レアルが「奇跡の逆転劇」を信じる理由。ベンゼマ、C・ロナウド、ベイルの「BBC」時代からの変化。
13回の優勝というのが、すべてを物語っているのかもしれない。
今季のチャンピオンズリーグで、ベスト4に進出したのはマンチェスター・シティ、リヴァプール、ビジャレアル、レアル・マドリーだ。なかでも今大会屈指の好カードとなったのが、シティとマドリーの一戦だった。シティのホームで行われたファーストレグにおいては、シティが4−3で勝利している。
しかし、マドリーは試合を捨てていない。「敗戦は決して良いものではない。こういう結果になった。大事なのは、僕たちが諦めなかったということだ。いま、僕たちはベルナベウに向かう。サポーターの応援が、これまで以上に必要だ。勝利して、魔法の夜を演じたい」とはカリム・ベンゼマのコメントである。
マドリーは今季、14回目のチャンピオンズリーグ制覇を目指している。優勝回数(13回)、決勝進出回数(16回)、大会参加数(52回)を含め大会最多の数字を誇るクラブだ。
圧巻だったのは、ジダン・マドリーの3連覇である。2015−16シーズン、16−17シーズン、17−18シーズンとマドリーはジネディーヌ・ジダン当時監督の下で欧州の頂点に君臨し続けた。ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドを攻撃の中心に据え、ヨーロッパ中の脅威になっていた。
フロレンティーノ・ペレス会長がこの「BBC」と呼ばれる3トップの形成を考え始めたのは2009年である。会長選を制して再びトップの座に就いたペレス会長は、2009年夏に移籍金9400万ユーロ(約122億円)でマンチェスター・ユナイテッドからC・ロナウドを引き入れ、ベンゼマ(移籍金3500万ユーロ/約45億円)、カカー(移籍金6700万ユーロ/約87億円)、シャビ・アロンソ(移籍金3450万ユーロ/約44億円)らを獲得して新たな銀河系軍団をつくろうとした。
そして、2013年夏にトッテナムからベイルが加入する。C・ロナウドへの配慮から公表こそ控えられたものの、ベイルの獲得には移籍金1億ユーロが投じられたといわれている。
「BBC」時代のマドリーは、4度にわたりビッグイヤー獲得を成し遂げている。ペレス会長の野心は、実を結んだ。
■イメージと歴史
一方、“金満”のイメージがあるマドリーとペレス会長だが、実態はそうではない。
2012−13シーズン以降の5大リーグのクラブの補強費を見ると、マドリーは25位に位置している。シティ、チェルシー、パリ・サンジェルマンといったクラブの方が、お金を使っている。
例えば、シティだ。2008年に投資会社アブダビ・ユナイテッド・グループ(ADUG)に買収され、シェイク・マンスール・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーンがオーナーになった。実質上の“国家クラブ”となり、大型補強によるチームビルディングが可能になった。
とりわけ、グアルディオラ監督が就任した2016年以降、その傾向は強くなった。グアルディオラ監督が就任した2016年夏から、シティは補強におよそ10億4000万ユーロ(約1350億円)を投じている。ロドリ・エルナンデス(契約解除金7000万ユーロ/約91億円)、ルベン・ディアス(移籍金6800万ユーロ/約88億円)、リャド・マフレズ(移籍金6780万ユーロ/約87億円)、ジョアン・カンセロ(移籍金6500万ユーロ/約84億円)、アイメリック・ラポルト(契約解除金6500万ユーロ)と多くの選手がシティを新天地に選んだ。
ただ、資金では賄えないものがある。それが、歴史だ。
「この10年を除いて、我々はチャンピオンズリーグで存在感がなかった。準々決勝や準決勝にシティがいるというのは、直近10年くらいのことなんだ。すべては過程だ」
「我々がレアル・マドリーの歴史と争わなければいけないとしたら、ノーチャンスだろう。だがフットボールのゲームは11対11で行われる。そのゲームは監督同士で行うものではなく、選手たちがやるものだ」
これはグアルディオラ監督の弁である。
過去、マドリーが、チャンピオンズリーグ準決勝ファーストレグで敗れ、決勝に駒を進めた事実はない。だが “サンティアゴ・ベルナベウの魔法”を、マドリディスタは信じている。
今季、マドリーはパリ・サンジェルマンやチェルシーを相手に逆転劇を演じてきた。「ホームでマジックを起こしたい」とベンゼマが語り、「ベルナベウは準備ができていなければいけない。もう一度魔法の夜を体験するために我々は戦う」とカルロ・アンチェロッティ監督が述べている。待ち望まれているのは、シーズン最高の瞬間だ。