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藤井聡太七段、最年少複数冠チャレンジに期待――永瀬拓矢二冠との王位戦挑戦者決定戦展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
棋聖戦に続き王位戦でも挑戦の期待がかかる藤井聡太七段(筆者撮影)

 木村一基王位(46)への挑戦権を争う第61期王位戦(新聞三社連合主催)挑戦者決定戦、永瀬拓矢二冠(27)―藤井聡太七段(17)戦は6月23日東京都渋谷区「将棋会館」で行われる。

 すでにヒューリック杯棋聖戦(産経新聞社主催)五番勝負で渡辺明棋聖(36)に挑戦中の藤井七段が、王位戦でも挑戦を決めれば史上最年少での複数冠挑戦となる。一方の永瀬二冠(叡王・王座)にとっても三冠を目指す上で大きな一番だ。

 最新データを基に勝敗と展開を予想してみた。

コンディションは若い藤井七段が僅差で有利

<永瀬二冠の最近10局>

3月17日 棋聖戦決勝トーナメント

対豊島将之竜王名人 ○

3月23日 王位戦リーグ紅組

対佐々木大地五段 ○

(持将棋指し直し)

3月26日 棋聖戦決勝トーナメント

対高見泰地七段 ○

4月7日 王位戦リーグ紅組

対佐藤秀司七段 ○

6月2日 棋聖戦決勝トーナメント準決勝

対山崎隆之八段 ○

6月4日 棋聖戦決勝トーナメント挑戦者決定戦

対藤井聡太七段 ●

6月11日 順位戦B級1組

対屋敷伸之九段 ○

6月13日 王位戦リーグ紅組

対本田奎五段 ○

6月18日 竜王戦1組出場者決定戦

対山崎八段 ○

6月21日 叡王戦七番勝負第1局

対豊島竜王名人 ●(千日手指し直し)

<藤井七段の最近10局>

3月24日 王位戦リーグ白組

対稲葉陽八段 ○

3月31日 棋聖戦決勝トーナメント

対菅井竜也八段 ○(千日手指し直し)

4月3日 竜王戦ランキング戦3組

対千田翔太七段 ○

4月10日 王位戦リーグ白組

対菅井八段 ○

6月2日 棋聖戦決勝トーナメント準決勝

対佐藤天彦九段 ○

6月4日 棋聖戦決勝トーナメント挑戦者決定戦

対永瀬拓矢二冠 ○

6月8日 棋聖戦五番勝負第1局

対渡辺明棋聖 ○

6月10日 王座戦2次予選

対大橋貴洸六段 ●

6月13日 王位戦リーグ白組

対阿部健治郎七段 ○

6月20日 竜王戦ランキング戦3組決勝

対杉本昌隆八段 ○

 両者とも4月の新年度以降対局の間隔が空いたが、6月に入ってから猛烈なペースで対局がつき、しかも勝ちまくっている。

 最近10局の成績では永瀬二冠8勝2敗、藤井七段9勝1敗。

 永瀬二冠は叡王戦七番勝負の防衛戦、藤井七段は棋聖戦五番勝負に挑戦中と進行中のタイトル戦の数も同じでコンディションはほぼ互角だが、過密スケジュールにおける体力を加味すれば10歳若い藤井七段がわずかに有利と見る。

相居飛車で先後が勝敗に少なからぬ影響

 両者の直接対決は今月4日のヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦1局のみ。このときは藤井七段が勝ってタイトル挑戦最年少記録を更新した。

 内容は振り駒で先手を得た永瀬二冠が相掛かりから主導権を握り大熱戦となったが、藤井七段が中終盤見事な指しまわしを見せ逆転勝ちを収めている。

 今回の大一番も相居飛車、永瀬二冠が先手なら前局同様相掛かりが本命。藤井七段が先手なら矢倉か角換わりと予想する。振り駒で決まる先後が勝敗にも大きな影響を及ぼすだろう。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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