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「バレンタインデーにチョコレートをもらえる確率」はどれくらいなんだろう?

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。

マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今回の研究レポートは……。

2月14日はバレンタインデー。

ワタクシは高校2年生まで、ただの1個もチョコレートをもらえなかった。

「今年こそは1個くらいもらえるのでは……」と淡い期待に悶えつつ、1日が終わる。

悲しかったですなあ、あれは。

そのガッカリ感が胸に刻まれているので、バレンタインデーについては現在も「うむむむ……」とフクザツな想いを抱いております。

そういう気持ちの人、世のなかにはいっぱいいるのではなかろうか。

そこで、若き日の自分と世のオトコたちのために考えたい。

バレンタインデーでチョコレートがもらえる確率とは、いったいどれほどなのか?

◆3人に1人はもらえない!

バレンタインデーのチョコレートは、愛する人に贈ることもあれば、義理で渡すこともある。

でも、愛にしても義理にしても科学では計れないから、ここはシンプルに確率の計算をします。

たとえば、100人の女性が100人の男性に、1個ずつのチョコレートを無作為に配布する、と仮定しよう。

この場合、1人の男性が1個ももらえない確率はどのくらいだろうか?

1人の女性からもらえる確率は100分の1=1%である。

逆に、もらえない確率は99%。

すると、100人全員から1個ももらえないのは、確率99%の現象が100回連続して起こった場合だから、その確率は0.99の100乗になる。

答えは、0.366=36.6%!

恐ろしいことである。

女性たちが無作為にチョコレートを配ると、100人のうち37人もの男性が、暗い2月14日を過ごすことになるということだ。

イラスト/近藤ゆたか
イラスト/近藤ゆたか

男女の人数が増えれば、もらえる確率が増えるのではないか。

そこで男女千人ずつとして計算し直すと、36.77%。

ぎょぎょっ、わずかではあるけれど、もらえない確率のほうが増えてしまった。

この確率は、人数が増えるほどに少しずつ増えて、36.78794412……%というパーセンテージに近づいていく。

逆に、男女が10人ずつだとしたら、わずかに減って34.87%になる。

要するに、男女の人数が変わっても、もらえない人の人数は、ほとんど変動しないのだ。

バレンタインデーというのは、集団の大小に関わらず、3分の1以上のオトコが悲しい運命をたどる仕組みになっているのである。

なんと残酷な……。

え? 無作為に配るという設定が非現実的?

しかし、相手を選んで配ることをOKにしたら、チョコレートはモテモテ男に独占されてしまい、獲得数0の層が拡大するのではないでしょーか。

37%とは、モテない男たちに有利な仮定をした場合の確率なのだっ(と筆者は思う)。

◆6個以上配ってください

とはいえ、1人の女性がチョコレートを1個しか用意しないという仮定は、あまりにも不自然かもしれない。

百貨店などのチョコ売り場を見ていると、女性たちは1人で何個も買っていくではないか。

だったら、仮に「1人が2個ずつ配る」としたらどうなるのか?

男女100人ずつの場合、1人の女性からもらえる確率は2%にハネ上がる。

全員から1個ももらえない確率は「0.98」の100乗で、13.26%。

おおっ、1個だけのときの3分の1近くまで激減した。

これはスバラシイ。

筆者は高校生の頃「チョコレートを2枚も3枚も配るような女は信用できん!」などと放言していたが、そんなこと言ってたから寂しい思いをしたのだなあ。

だが13.26%では、またまだ安心できない。

そこで、女性1人が配る個数をもっと増やす仮定で考えてみよう。

3個ずつ配ってもらえれば、1個ももらえない確率は4.76%、4個ずつなら1.69%、5個ずつでようやく0.59%。

全体集合が100人という仮定だから、これで1個ももらえない人は消滅する。

あ、いや、四捨五入すれば1人になるから、6個ずつ配ってもらわなければ安心できない。

◆格差社会の縮図がここにも!

しかし、100人の男性全員に行き渡らせるのに、総数600個ものチョコレートが必要とはオドロキである。

残りの500個はどこへいくのだろうか?

計算すると、2個もらえるヤツが4人もいる。

3個獲得が9人、4個13人、5個16人、6個17人、7個14人、8個以上が実に26人……!

なんとうらやましい、いや許し難い連中であるか。

では、1個しかもらえない人は何人かというと……、ええっ、わずかに1人!

これは驚いた。

配る個数が増えれば増えるほど、1個ももらえない人の数は減っていく。

それはいいのだが、同時にたくさんもらえるヤカラの数も増えていくのだ。

つまり、社会全体が豊かになれば貧富の差が広がるという、経済学的真実がここでもハッキリ現れる。

などという結論に達しましたが、われながら不毛な計算という気がしてきました。

個人的にはやっぱりシンパシーが湧かないので、早く終わってほしいぞ、バレンタインデー。

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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