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秋篠宮家長男めぐる「皇室特権」「盗用疑惑」との週刊誌報道をめぐる混戦

篠田博之月刊『創』編集長
『週刊新潮』2022年2月24日号(筆者撮影)

 秋篠宮家の長男、悠仁さんの高校進学をめぐって「皇室特権」との批判が週刊誌でなされ、宮内庁がそれに反論して応酬がなされた経緯は、1月30日にヤフーニュースに書いた。

宮内庁が秋篠宮家に関する週刊誌報道に怒涛の反論。応酬は今後どうなる?

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20220130-00279642

 その後、今度は悠仁さんの「盗用」疑惑なる批判が週刊誌でなされ、その騒動をめぐっては週刊誌内部でも見解が割れるという混戦模様だ。その経過を検証しよう。

結局は提携高制度筑波大付属へ進学

 筑波大学付属高校の一般入試合格発表がなされた16日夕方、宮内庁は、悠仁さんが筑波大とお茶の水女子大の「提携校進学制度」によって筑波大学附属高等学校に合格を決めたことを発表した。

 わざわざ発表したのは、週刊誌が昨年末以来、その制度を使って入学することを「皇室特権」などと批判している経緯があったからだろう。それともうひとつは、悠仁さんが13日、一般の受験者にまじって一般入試も受けたことを週刊誌が大きく報道したからだろう。

 『週刊新潮』2月24日号はそれを「ガチンコ勝負に方針転換?」などと報じていた。

 『週刊文春』2月24日号「『悠仁さまに競争を』秋篠宮『お受験迷走』」では「既に提携校制度で進学は内定しているが、一般入試で合格なさったことにするのでは」という見方も紹介されていた。

 結局、「提携校進学制度」が使われたわけだが、それにもかかわらず一般入試も受験したことについては、秋篠宮家がどう考えてそうしたのかよくわからない。「提携校進学制度」を使うには一定の学力があることが前提なので、一般入試受験はそれを証明することと関わっているのかもしれない。

 ただいずれにせよ、一連の週刊誌による「皇室特権」批判については、秋篠宮家や宮内庁がかなり気にしたのであろうことは間違いない。もともと秋篠宮は、皇族が車で街を走る時に、赤信号でも渡れるようにされたり特別待遇がなされることを潔しとしていないと報じられてきたから、息子の進学をめぐって特権が使われたという批判を気にするのは当然といえよう。

追い打ちとなった応募作文めぐる騒動

 さらに追い打ちをかけたのは、週刊誌が報じた、昨年の「第12回子どもノンフィクション文学賞」の中学生の部で悠仁さんの作文が大賞に次ぐ佳作に選ばれたことをめぐる騒動だ。「小笠原諸島を訪ねて」という応募作文の中に、ガイドブックや研究機関のホームページと酷似した記述が見つかったというのだ。

 宮内庁は、参考文献に記載するのが不十分だったと説明したのだが、それを問題にした『週刊新潮』の見出しはこうだ。「『悠仁さま』入選作文に指摘された”悲しき『盗用』疑惑”検証」。「盗用」という、犯罪をイメージさせるような表現に関係者は凍りついたに違いない。

 『女性セブン』3月3日号の見出しは「悠仁さまがお答えに!受賞作のコピペ問題」だった。「盗用」よりは穏やかとはいえ、こういう見出しが新聞広告などに躍る事態に秋篠宮家が頭を抱えたことは容易に想像できる。

 実際の作文がどうだったのかというと、『週刊新潮』2月24日号が詳細に検討している。例えば、大陸と陸続きになったことのない小笠原諸島の生き物がどのようにして島々にたどりついたかを説明した部分だ。『週刊新潮』から引用しよう。まずは悠仁さんの作文だ。

《あるものは海流に乗って運ばれ、翼をもつものは自力で、あるいはそれに紛れて、三つのW、Wave(波)、Wind(風)、Wing(翼)によって、海を越えて小笠原の島々にたどり着き、環境に適応したものだけが生き残ることができました》

 それが『世界遺産 小笠原』というガイドブックではこう書かれていたという。

《あるものたちは風によって運ばれ、また、あるものは海流に乗って。あるいは、翼を持つものは自力で、またはそれに紛れて。いわゆる3W、風(Wind)、波(Wave)、翼(Wing)により、数少ない生きものだけが海を越えて小笠原の島々にたどりつくことができた》

 作家の間でも盗用疑惑が裁判になることはあるのだが、実際に裁判となると盗用かどうかの認定は実はそう簡単ではない。酷似しているからといって何でも盗用とはならないのだ。 

 ただ、そのことを踏まえてこのケースを見てみると、このくだりは3つのWという言い回しにそのガイドブックのオリジナリティが感じられるから、悠仁さんのこの引用の仕方は正直に言ってまずい気がする。単に参考文献を明示すればよいというものでもないかもしれない。

 ただこの場合、悠仁さんがそれを書いた時は13歳だったといったことなど、勘案すべきことはいろいろあるだろう。

 

『週刊朝日』と『サンデー毎日』の報道

 例えば『週刊朝日』3月4日号「悠仁さまの筑附合格の吉報が吹き飛んだ『作文』引用問題の余波」では、評論家のこんなコメントが紹介されている。「作文を書いた一昨年の夏は、悠仁さまはまだ13歳。参考文献の記載や引用の注釈を忘れたことについて全国のニュースで報道するのはあまりに酷ではないか」。

 さらに紀子さまの友人という匿名女性のこういうコメントも書かれている。

「相手が皇族だからといって、子どもをよってたかって攻撃してよいわけではないはずです」

 『週刊朝日』が地の文で書いているのではなく、こういう意見もあるというコメントとして紹介しているのだが、「盗用」疑惑などという批判報道への異論を続けて紹介しているから、同誌自身が一連の週刊誌報道にいささか疑問を感じているのは確かだろう。

 また『サンデー毎日』の連載「社会学的皇室ウォッチング!」でも、成城大の森暢平教授が「過剰な清廉潔白さを求めることが、皇室と人びとの関係を悪化させている」と、この間の報道を批判している。

 どちらが正しいということでなく、週刊誌の中でもこんなふうに意見が割れることが良いことだと思う。かつての小室さん及び眞子さんへのバッシング報道では、週刊誌が一色となって集中砲火を浴びせていた。それが2021年9月以降、新聞社系週刊誌と出版社系週刊誌とで意見が分かれるようになった。そのほうが一色報道より健全だ。

 その意味では、応募作文をめぐる報道でも、意見が分かれ、どう考えるべきか議論の余地ができたのはよいことだと思う。確かに13歳の子どもがやや不用意に引用してしまったことを「全国のニュースで報道するのはあまりに酷ではないか」とは言えるかもしれない。もちろん、いや13歳の子ども一般についてはそうだろうが、皇室特に悠仁さんの場合は、厳しさが求められて当然だという意見もありえる。議論を闘わすべきケースだろう。

 

 それともうひとつ気になるのは、現在の悠仁さん批判報道が、一連の眞子さんバッシング、秋篠宮家バッシングとつながっていることだ。『週刊新潮』や女性週刊誌のトーンは、それまで続いてきたバッシング報道の延長上だ。

 例えば『週刊新潮』3月3日号「『学習院』忌避で『悠仁さま』が学べない『ご自覚』」という見出しには、「『皇室』を振り回す『秋篠宮家』」という言葉が添えられている。

「学習院忌避」をめぐる週刊誌報道

 ちなみにこの見出しの「学習院」忌避云々については、『週刊女性』3月8日号も「学習院OBから憤怒の声! 波乱を呼ぶ『6月決戦』」という記事を載せている。皇族なら教育の場は学習院という伝統を秋篠宮家が踏襲しないことに、学習院関係者が反発しているというのだ。

 『週刊女性』記事の「6月決戦」とは何かと思ったら、学習院と筑波大付属両校で、部活対抗で試合を行う恒例の行事があるのだそうだ。その6月時点で悠仁さんが筑波大付属高校で運動部に入っていれば直接対決、そうでなくても応援に参加する可能性はあるということだ。いくら何でも「決戦」は大げさだろうが、学習院関係者にとっては気になる局面かもしれない。

 一時の眞子さんバッシングから秋篠宮家バッシングへと出版社系週刊誌の報道が続けられ、それに対して新聞社系が異論を唱えるという、この構図もひとつの流れとなりつつあると言えそうだ。

 

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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