回数だけではわからない 小学生の24.6%が便秘の可能性
小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインを調べてみると「便が滞った,または便がでにくい状態」と定義されています。また、この状態のことを分かりやすく以下のように解説してあります。
便秘の人はどのくらいいるのでしょうか?
厚生労働省の平成28 年(2016年)国民生活基礎調査によると、便秘の有訴者の割合は9 歳以下で男女とも1%未満、10代では男0.5%、女1.5%です。日本トイレ研究所は、子どものトイレ環境の改善を活動の柱の1つとしており、日頃、小学校や保育園の先生の意見を聞く機会が多いのですが、それらを踏まえるともっとたくさんいるように感じています。
5人に1人が便秘状態
平成28 年(2016年)に日本トイレ研究所は、全国の小学生の保護者4,833人を対象にしたインターネットによるアンケート調査を実施しました。ROMEⅢ(2006 年に発表された慢性機能性便秘症の国際的診断基準)の定義に照らし合わせ、本調査では下記条件のうち 2 つ以上に合致する人を「便秘状態にある」とすることにしました。
・排便頻度が 3 日に 1 回以下
・便失禁がある
・便を我慢することがある
・排便時に痛みがある
・便が硬い
・トイレが詰まるくらい大きな便が出る
その結果、小学生の子どものうち 20.2%が便秘状態の可能性があることがわかりました。
小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインには、「5 歳以上の小児期に来院した便秘患児の25%程度が成人の便秘へ移行する」と記載されています。小児のうちに健康的な排便習慣を身につけることが大切なのはもちろんですが、便秘症状がある場合は、早急な対応が求められます。5人に1人に便秘状態の可能性があることは、深刻な状況といえるのではないでしょうか。
うんちチェックシートによる記録調査
前述のインターネットによるアンケート調査をさらに一歩進め、今回は児童に排便記録をつけてもらう取り組みを行いました。
具体的には、2020年11月10日~19日の10日間を「うんちweek」に設定し、小学生のうちに適切な排便知識と排便習慣を身につけることと、排便の現状を把握することを目的として、全国の小学校に「うんちチェックシート」を用いた排便記録に取り組む呼びかけを行いました。
5,678人の排便回数と便形状
10日間のうち、毎日排便があった児童は1,927 人( 33.9 %)、「 0~3 日」が 325 人( 5.7 %)、「 4~5日」が 821 人( 14.5 %)、「 6~10 日」が 4,532 人( 79.8 %)でした。前述のROMEⅢでは「1週間に2回以下のトイレでの排便」という目安があるため、今回の10日間に置き換えると「0~3日」の5.7%が該当すると考えられます。
今回の排便記録に関しては、排便の有無だけでなく便形状についての記録も行いました。便形状については、小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインの「ブリストル便形状スケール」(便の硬さによる分類指標)をもとに下図のイラストを作成し、自身の排便の形状にもっとも近いものを選んでもらうようにしました。
(「うんちチェックシート」は、こちらのサイトからダウンロードできます)
慢性機能性便秘症診断基準(RomeⅢ、4 歳以上の小児)では、「痛みを伴う、あるいは硬い便通の既往」が少なくとも2か月にわたり週に1回以上と記載されているため、これを参考に、10 日間のうち硬い便(ブリストル便形状スケール「 1 ころころ」または「 2 ごつごつ」)が 2 回以上出ている児童を抽出しました。その結果、硬い便(「1 ころころ 」または「 2 ごつごつ 」)が10 日間のうちで2回以上の児童は、1,435人( 24.6%)でした。
この結果に対して、小児の排便治療を専門とする中野美和子医師には以下のようなコメントをいただきました。(コメント全文はこちらから調査結果をご覧ください)
私たちは、便秘の目安として、排便の回数に注目しがちですが、毎日便が出ていても、硬い便やころころした便が多かったり、腹痛があったりするなど、「すっきり感」がなければ便秘の可能性があります。今回の調査では、回数だけでなく便の形状を把握することの大切さも再認識することができました。
排便で自分の健康状態を把握して体調改善に活かすことや健康的な排便習慣を身につけることは、一生の財産になります。一方で、便秘症状がある場合は、成人期に便秘を持ち越さないためにも、早めに対応することが必要です。そのためには便秘かどうかに保護者が気づくことが大切です。
排便記録に取り組むことは、自身の健康に関心を持ち、自分で体調を整えることを学ぶ大切な機会になると考えています。家庭や園、小学校などでぜひ実践してみてください。