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『ゼンカイジャー』で脚光の森日菜美の雑草魂。「近所の女の子のまま輝きたい」と初の写真集

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『もりだくさん。』より

最終回が迫る『機界戦隊ゼンカイジャー』で追加戦士の妹のフリントを演じてきた森日菜美。初の写真集『もりだくさん。』が発売される。所属する東宝芸能で同世代の上白石萌音、上白石萌歌や浜辺美波と別の道を行こうと始めたグラビア活動の集大成。夏の沖縄、冬の嬬恋村、スーパー戦隊ショーでゆかりの東京ドームシティで撮影した。『ゼンカイジャー』に取り組んだ1年の想いと合わせて聞く。

「あなたにしか演じられなかった」と言われて

――『ゼンカイジャー』の撮影がオールアップした日は、花束をもらって涙でした?

 その前に号泣しちゃいました。最終回の予告を撮ったんですね。予告映像はいつも本編の切り出しなんですけど、特別にみんなで「ゼンカイジャー最終回、このあとすぐ!」と。そのとき、1年間ずっと付いてくださったメイクさんが、私の直しをしながら涙を流していたんです。それを見て大泣きしてしまいました。最終回の予告は、私だけ目が腫れています(笑)。

――全シーンを撮り終えたときも、来るものはありませんでした?

 正直あまりなかったです。それより、1年間ほぼ毎日、同じ人たちと「また明日ね」と言っていたのが、もう「明日」がないのが寂しくなりました。

――達成感もありつつ?

 私はオーディションで「絶対に『フリントが森日菜美で良かった』と思わせます!」と宣言して、1年間フリントとしてどう振る舞うかに全身全霊を懸けていたんです。終わったとき、みんなから「フリントはあなたにしか演じられなかった」と言っていただけたのは本当に嬉しくて、「頑張ってきて良かった」という気持ちになれました。

撮影/S.K.
撮影/S.K.

「役者は蛇口をひねることから」と学びました

――特に印象深かったカイはどの辺ですか?

 “入れ替わりカイ”は反響も多くて、一番のお気に入りですね。

――フリントが兄でツーカイザーに変身するゾックスと入れ替わったカイですね。

 ずーっと「私も変身したい」と言っていたのが叶ったカイでもあったので。それと、クランクインした当初、右も左もわからない状態の私に、監督が演技論を聞かせてくださったのは大きかったです。

――どんなお話だったんですか?

 「役者は蛇口をひねるところから始まるんだよ。その蛇口を締める作業をいかにうまくこなせるか」という。当時の私は何を言われているのかわからないまま、「ハイ」と返事していました(笑)。

――今は意味がわかったんですか?

 蛇口をひねれば水が出て、ちょっとずつ締めると少なくなるじゃないですか。それをどこまで締めて、どれだけ出すか。その緩急が大事ということだと思います。

――たとえば泣く演技でも、号泣から目が潤むまであって、その場面の感情に合わせた泣き方をしないといけないと?

 そうです。「新人はまず全部出し切ってごらん。締める作業はこちらでするから」と言われました。実際、『ゼンカイジャー』の現場では毎日の撮影をこなすのに精いっぱいで、どんなお芝居が良いかというより、とりあえず考えてきたことを全部出して、監督の皆さんに意見をいただきました。自分で作るのは今後の課題として、今できることは出し惜しみしませんでした。

撮影/S.K.
撮影/S.K.

変身した回のツイートがバズって

――入れ替わりカイでは、ツーカイザーへの変身もだいぶ練習したんですか?

 性格も立ち居振る舞いも、兄貴のゾックスになり切りました。兄貴役の増子(敦貴)さんは、私がしないくらい内股で歩いたり、女の子っぽさを誇張して楽しんでいましたけど(笑)、私は家で今までの放送を観て、ゾックスならではの表情や歩くスピードまでマネしました。でも、変身するときにギアにキスするのを「どういう気持ちでやってるの?」と聞いたら「今日もよろしくな、って感じ」と言われて、「それじゃわからないよ」と思って(笑)。テストでは私の変身は「ぎこちない」と言われましたけど、試行錯誤を繰り返して頑張りました。

――ゾックスは踊って変身しますからね。

 その回は放送をリアルタイムで観ることができて、「よく踊れましたと言ってください」とツイートしたらバズりまして、1.1万いいねとか付いてビックリしました。ダンスも練習したんです。現場で休憩時間に(主人公の)介人とゾックスと私でダンス講座をすると、私が一番できなくて。リズム感がないし、アクションや立ち回りにも人一倍時間がかかるんです。ジャンプでも「3cmしか跳んでないよ」みたいな(笑)。

――スポーツはしてなかったんでしたっけ?

 水泳をやっていましたけど、陸は苦手です(笑)。そこも『ゼンカイジャー』で鍛えられました。

『もりだくさん。』より
『もりだくさん。』より

ギンガマン走りは止められました(笑)

――夏に海辺でバカンスをしたカイは、楽しい撮影でした?

 四季折々いろいろ楽しませていただいて、そのカイは海でスイカ割りやバーベキューをして、夏を満喫できました。砂浜でスイカを追い掛けて、駆けっこするシーンがあって。私は『ゼンカイジャー』のオーディションはギンガマン走りをして受かったと思っているので(笑)、テストで披露しました。そしたら、監督に止められて(笑)。「ここは思い切り走ってほしい」と言われたので、スイカに向かって一直線でボーンとダイブしました。

――スーパー戦隊シリーズの撮影は連日ハードスケジュールと聞きますが、体力的には大変だったのでは?

 毎日を全力全開で撮影するだけで、大変というより「明日も頑張ろう」と前向きな気持ちでしたね。『ゼンカイジャー』はお祭り戦隊と言われるほど、現場が毎回楽しかったのと、私のあっけらかんとした性格もあったと思います(笑)。

――日菜美さんの知名度が爆上がりしたのも、実感しました?

 正直めちゃめちゃ感じました(笑)。『ゼンカイジャー』の放送終わりで、SNSのフォロワー数がグイーンと伸びたり、コメント数も爆発的に増えて。日ごろからコメントをちょくちょく返していたことも、皆さんに喜んでいただけたなら良かったです。あと、地元の中華料理屋さんでバイトをしている友だちに聞いたのが、フリントのぬいぐるみを持った子どものお客さんがいたらしくて。「この子が好きなの?」と聞いたら、「うん。結婚する」と言われたとメッセージが来て、嬉しかったです。

親近感を写真でどう見せるか

――写真集を出すことも「ずっと目標でした」とコメントしていましたが、グラビアを始めたときから目指していたんですか?

 デビュー当時からです。今のマネージャーさんに担当してもらったとき、マンダラートという(野球の)大谷翔平選手も作った目標シートを書いたんですね。私は大女優になる。そのために何をするかと枝分かれにしていって、そこに「写真集を出す」も書いていました。もう2年前ですかね。最初から目標だったので、出せると聞いたときは本当に嬉しかったです。

――他の人の写真集を見たりもしました?

 私、かわいい女の子がめちゃめちゃ好きで、いろいろ買っていました。広瀬すずさん、内田理央さん、小松菜奈さん……。勉強のためというより、写真集を集めたい一心で(笑)。実家にコレクションがあります。だから漠然と、自分が出すときはこんな感じにしたいというのはありました。

――どんな感じにしたいと思っていたんですか?

 ファーストは素のまま、元気と明るさを出そうと。それと、いかに親近感を見せられるか。私はスタッフさんたちに「飾らない近所の女の子みたいだね」と言っていただけるので、これからもそれをモットーに生きていきたいんです。

――トップ女優になっても?

 隣りに住んでいるような女の子でいたいです(笑)。それを写真でどう見せるかに、重きを置きました。

『もりだくさん。』より
『もりだくさん。』より

沖縄のきれいな海と空に突き抜けて

――そうしたイメージを、どう写真集に反映させたんですか?

 沖縄に行きたい、というのは叶いました。構想の段階で私も1から携わって、大きく言えばアートディレクターみたいなことも、少しやらせていただきました。冬バージョンでは、ゲレンデマジックにかける感じで撮りたいとも思っていて。

――沖縄は好きな場所だったんですか?

 本当は海外で撮りたかったんですけど、この状況で行けないなら、絶対に沖縄というのはありました。行ったことのない地でしか見られない表情や感情もあると思うので。単純に沖縄に行きたいのもありましたけど(笑)。

――行くのは初めてだったんですね。

 そうです。でも、私が見ていた方たちの写真集では、きれいな海と空に突き抜けてバーン!みたいなカットが多かったので、そういうテイストで撮りたいと最初から考えていました。

――実際に沖縄の海は感動的でした?

 ビックリしました! クルーズ船を借りて離れた島まで行きまして、私は水泳を習っていたので飛び込みをしましたけど、あれはもう、私の知っている海ではなかったです(笑)。水は透き通っていて、海中の景色は絵の具で塗ったかと思うほどきれいでした。

――沖縄ならではの経験もできました?

 ソーキそばを初めて食べて、ソーキうどんに改名すべきだと思いました(笑)。あと、外国の方が多いところに、きらびやかな衣装で行ったんですけど、ちょうどハロウィンで皆さん仮装していたからか浮かなくて(笑)、馴染んでワイワイできたのも楽しかったです。

――冬は嬬恋村で撮ったんですね。

 スノーウェアでしっとりした彼女感を出しました。でも、雪の中のソリのシーンでは、小さい子どもたちに交じって遊んだり。童心に帰るというか、私の精神年齢が低いもので(笑)。気持ち的には、10歳から25歳くらいまでが描かれた写真集かなと思っています。

――スノボを持った写真もありますが、できるんですか?

 やったことはありません。中学の行事のスキー教室以来のゲレンデで、歩くことで精いっぱい。ひっくり返ったり、尻もちをついたりしました(笑)。

『もりだくさん。』より
『もりだくさん。』より

大人の色気も出せたと思います

――写真集の資料にも「王道」「彼女感」「色っぽい」といった言葉がありますが、これまで雑誌グラビアで培ったものを存分に発揮した感じ?

 雑誌では20歳の等身大を出すことが多かったので、あまり見せたことのない表情にも挑戦した写真集でもあります。大人の色気も出せたと思います。

――大人に寄せた写真はどんなイメージで?

 寄せるというより、ちょっと背伸びというか。小学生が初めてランドセルを背負う感覚の大人バージョン、みたいな? 私は何を言っているんですかね(笑)。日ごろからいろいろな方のグラビアを見て、自然に学んでいたところはあります。

――大人っぽさの点では、先ほど挙がった内田理央さんは参考になったり?

 そうですね。私は内田理央さんが本当に好きで、『だーりおといっしゅうかん。』という写真集を持っています。色気の部分も元気ハツラツな部分もあるし、「こんな表情を見せるの?」という写真もあって、勉強になりました。

グラビアで主役気分を味わえたのは財産です

――撮影が終わってからも、自分でいろいろ関わったんですか?

 はい。写真選びもしましたし、打ち合わせで「これはこれと組み合わせたほうがいい」といった話もさせていただいて、色校確認にも同席しました。今までは事務所のスタッフさんにやっていただいたものを、私が見る形だったんですけど。

――普通はそうかと。

 初めての写真集を出すからには、自らやろうと思いました。

――写真集はカット数もページ数も多いから、時間はかかったでしょうね。

 結構かかって、自分の顔に飽き飽きしちゃいました(笑)。ずっと見ていると、何が良いのかわからなくなってきますよね。自分が選んだ写真なのに「これはどこが良かったんだっけ?」と思ったり。もはや自分と語り合う感じでした。

――改めて、グラビアを始めた頃と今で、自分のどんなことが変わったと思いますか?

 表情の見せ方は変わりました。グラビアでは自分が主役。ロケバスが用意されて、カメラマンさん、衣装さん、メイクさん、運転手さんと、みんなが私のために1日を費やしてくれる。それが最初は嬉しくて。ドラマや映画で主役を演じることは難しいけど、その気持ちをいち早く味わえたことは、自分の財産になったと思います。

頑張ったごほうびでラムしゃぶを食べました

――スタイルキープにも気をつかうようになりました?

 それができないんですよね。食べることが好きなので。今までは撮影3日前から断食をしていましたけど、写真集を出すに当たって、日ごろからごはんをサラダチキンにして、パーソナルジムにも通いました。でも、筋トレも苦手で。パーソナルで私だけがやるのが許せず(笑)、トレーナーさんに「一緒にやりましょう」と声を掛けて巻き込みました。「何で?」みたいな顔をされながら、隣りだと私を見られないから、真正面に向き合ってやってくださいました。

――そんなに太らない体質ではあるんでしょうね。

森 結構顔に付いたりします。だから、普段から気をつけないといけないんですけど、自分の甘い部分でもあって食べちゃうんです。モデルさんのインタビューを読んでいると、皆さん、すごいじゃないですか。「ファスティングって何? 断食で良くない?」と思いました(笑)。これから、ひとつひとつ学んでいきたいです。

――食べないストレスで太ることもあるみたいですけどね。

 そうですね。食べることはやっぱり幸せなので。頑張った自分へのごほうびとかには気にせず食べます。

――どんなごほうびごはんなんですか?

 お肉が好きで、最近はラム肉のしゃぶしゃぶを初めて火鍋で食べました。半分が辛くて半分が豆乳ベース。おいしかったです。仲良いメイクさんと行ったんですけど、飲む方と接することも増えてきて。むくまないように気をつけながら、今年の目標としてビールを飲みたいなと。

――20歳になってから、まだビールは飲んでなくて?

 私は梅酒が好きなんです。あとは、カシオレとかの甘いお酒だったり。でも、みんな「仕事終わりのビールは格別」と言うので、私もクワッとやりたいと思います(笑)。

『もりだくさん。』より
『もりだくさん。』より

地面を這いつくばってもやってやるぞと

――今回の写真集はグラビア活動の集大成になるかと思いますが、今後も続けるんですか?

 続けていけたらと思いますけど、ステップアップして、女優業に重きを置いていきたいです。

――もともと女優を目標に見据えて始めたグラビアでしたからね。

 世に自分が広まればいいなと思って始めました。グラビアで私を知ってくださった方もたくさんいますけど、今後は役で森日菜美を広めていきたいです。

――『ゼンカイジャー』後が本当の勝負かもしれませんが、女優としての自信は付きました?

 大きな声で「自信がある」とは言えませんけど、『ゼンカイジャー』を1年間やってきたことが糧として、自分に備わった気はします。フリントは私の素に近いキャラクターで、あまり悩むことなく演じることができました。でも、カイごとのキーとなるお芝居や一家の想いを込めて話すシーンでは、表情のひとつひとつに「違うな」と思ったりもしながら、監督と話し合って乗り越えてきました。これからも初心は忘れず、どこかで立ち止まったときは「私は1年間頑張ってきたから、また頑張れる」という気持ちでやっていきたいです。

――『東宝シンデレラ』出身でない東宝芸能の女優として、道を拓く意志もあったんですよね。

 シンデレラでなくても輝けると、これから見せていけたら。シンデレラは素で光っているじゃないですか。私はガラスの靴は履いていませんけど(笑)、地面を這いつくばっても何でもやってやるぞという雑草魂で、皆さんに知っていただけるようになりたいと思います。

Profile

森日菜美(もり・ひなみ)

2001年3月30日生まれ、東京都出身。

2014年に東宝芸能創立50周年記念オーディションに合格。2015年に映画『校庭に東風吹いて』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』、『ハルとアオのお弁当箱』、『ザ・ハイスクールヒーローズ』、映画『しあわせのマスカット』など。ドラマ『機界戦隊ゼンカイジャー』(テレビ朝日系)に出演中。ラジオ『#メカラジ』(ラジオ日本)でレギュラーアシスタント。

『もりだくさん。』

2月24日発売 2970円(税込)講談社 撮影/中山雅文
2月24日発売 2970円(税込)講談社 撮影/中山雅文

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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