Yahoo!ニュース

学生起業からの『b-monster』という働き方【塚田眞琴×倉重公太朗】第3回

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『b-monsterster』は2016年に銀座スタジオをオープン以来、ハイペースで拡大を続けています。現在の会員数は1万人超。大音量の音楽に合わせてライブ感覚で汗を流せるため、「楽しく通っているうちにやせていた」という会員が多いそうです。「運動やダイエットは歯をくいしばって耐えるもの」というイメージを変えた『b-monsterster』の今後の展開についてうかがいました。

<ポイント>

・働いてどうなりたいのか、社会をどうしたいのかまで考える

・「怖い」という感情があるから進化できる

・好景気を知らない若い世代へのメッセージ

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

■b-monstersterはエクササイズではなくてカルチャー

倉重:何かの対談で、b-monstersterは「フィットネスではなくてカルチャーだ」とおっしゃっていました。その辺について少し解説をお願いいたします。

塚田:実際それを言ったのは、私ではなく、アメリカの不動産の方にNY進出について相談していた時に、その会社のCEOの方が仰られたことでした。

最初のミッションは「運動を感動に」というものでした。

「運動はやらされるもの」というイメージを持つ人は多いですよね。

倉重:そうですね。

「つまらない」「きつい」「つらい」という印象もあると思います。

塚田:やはり何事も楽しくないと続きません。

ダイエットにも挫折して、「自分はダメなやつだ」と思ってしまう人はたくさんいます。

でも、その人たちが悪いわけではなく、運動がつまらないから続かないだけです。

楽しいものを提供したら続けられて、心も体も変われると思いました。

「自分を責めないでいられるフィットネス」「みんなを前向きにできるもの」を目指したのです。

倉重:なるほど。本当に世界中を席巻する可能性がありますね。

創業のときからそうですけれども、おそらく忙し過ぎますよね。

塚田:忙しいです。

倉重:新卒で就職して、3年くらいたった方が同級生です。

近年、労働基準法が変わって残業規制が入り、とことん仕事をやりたくてもできない、あるいは、「働くことは良くないこと。有休を取るのが素晴らしいことだ」という価値観を持っている方も増えてきました。

塚田さんは働くことはどのようなものだと思いますか。

塚田:私はすごく恵まれていて、今一番仕事が楽しいと思っています。

「もともとあまりお金に興味がない」と言ってしまうと経営者として失格ですが、利益をたくさん出したいとは思っていませんでした。

カッコいいものをつくって、みんなが楽しんでくれたらいいという気持ちが最初からありました。

今は会社を大きくしていくことで、より多くの人を良くしていけるという感覚があるので。そのために利益を出して、会社を大きくして、輪をどんどん広げたいと思っています。

倉重:大きくするのは目的ではなくて、手段だと。

塚田:そうです。「働くその先」が見えるといいのかなと思います。

倉重:と言いますと?

塚田:働くという行為は、何かをするための手段です。

働いてどうなりたいのか、社会をどうしたいのかまで考えるといいと思います。

■「怖い」という感情を大事にする

倉重:まさにTo beです。本当に25歳とは思えません。

半端なくしっかりしています。

そのように思えるようになるにはどうしたらいいのでしょうか?

国民一人ひとりが塚田さんのようになれば、日本はかなり強くなると思います。

なかなかそのようなマインドを一般の人が持つのは難しいものです。

私も去年弁護士事務所から独立しましたが、最初はとても怖いと感じました。

弁護士人生を十何年も続けたのに恐怖を感じたので、一般の学生はなおさらそうだと思います。

塚田さんのようなマインドに持つためにはどうしたらいいのでしょうか。

塚田:私は怖いという感情はすごく大事だと思っています。

「怖い」と思うからこそ、失敗しないように準備ができます。

その感情を大事にして、怖くなくなるまで努力すればいいのです。

完璧はないので、ずっと怖い感情が残るはずです。

だからこそ、進化していけるのかもしれません。

満足しないということも大事かなと思います。

倉重:それもやはり行動してみないとわかりませんよね。

お話を聞いていて思うのは、やらされている感が一切ないということです。

自分のやりたいことをするコツは何ですか。

塚田:いろいろなことに挑戦してみるといいと思います。

倉重:私は大学でキャリアの講義をすることもあるのですが、「やりたいことが見つかりません」とか「好きなことって何だろう」という学生さんが多いです。

「親を安心させるために就活します」という話もよく聞きます。

そのような若い人はどうしたらいいと思いますか。

塚田:好きなことがない人はいないと思います。

漫画やゲームなど、直接仕事につながらなさそうなことにも、好きなことはあるはずです。

例えばゲームが好きであれば、ゲーム制作会社で働いたり、eスポーツ選手になったりという選択肢もありますし、そのような花形職でなくてもゲームに携われる仕事は山ほどあります。

そのようなところを突き詰めてみるといいかもしれません。

倉重:なるほど。自分は何が好きなのかと。

ちなみに塚田さんの場合は、学生時代は何が好きだったのですか。

塚田:お笑いが好きだったのでお笑いノートを作りました。

倉重:それはネタ帳ということですか。

塚田:いえ。中学生のときにテレビのお笑い番組を見て、それを全部書き起こしたり、勝手に批評したり、キャスティングを考えたりしていました。

倉重:取りあえずとことんやるのですね。

塚田:とことんやります。

野球が好きだったときは、2軍球場にも通ったり、宮崎のキャンプまで行ったりしました。

倉重:いいですね。私もライオンズファンなので、キャンプを見に行ったりしました。

人それぞれ、好きなものはたくさんあるはずです。

「好き」を一つひとつ分解することは、自分に向いているものを見つけるヒントになると思います。

バイトもたくさんしましたか?

塚田:はい。カフェ店員から、スーパーのレジ打ち、清掃、野球のスコアボード操作員などをしました。

倉重:いわゆるお嬢さま育ちなのに、清掃の仕事などもされたのですね。

塚田:子どものころから、周囲の人に「お金持ちだよね」と言われても、「いや、私のお金じゃないから」という感覚がありました。

倉重:最初からその感覚があったのですか。

塚田:末っ子ということもあって、子どものころから人の気持ちに敏感なところがあって。

倉重:ご兄弟は何人いらっしゃるのですか。

塚田:姉だけです。いまは同じ会社で社長をしています。

家族で出かけると、お店の人はみんな親の顔しか見ていません。

それをすごく感じていました。

倉重:結局はお財布ですから。

塚田:そうです。

だから、「自分は何も持っていない」とそのころから思っていました。

倉重:敏感ですね。

塚田:お小遣いも親からもらったものなので、自分で稼いだお金で好きなことをしたいという気持ちが強かったです。

■どうしたらおそれずに起業できるのか

倉重:今後の夢というのは、先ほど今後ニューヨークに展開という話もありましたけれども、それは2~3年後ですよね。

もう少し長期でいうと、何かやりたいことはありますか。

塚田:長期でいうと、b-monstersterをもっと広げていきたいです。

今だと店舗がある周りの方々にしか届けられていないので、国内や、世界に広げるために、配信事業にも力を入れていきたいです。

倉重:全国的にテレワークが推奨されているので、「通勤が減ったから太った」という人が絶対に増えるはずです。

そこにオンラインフィットネスがはまると、まさに時期を得た感じになると思います。

オンライン用のプログラムは店舗とは違うのですよね?

塚田:そうですね。

倉重:塚田さんのように起業するマインドを持つ人を増やしていきたいと思っています。

どうしたら、気軽にではないですけれども、おそれずに挑戦できますか。

塚田:最近国のスタートアップの支援がすごく増えてきています。

大企業でもスタートアップとの提携に力を入れているところはあるので、挑戦しやすい環境が整ってきているなと感じます。

利用できるものは全部利用すると良いのではないでしょうか。

b-monstersterのような店舗事業はすごくお金がかかってしまうので、リスクも大きいです。

デジタルをうまく使って初期費用を安く抑えられるビジネスもあるので、まずは小さくやってみるといいのではないでしょうか。

■好景気を知らない若い世代へのメッセージ

倉重:20代の経営者ということで、改めて同世代の働く人、あるいは起業を考えている人、大学生にメッセージをいただければと思います。

塚田:私たちの世代は日本経済が低迷している中で育ってきました。

将来に対してすごく不安を感じながら生きてきたのです。

倉重:好景気を知らない世代ですよね。

塚田:はい。小学生のときは「公務員になるのが一番の成功例」とみんなが思っていた世代です。

でも、市場は日本だけではなく、グローバルになってきています。

チャンスも広がっているので、広い視野でいろいろなことにチャレンジしてもらえたらいいなと思います。

倉重:素晴らしいです。海外で留学などでもご経験あるのですか。

塚田:はい。1年だけなのですけれども、イギリスに行かせてもらっていました。

倉重:それは何歳ぐらいのときですか。

塚田:高校生のときです。

それもすごく突発的でした。

学校に行っている途中で、ふと将来が見えてしまって。

このまま毎日学校に行って、普通に大学生になって、就職することを考えたら嫌になってしまったのです。

「とにかく今、絶対に学校に行ってはいけない。学校に行ったら将来が決まってしまう」と思いました。

でも、ただサボるのも違うと思ったので、とにかく環境を変えたいと思い、その足で留学斡旋会社に行くことにしたのです。

倉重:すごいですね。

塚田:留学していた友達に連絡を取って、留学斡旋会社を紹介してもらいました。

その足で会社へ行って、「まだ親にも相談してないんですけど、話を聞かせてください」と頼みこんだのです。

倉重:いきなり行ってしまったのですか。

塚田:はい。話を全部聞いてますます「行きたい」と思ったので、帰って家族に相談して、親は元々世界を見て欲しいと言っていたので、凄く喜んでくれて、2カ月後にはイギリスの学校に行っていました。

倉重:え? 早い。まず行動なのですね。

塚田:とにかく行動です。

倉重:それを本当にやってしまうのですね。

高校もいったんストップし、大学もスパッとやめてしまいました。

昔から走りながら考えるタイプなのですね。

塚田:すごくいい経験でした。やはり海外は全然違います。

倉重:何が違いましたか。

塚田:日本では授業を静かに聞くのが一番いいことですよね。

でも、海外では「一言も発していないのは、いないのと同じのこと。発言しないなら出席にしない」と言われました。

日本だと「発言してください」と言われてから手をあげますよね。

勝手に話をさえぎって質問すると邪魔になります。

でも、海外では主体的に質問をしたり、問題解決したりすることが求められていました。

最初は大変でしたが、とても楽しかったです。

倉重:英語は結構できたのですか。

塚田:英語は全然できませんでした。

本当に基本的な「My name is~.」のレベルからスタートです。

でも、だんだん慣れてくるので、まず行ってみて、生活しながらで覚えるという感じでした。

倉重:「英語が不安なので留学は無理です」とか「海外転勤もちょっと」という方が多いではないですか。関係ないと。

塚田:「Yes」と「No」さえ言えれば、何とかなると思います。

倉重:5つの単語があれば取りあえずいけます。

「Yes」「No」「Thank You」「Hello」と……。

塚田:あとは「Sorry」くらいで、コミュニケーションできると思います。

倉重:「とりあえず何でもやってみる」というのがすべてに共通するんですね。

国民を総塚田化計画ができれば、元気な日本になりそうです。

若い人も含めて、このようなメッセージが伝わればと思います。

本当にどうもありがとうございました。

塚田:ありがとうございました。

(つづく)

【対談協力】

塚田眞琴(つかだ まこと)

1994年生まれ。2016年大学2年で姉と共に起業、同時に大学を中退。

2016年3月にb-monster株式会社を設立。同年6月に1号店となるGinza studioをオープン。

2020年より代表取締役に就任。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

倉重公太朗の最近の記事