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ホテルでも酒類提供禁止で部屋飲み増加!?【客室への持ち込み】はNGか?

瀧澤信秋ホテル評論家
ホテルのルームサービスが人気(写真のホテルと本文は関係ありません/筆者撮影)

ホテルのお籠もりステイがフィーチャーされる

まん延防止に緊急事態宣言、不要不急の外出自粛…メディアを通して不穏なワードが飛び交う日々。都道府県を跨ぐどころか移動そのものが行政から自粛要請される中、ストレスフルな毎日を過ごしている方も多いことだろう。自宅に籠もるのならば、ご近所ホテルステイで癒やしを求める人々も増えている。コロナ禍を通じて総体的にホテルそのものに徹底した除菌・消毒がなされ、何より客室は個室、パブリックスペースをできるだけ避ければ自宅と何ら変わらないのでは、ということが基本的な考えにあるようだ。

コロナ禍において、ホテルで懸念されてきたことのひとつがパブリックスペースであり、宴会や結婚式などは忌避されてきた典型的サービスといえる。そうした大人数が一定目的のために集うケースはもとより、個々人が楽しむダイニングにあっても今回の酒類提供禁止もあってホテルダイニングへも甚大な影響が指摘されている。そんな世相もあってか、ホテルではルームサービスがにわかに注目を浴びている。ルームサービスとはご存じの通り、飲み物やホテルメイドの料理が客室へ運ばれるもので、インルームダイニングとも言われるとおり、立派な食事を提供するホテルは多い。

ホテル内とはいえ、ダイニングレストランへ出向くとあらば、それなりに身なりは整えていかねばなるまい(それも非日常で楽しいが)。一方、インルームダイニングならば一人で、あるいは家族とリラックスした時間を過ごせる。そんな客室ダイニングの魅力とコロナ禍のディスタンス思想は親和性が高く、様々なホテル関係者の話から(まだデータは取りまとめていないが)客室にお籠もりし部屋でそのまま食事も楽しむというステイは、一定の需要を創出しているのは事実だ。

ルームサービスはお高い!?

ところで、ルームサービスを提供するホテルはいわゆる高級ホテルが定番。そしてルームサービスはそれなりの価格設定である。筆者はかねてルームサービスのリサーチを続けてきたが、同じ高級ホテルとはいえ、たとえばカレーライスが1500円~4500円というくらいの幅があるのも見てきた(4500円は黒毛和牛ステーキが添えられていた)。事前にリサーチできればいいが、ルームサービスメニューと価格を公式サイトに明示しているホテルはかなり少ない。到着し客室でメニューを見て「高っ!」「安っ!」と一喜一憂するのも楽しみだろうか。

個人的な希望をいえば、2000円以下での御膳的なセットメニューがあるとかなり嬉しい。15年以上前の話になるが、某空港近くの高級ホテルにはそのようなメニューがあった。夜遅く到着したゲストにもホテルメイドの料理をという思いから、お刺身やステーキなどが入った御膳が1500円で提供されていて欣喜雀躍であった。高級ホテルというブランドイメージもあるだろうが、特に観光ばかりでなく、筆者のように仕事でひとりホテルお籠もりといった需要が高まっている中、気軽に完結できる安価なルームサービスセットメニューは是非検討していただきたいと切に願っている。

最近某ホテルで見かけたリーズナブルなセットメニューはかなり豪華だった(筆者撮影)
最近某ホテルで見かけたリーズナブルなセットメニューはかなり豪華だった(筆者撮影)

閑話休題。そんなルームサービスでも、いわゆる禁酒法!?によりアルコールの提供は為されないことになったわけだが、だったら「持ち込みたい」となるのは必然か。というより、ルームサービス、否、ホテルのアルコールそのものの価格が高い印象で、持参すれば安く済ますことができるというのは当然の発想かもしれない。ホテルのアルコールが高いのは、そもそもかようなスタイルで相応の事由があり、筆者がどうこう言うことでもないが、インルームダイニングの料理ということになれば、お気に入りの(リーズナブルな価格の)アルコールでも気兼ねなく飲めると考えるのも人情か。

ホテルの客室に飲食物を持ち込んでいいのか問題

持ち込み、という点でいえば、アルコールにしろ飲食物にしろ、ホテルの客室に飲食物を持ち込んでいいのか問題があり、約款やルールという点でいえば“基本的にNG”ということになる。食品衛生やホテルの収益性という観点であるが、コロナ禍の前後にかかわらず、大小その規模はさておき、実際に無断で持ち込みが為されていたのは実情であろう。このように、ホテルが提供する以外の飲食物をゲストが持ち込むことについては、ホテルも事実上認容していると思われるような場合も含め、様々なケースが見られる。

飲み物にフォーカスすれば、高級ホテルの客室冷蔵庫に飲み物が備えられているのが定番であるが(「ミニバー」といいチェックアウト時に精算する)、最近では高級ホテルとはいえ空の冷蔵庫も間々見かけるようになった。館内のショップや自販機で買い求めたものを冷やせるようにと表記するホテルもあるが、外から飲み物を持ち込むことが事実上認容されているようなケースも散見する。

最近では客室に電子レンジを備えるケースも(筆者撮影)
最近では客室に電子レンジを備えるケースも(筆者撮影)

高級ホテルのケースについて触れてきたが、たとえば、コンビニエンスストアが建物内に同居するビジネスホテルでは、コンビニエンスストアで購入したものを客室へ持ち込むことが前提になっていると思料できるし、そもそも電子レンジを備えるビジネスホテルは多く、これもホテル外から食べ物を持ち込むことを認容していると推定できる。実際、某大手チェーンの担当者に聞くと「ひとり客室で夕食をという方は多く、ホテル内で夕食を提供していない業態である以上容認しています」という※。

ホテルに電子レンジは必要か? Yahoo!ニュース(個人)瀧澤 信秋

※テーマの性格上、以後も含め具体的なホテル名を明記できないことをお許しいただきたい

ビジネスホテルに限らず、館内に各種ダイニングレストランを擁するような高級ホテルでも、最近では施設内にコンビニエンスストアを見かけることも。高級ホテルのビジネスホテル化という話はさておき、これも客室での飲食が想定されていると言えよう。

さらにここにきて、新型コロナウイルスは客室への飲食物持ち込み問題へも一石を投じている。ホテルの長期滞在プランも注目される昨今、多彩なダイニングを擁する高級ホテルといえども、長期滞在のゲストを充足させれられるようなフレキシブルな供食環境をホテル内で完結させることは難しいかもしれない。そもそも飲食店での外食そのものが自粛ムードという中、お店で購入した飲食物や飲食店からのテイクアウトを持ち込むのは当然の成り行きといっても過言ではないだろう。

高級ホテルの担当者に聞くと「ホテル内のレストランも一部休業ということもあり、飲食の提供ができませんし、そもそも料金も高いので、お客様それぞれが滞在のスタイルに合わせて飲食物を持ち込まれることは、特に昨今の情勢からもホテルとして認めています」と話す。別の高級ホテルの宿泊マネージャーは「ホテル内で飲食してもらえるのはもちろん嬉しいが、とにかく飲食物を持ち込もうが込まいがこのご時世泊まりに来ていただくだけでも何より」と背に腹はかえられない思いを吐露する。

公式にフードデリバリーサービスと提携するホテルも

悲喜交々のホテル客室飲食物持ち込み問題であるが、最近ではさらに情勢に進化が見られる。すっかり市民権を得ているフードデリバリーサービスだが、ホテルへのデリバリーにも相応の需要があるというのは某ビジネスホテルの担当者の弁。以前からピザの宅配会社などと協力し客室にデリバリーメニューを置いていたが、コロナ禍×フードデリバリーの認知拡大でゲストからの要望が増加しているという。ビジネスホテルチェーンでフードデリバリーサービスの事業者と提携し、需要の取り込みを図るケースもニュースになった。

高級ホテルでもフードデリバリーサービス需要はあるという(このようなホテルにおけるフードデリバリーサービス需要が特有の意外な問題を惹起しているケースもあり別稿に譲る)。先日、ホテル住まいをテーマに都内の某高級ホテルへ一定期間の滞在を試みた。予算もあるので当然ホテル内での飲食は難しく、周辺のお店も自粛要請で夜は早く店じまいしてしまう。運営会社の担当者によると「周辺にはリーズナブルな飲食店も多く時短営業もあり、テイクアウトされる方も多く見かけます」といい、「フードデリバリーサービスについての問い合わせも客室からいただくこともあります」と話す。

写真:WavebreakMedia/イメージマート

続けて「こうした世相ですので、多人数での宴のような度を超えるような場合は別として、お客様個々人がプライベートで楽しまれる範囲については基本的に問題ないと考えています」とホテルのスタンスを話してくれた。そんな仕事半分といったホテルの滞在だったが、フードデリバリーサービスはかなり助かった。そうはいってもホテルクオリティの食事も恋しく、1日だけ奮発してルームサービスをオーダーしてみた。

ルームサービスのアルコールはかなり高価で、その分料理にお金を掛けたいという思いもあり、事前にホテルへ確認したらアルコールの持ち込みも可能とのこと。いつも自宅で愛飲している5~700円ほどのワインをバッグに忍ばせておいた。さすがにワイングラスは持参できないので、ルームサービスオーダー時に厚かましくワイングラスもリクエスト。持ち込みワインにもかかわらず、快くワイングラスを持ってきていただいたが、ワインオープナーまで添えられていたのはさすがのホスピタリティか。

でも、わたしの安ワインはスクリューキャップ。無用の長物となった。

*     *     *

具体的なケースも含め、ホテル客室への飲食物持ち込みについて様々な実際をみてきたが、無論ホテルによって認容や可否についてのスタンスは様々だ。実際の利用については事前に個々のホテルへ確認することが必要だろう。

コロナ禍がもたらすホテルサービスの変容については今後も取材を続けていく。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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