどのメニューも美味しいです。
特にトマトジュース。あとは、オーソドックスなミックスジュース、サンドイッチがおすすめです。
昔は大繁盛していたので、アルバイトを3人くらい雇っていました。
(その頃アルバイトに来ていたお姉さんたちは、それぞれ波乱万丈な人生を歩まれています)
今は、叔母が一人で営んでいます。テキパキとメニューを運ぶことはできないですが、今も記憶力が無駄に恐ろしい程良くて(特にスポーツ選手関連の経歴など)、なにを聞いても大概のことは教えてもらえます。
入店の仕方にはコツがあり、ヤマザキのパン屋と繋がっているのでパン屋から入れます。早朝は、普通にオモテから入れます。昔からの住民が集い、いつも幅広い話をされています。祖母が生きていた頃、90歳を過ぎてもふるえる腕でコーヒーを運びたがったので、志村けんのコントのように「樽井にこんな店あるの知ってる?」と他人がネタにしているのをよそで聞いたこともあります。(そこの孫やねん、とは到底言えなかった)
喫茶「若草」の店名の由来や、実は裏口があった! など、貴重なお話をありがとうございました。ふるえる手でコーヒーを運ぶ“志村けんのコント”ばりのおばあさまを見たかったなぁ 笑。
そして、最後にお二人が「樽井」を愛してやまない理由について、紙にまとめてくださいましたのでご紹介します。要約してお伝えしようとも思いましたが、お二人の文章があまりにも生き生きと素敵だったので、ありのままをお伝えしたいと思いました(わたしは、これを読んでポロポロ泣きました)。ぜひ、ご覧ください。
「樽井」とわたし
タイトルが “小学生の作文” …(そこはご愛嬌)
文字が小さくて読みにくいので、感想も添えて補足しています。
井手尾さんは、30年近く樽井区の事務員をされていたとのこと。新型コロナウィルスの流行がきっかけで「樽井」について考えるようになったと書かれています。樽井小学校の同級生のグループラインで、小さい頃みんなで一緒に遊んだ場所や、お兄ちゃんとカニ取りに行った場所、誰か知らない大人の人に守られながら育ったことを笑いながらおしゃべりしているうちに、樽井に住んでいるわたしが何とかしないと…という気持ちがあふれてきた、とも。昔は、和泉砂川駅周辺より、樽井駅周辺の方が栄えていたそうです。昭和30年代、樽井の海は遠浅の松林がずっと続く海岸で時代劇の撮影にも使われたことがあったのだとか。また浜街道沿いは、両側に 衣料品店、八百屋、自転車屋、下駄屋、畳屋、呉服屋、肉屋、魚屋、本屋、古道具屋、薬屋などが並ぶ賑やかな商店街だったそう。
中西さんの“おじいさま”から“おばあさま”への遺言がとても感動的でした。
『あなたは樽井に戻りなさい。敵に辱められし時は、どうか貴女の命を絶たれよ。貴女は何もおそれなくていい。何故なら私はいつも、何時迄も貴女の側にいるから。我は神なり』。
中西さんの先祖が住んでいた土地の目の前に、明治30年に樽井駅が出来たそうです。お母様が幼い頃は、樽井の家は海のすぐそばにあり、起き抜けにクラゲを切って砂浜の砂をまぶして『わらび餅』と言ってままごとをして遊んでいたのだとか。
樽井のお祭りは、昔は凄く優雅で神事というイメージが強かったそう。多くの老舗が継続できず、新しい助けを得ることができない、この現状を何とかしようと思いタルイカイギを行うことにした、と書かれています。
写真手前に写るのが中西さんのおばあさま。美しいですね。
お二人の想いが詰まった文章がとても素敵です。
お二人に出逢うまで、正直言ってどこかわたしも「樽井ってこんな感じ…」と思っていました。
閑散とした駅前通りが「樽井」の日常で、それがずっと続くものだと。
でも、想像してみてください。駅前通りが多くの人で賑わっている光景を。
お店の人同志が繋がって「商品のコラボ」や「スタンプラリー」ができたらたのしいな。クリスマスシーズンに燦然と輝く駅前通りを見てみたい。
あれもしたい、これもしたい…いろんな希望や想いがこみ上げてきます。
「人と繋がりたいんです。死ぬまでひとりって誰だって嫌でしょ? ゆくゆくは、樽井の人以外でも参加できるような会にしていきたい。まずは、第一弾。これからも続けていきますよ」と中西さん。
樽井に住む人、樽井で事業を行う人、老若男女問わず大歓迎。
「自分用のお茶」と「シェアできる菓子袋ひとつ」持参して「樽井」の未来についてワチャワチャ話しませんか?
いつか「樽井」の街が賑やかになることを願って。
【基本情報】
「タルイカイギ」
12月4日(月) 18時~20時(6時だよ! 全員集合!)
場所 樽井区民センター2階
泉南市樽井6丁目22-3(Googleマップ参照)
〈お問い合わせ先〉
タルイカイギ実行委員会
HGL代表 中西 加奈 様(090-8126-7174)
取材協力 Happy Go Luky代表 中西 加奈 様、泉南市観光協会 スタッフ 井手尾 ちほみ 様
*記事は取材当時のものです。