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横浜ベイシェラトンの老舗ペストリーがリニューアル キツネ印の店名『ドーレ』に込められた意味とは?

コティマムフリー記者(元テレビ局芸能記者)
横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズの『ドーレ』/筆者撮影

 きょう9月24日、神奈川・横浜市の横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ(以下、横浜ベイシェラトン)内のペストリーショップ『ドーレ』がリニューアルオープンしました。実は9月24日は、横浜ベイシェラトンの開業日。1998年の9月24日にオープンし、26周年を迎えるこの日に『ドーレ』がリニューアルされました。

 横浜駅西口の目の前にそびえ立ち、地下街からもアクセスできる横浜ベイシェラトン。『ドーレ』はホテル開業の98年以来から共にあるペストリーショップで、同ホテルで唯一、地下にある店舗です。

9月24日にリニューアルオープン/筆者撮影
9月24日にリニューアルオープン/筆者撮影

  今回は元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、横浜ベイシェラトンで開催された『ドーレ』リニューアル発表会に出席。『ドーレ』という店名に込められた思いや、リニューアルポイント、新商品などを伺いました(構成・文=コティマム)

語源はフランス語の「DORER」

『ドーレ』は、ホテルメイドのパンやスイーツを販売する店舗。ホテルの地下を通ってきた人や、駅から地下を通る人など、幅広い人が利用しやすい立地で、開業から特に地元の人々に親しまれてきました。店舗にはキツネのモチーフの看板が掲げられています。

モチーフになっているキツネのロゴ/筆者撮影
モチーフになっているキツネのロゴ/筆者撮影

 この『ドーレ』という言葉、表記は「DORER」。フランス語で「金色にする」「焼き色をつける」という意味があります。

dorer /dɔre/
[他動]
➀…に金箔(きんぱく)を張る,金泥を塗る,金めっきする.
dorer un cadre|額縁に金粉を塗る.
② ⸨文章⸩ 〔太陽,光などが〕…を金色にする;日焼けさせる.
Le soleil lui a doré la peau.|日に焼けて彼(女)の肌は小麦色になった.
③〖料理〗 (焼き色をつけるために)〔材料〕に卵黄を塗る.
dorer la pilule à qn
⸨話⸩ …を甘言で丸め込む.

[自動] 金色になる;(料理で)焼き色がつく.
se dorer
[代動] ⸨文章⸩ 金色になる;こんがり焼ける;日焼けする.

出典:プログレッシブ 仏和辞典 第2版

 横浜ベイシェラトン広報担当の解説によると、「DORER」の「黄金色、パンの色、こんがり焼き上げる色」という意味と「キツネ色」を重ねて、『DORER』と名づけられたといいます。この、パンの焼き目とこんがり感を表すため、キツネをモチーフにしたゴールドの店舗ロゴが考えられました。

 今回のリニューアルで、店内は白と木目調を基調としたフレンチモダンオーガニック風に一新しましたが、キツネロゴの看板は開業時からのものをそのまま使っています。

開業から変わらない看板/筆者撮影
開業から変わらない看板/筆者撮影

目指す焼き色はゴールドブラウン

 ベーカーシェフの森広竜司氏は、「しっかり焼くこと」を先輩から教わったといいます。「ゴールドブラウンにしろと言われて育ちました。焼き込まないと小麦の風味は出てこない。(その教えを守って)、『焼き過ぎでは?』と指摘されたこともあります」と、“DORER”を実現するためのモットーを告白。「働き方の変化と共に、”時代に合った焼き方”も必要ですが、そこは信念。『黄金のこんがり』を目指します」と語りました。

ベーカーシェフの森広竜司氏/筆者撮影
ベーカーシェフの森広竜司氏/筆者撮影

 今回のリニューアルオープンでは、森広シェフによる新商品も展開。クロワッサン生地を使用したパリパリ食感が特徴の『パンスイス』、ルヴァン(発酵種)を使用して焼き上げた高加水パン『パンド ロ デヴ』、その他、デニッシュ生地に生クリームと利平栗のマロンペーストを詰め込み、熊本県産の和栗をチッピングした秋らしい『和栗のデニッシュ』や、南フランスの風景を思い起こさせる『クグロフ サレ プロヴァンサル』が登場します。

リニューアルと共に展開されるパンの新商品/筆者撮影
リニューアルと共に展開されるパンの新商品/筆者撮影

『パンスイス』は濃厚なピスタチオクリームと甘酸っぱいグリオットチェリーが入った『ピスタチオクリームとチェリーのパンスイス』、「伝説のカカオ」と呼ばれ世界的に希少なベネズエラ産・チュアオを使用した『チュアオチョコレートとカスタードのパンスイス』の2種類を展開。また『パン ド ロデヴ』はルヴァンだけのシンプルなものと、イラン産の白イチジクとアーモンドを贅沢に練り込んだ『パンド ロ デヴ フィグ』の2種類。どれも森広シェフがこだわった逸品です。

『パンスイス』と『パン ド ロデヴ』/筆者撮影
『パンスイス』と『パン ド ロデヴ』/筆者撮影

 森広シェフは、「ホテルには長期滞在の方もいらっしゃるので、『毎日食べても飽きの来ないもの』を意識しています。一時期、高級食パンや甘い味のものが流行りましたが、『DORER』では同じ甘い味でも、小麦やバターで甘さを感じられるように、求める風味や食感を実現するために、配合や材料を考えています」と説明。重要なのは「生地をしっかり発酵させること」だといいます。

森広竜司シェフ(右)/筆者撮影
森広竜司シェフ(右)/筆者撮影

「2時間発酵してイーストを増やすことで短縮すればパンは完成しますが、熟成が追いつきません。そういった生地では(しっかり発酵させたパンとは)味も歴然で、老化も早い」とパンの特性を語り、「パンは生鮮食品なので、焼き上がりから6時間が食べ頃です。それ以降か老化が始まるので、できるだけその日のうちに食べてほしいです」と呼びかけました。

『ドーレ』店内のパン/筆者撮影
『ドーレ』店内のパン/筆者撮影

 店名の『DORER』通り、「しっかり焼くこと」や「黄金色」「焼き色」という思いを体現している森広シェフ。

店名を表す焼き色/筆者撮影
店名を表す焼き色/筆者撮影

 その味は、「決まった曜日に来店するお客さま」もいるほど、地域の味として認められています。26年の歴史の中で、「いつもご夫婦で来店され、シャンピニオン(きのこの形のフランスパン)を買われるお客さまがいました。『ヨーロッパに転勤になったから、しばらく来れない』とおっしゃっていましたが、一時帰国された時に来店され、お土産までいただきました。その時、『パン屋になってよかった』と思いました」と、思い出も語ってくれました。

ケーキも新商品をラインナップ/筆者撮影
ケーキも新商品をラインナップ/筆者撮影

希少なベネズエラ産カカオ・チュアオのチョコレート/筆者撮影
希少なベネズエラ産カカオ・チュアオのチョコレート/筆者撮影

 リニューアルオープンした『ドーレ』では、パンの他に、ケーキの新商品も発売。希少カカオ・チュアオを使用したチョコレートケーキ『チュアオ』や、横浜市の花・バラをテーマにした『フリュイ・ローズ』、マロンを贅沢に練り込んだ『マロンドール』など、見た目にもうっとりなケーキ5種類を楽しむことができます。

美しいケーキたち/筆者撮影
美しいケーキたち/筆者撮影

 横浜駅周辺に出かけた際は、キツネの看板の『ドーレ』にぜひ立ち寄ってみてくださいね。

 言葉に関する記事については「【防災週間】レトルト食品の『レトルト』ってどういう意味? 初めて“月”に行った食材は?」もご覧ください。「レトルト」の語源についてレトルト食品会社さんにインタビューしています。※スマホからご覧の方は、プロフィールからフォローしていただくと最新記事の見逃しがなくおすすめです。リアクションボタンもプッシュしていただけると、励みになります!今後も記者目線で、「ちょ~っとだけタメになる(?)」言葉解説をつづっていきます。

※今回の記事は、担当者に掲載の許可をいただいた上で公開しています。取材時に新商品の試食をしています。本記事制作にあたって はガイドラインに基づき公平中立に制作しています。

フリー記者(元テレビ局芸能記者)

元テレビ局芸能記者で、現・フリーランス記者。現在は歌舞伎や舞台、企業・経営者を取材中。記者目線ならではの“言葉のお話”や、個人的に取材したおもしろ情報を発信していきます♪執筆記事1万本以上。取材は5000回以上。現在は『ENCOUNT』、小学館『DIME WELLBEING』、舞台評、出版社書籍要約、企業HP制作など多岐に渡り執筆中。過去媒体にテレ朝ニュース、キャリコネニュース、音楽雑誌『bounce』etc.

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