”紅麹サプリ”で揺れる機能性表示食品 開始当初から指摘された制度の「リスク」とは #専門家のまとめ
小林製薬が販売している「紅麹」を含む機能性表示食品により、死者を含む健康被害の恐れが報告され大きな問題になっています。「悪玉コレステロールを下げる」などの表示の根拠や、食品の安全性の確認をメーカー側にゆだねる「機能性表示食品制度」。2015年の制度開始当初より、根拠となる研究の不備や健康被害の恐れが、たびたび指摘されていました。
ココがポイント
▼消費者庁は小林製薬に対し、来月5日までに安全性の根拠を再検証するよう要請。健康被害の広がりも
・“紅麹サプリ問題”消費者庁が安全性根拠の再検証を要請 小林製薬は腎疾患など入院症例数を新たに20件把握(テレ朝news)
▼紅麹サプリ「悪玉コレステロールを下げる」根拠論文は1つだけ。メーカーも「参加者数が少ないことは否めない」
・様式Ⅰ:届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)
▼2015年に始まった機能性表示食品制度。消費者庁データベースには、現在販売中のものだけで3309種類が登録されている。
▼2017年の段階で8割近くに根拠の「不備」が指摘。東京都消費生活総合センターにより「機能性表示食品による薬剤肝炎」の相談も。
・体脂肪を落とす?コレステロールを下げる?ウワサの「機能性表示食品」とは(Yahoo!ニュースエキスパート 市川衛)
エキスパートの補足・見解
「体脂肪を落とす」などの魅力的な言葉が大きくプリントされ、普通の食品より良質なイメージもある機能性表示食品。しかしまとめの記事に示したように、これまで消費者庁の報告書でも、メーカー側が根拠として示した内容の「不備」が8割近くの製品に指摘されています。
機能性表示食品はそもそも、機能性・安全性を国や公的機関が保証するものではなく、「消費者の自己責任」を強調した制度です。しかし、そもそも「論文の読み方」や「評価の方法」をほとんどの消費者は知りません。圧倒的な情報の非対称性があるなかで、いまデータベースで公開されている情報だけをもとに「消費者が自己判断せよ」というのは余りに乱暴と感じられます。
今回の紅麹製品の問題は、表示する機能ではなく安全性(健康被害)の面での問題がクローズアップされています。しかし、こうした問題が起きたそもそもの背景に、医薬品ではない食品やサプリメントに対し、十分な根拠なしに医薬品と類するかのような表示を謳うことを許容する制度そのものに問題があると感じます。