Yahoo!ニュース

西武鉄道の秘蔵資料を特別公開! 「池袋・豊島・西武沿線 レトロ百貨展」8月14日(月)まで

杉山淳一鉄道ライター
博物館を持たない西武鉄道の展示品を見られる貴重な機会(杉山淳一撮影)

東京・池袋で、昭和レトロをテーマとした展覧会「池袋・豊島・西武沿線 レトロ百貨展」が開催されています。2023年8月3日(木)から2023年8月14日(月)まで、会場は池袋駅東口の西武池袋本店の7階催事場です。この一角に、西武鉄道が保有する写真や電車の部品なども展示されます。8月2日(水)に内覧会が開催されました。

西武鉄道は博物館のような常設の展示施設を持たないので、資料の展示公開はとても貴重な機会となります。西武鉄道ファンのみなさんにオススメです。また、ほかにも高度経済成長期の池袋駅周辺のジオラマ、懐かしの昭和映画の資料展示、アニメ展示などがあり、懐かしい昭和レトロな風景を楽しめます。

西武鉄道今昔物語

「今昔駅」と書かれた模擬改札口の向こうで西武鉄道の写真展を開催します。昭和30~40年代の駅舎がズラリと並びます。現在は建て替えられてしまった駅がほとんどです。旧駅舎を懐かしむ方も多いでしょう。小さいながらもデザインと技巧を尽くした駅舎。プラットホームと一緒に写っている車両や人々の衣裳も含めて、風景全体に高い資料価値があります。

懐かしい写真と西武ライオンズのユニホーム、トキワ荘……西武鉄道の魅力がギッシリ(杉山淳一撮影)
懐かしい写真と西武ライオンズのユニホーム、トキワ荘……西武鉄道の魅力がギッシリ(杉山淳一撮影)

天井近くには駅名を書いたプレート「行先表示板」が並びます。「方向幕」やLED表示が普及する前の時代、電車にはこのような行先表示板を取り付けて乗客に行先を知らせました。駅の写真に写り込んだ電車も行先表示版を付けています。探してみましょう。

振り返ると電車関連の展示です。旧駅名標、特急のヘッドマーク、電車の編成図・座席配置図などが並びます。西武鉄道沿線に長く住んでいる人は「この色の電車だったなあ」と懐かしく思うことでしょう。

あの頃の電車を思い出しますね(杉山淳一撮影)
あの頃の電車を思い出しますね(杉山淳一撮影)

鉄オタの私は「いまよりモーターが非力な時代に2M4Tだったのか、しかも欧米の列車のようなプッシュプルだ」とひとり興奮しておりました。2M4Tは数字が車両数、Mがモーター付き車両、Tはトレーラー(モーターなし)という意味です。つまり、6両編成なのにモーター付き車両が2両しかありません。

現在の電車はモーター付き車両の比率が1対1かそれ以上です。それに比べると2M4Tは心配になるくらい非力な気がします。しかも昭和30年代、40年代は乗車率300%超えの通勤地獄と呼ばれた時代。お客さんはギュウ詰めで乗っていたはず。よほど線路が平坦で勾配が少ないのかな、とか、きっと遅かっただろうな、などと想像しておりました。

異形式の連結編成の図もありました。これも今は少なくなりました。西武鉄道は大手私鉄で初めて10両編成で運転した会社です。急増する通勤客に対応するため、いろんな電車を寄せ集めて電車を長くしたんですね。そんな時代感を読み取れる展示でした。

西武鉄道といえば、沿線にトキワ荘や東映動画スタジオ、シンエイ動画、サンライズがあるなど、アニメやマンガの関わりも深い鉄道です。展示場の一角に『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のポスターが展示されていました。この作品の主な舞台は秩父で、時代も現代ですが、西武鉄道や秩父鉄道の電車や駅がたくさん出ます。

西武鉄道沿線はアニメの聖地(杉山淳一撮影)
西武鉄道沿線はアニメの聖地(杉山淳一撮影)

懐かしの昭和映画の世界

アニメのポスターの奥に「懐かしの昭和映画の世界」コーナーがあります。映画監督の井上梅次さんの生誕100年を記念した特別企画です。

石原裕次郎ファンも見逃せないエピソードがありました(杉山淳一撮影)
石原裕次郎ファンも見逃せないエピソードがありました(杉山淳一撮影)

井上梅次さんは生涯で116本の作品を手がけたとのこと。昭和30年代はテレビが普及する前、映画が大衆娯楽の代表でした。井上梅次監督作品は石原裕次郎さん主演の『嵐を呼ぶ男』がとくに有名です。『嵐を呼ぶ男』は近藤真彦さん主演でリメイクされましたが、この時も監督を務めました。テレビドラマでも『必殺シリーズ』『ザ・ハングマンシリーズ』などを手がけています。

女優の月丘夢路さんは昭和32年に井上梅次さんと結婚しました。月丘夢路さんは宝塚歌劇団出身の映画スターです。宝塚映画に主演、宝塚退団の後に大映に入社、戦後は松竹の主演女優として活躍、米国留学から戻ると日活に移籍しトップスターとなりました。その後も映画で活躍、日活がアクション路線に転じるとテレビドラマで活躍されました。

展示品は当時のポスターのほか、映画撮影のエピソード、脚本などの実物資料など、見応えのある展示でした。

■豊島区大博覧会

壁一面に書かれた「豊島区の歴史」は圧巻です。駅周辺のまちづくりをテーマとしたジオラマがあり、池袋の町全体を俯瞰できます。

圧巻の豊島区大年表(杉山淳一撮影)
圧巻の豊島区大年表(杉山淳一撮影)

池袋駅付近の再開発計画を紹介(杉山淳一撮影)
池袋駅付近の再開発計画を紹介(杉山淳一撮影)

次の見どころは昭和レトロの頃をイメージした「池袋駅東口」「池袋駅西口」のジオラマです。制作者はジオラマ作家の山本高樹さん。山本さんは「昭和幻風景」をテーマとしたジオラマを制作しています。NHKの朝ドラ「梅ちゃん先生」のオープニングも山本さんの作品でした。細部にたくさんの物語が設定されているようで、いつまでも眺めていられます。

山本高樹さん作の池袋駅西口周辺、昭和30年代後半を想定 (杉山淳一)
山本高樹さん作の池袋駅西口周辺、昭和30年代後半を想定 (杉山淳一)

たくさんのドラマが生まれています(杉山淳一撮影)
たくさんのドラマが生まれています(杉山淳一撮影)

山本高樹さん作の池袋駅東口周辺、昭和40年代前半を想定(杉山淳一撮影)
山本高樹さん作の池袋駅東口周辺、昭和40年代前半を想定(杉山淳一撮影)

都電とトロリーバス、いかにも「昭和」です(杉山淳一撮影)
都電とトロリーバス、いかにも「昭和」です(杉山淳一撮影)

池袋駅周辺の懐かしい映像も観られます(杉山淳一撮影)
池袋駅周辺の懐かしい映像も観られます(杉山淳一撮影)

■アニメ、グルメ、レコードも

「世界名作劇場シアター」はフジテレビで放送されたアニメシリーズ『世界名作劇場』から『母をたずねて三千里』『あらいぐまラスカル』『ペリーヌ物語』『フランダースの犬』などを上映します。長椅子が並び、ちょっと休憩できるスペースです。

このほか、昭和をテーマとしたグルメ、雑貨、駄菓子、レコードの販売も予定されています。

お腹も涼しく、懐かしく(杉山淳一撮影)
お腹も涼しく、懐かしく(杉山淳一撮影)

「レトロ百貨展」の終了後、8月16日(水)から8月22日(火)は「暮らしの中の骨董マーケット」として、レコード、プロマイド、昭和レトロ雑貨を販売するとのこと。西武池袋本店の8月は昭和レトロ企画が盛りだくさんですね。

昭和レトロと言えば、西武園ゆうえんちも2021年に「昭和レトロ」をテーマにリニューアルされました。西武池袋本店で昭和レトロの魅力を発見したら、西武鉄道で西武園ゆうえんちへ。この夏の定番コースになりそうです。

(2023年8月3日 17時31分 誤字を修正しました)

鉄道ライター

東京都生まれ。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社でパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当したのち、1996年にフリーライターとなる。IT、PCゲーム、Eスポーツ、フリーウェア、ゲームアプリなどの分野を渡り歩き、現在は鉄道分野を主に執筆。鉄道趣味歴半世紀超。2021年4月、日本の旅客鉄道路線完乗を達成。基本的に、列車に乗ってぼーっとしているオッサンでございます。

杉山淳一の最近の記事