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「探索犬」と共に挑んだ「マングースバスターズ」 奄美大島で根絶達成#専門家のまとめ

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
環境省 奄美大島における特定外来生物フイリマングースの根絶の宣言について より

マングースは、1979年頃に奄美大島へハブ対策などの目的で約30頭持ち込まれました。

しかし、マングースはハブの駆除にはあまり効果がなく、逆にアマミノクロウサギやケナガネズミといった希少な固有種を捕食してしまいました。奄美大島は東京23区よりひとまわり大きな島ですが、そこでマングースの根絶が達成できたのは、「マングースバスターズ」の皆さんと「探索犬」のおかげです。この根絶は、世界でも珍しい成功例です。この取り組みについて詳しく見ていきましょう。

ココがポイント

鹿児島県・奄美大島で駆除が行われてきた特定外来生物のフイリマングースについて、環境省が近く根絶を宣言する見通し
出典:読売新聞オンライン 2024/8/31(土)

探索犬でのモニタリングでも生息情報は確認されていない。一方、アマミノクロウサギなど在来の希少種の生息数は近年増加傾向
出典:朝日新聞デシタル 2024/9/3 (火)

夜行性のハブに対して、マングースは昼間に活動。奄美に古来から存在する生物を襲い、個体の減少などにつながっていきました
出典:テレ朝日系(ANN) news 2024/9/4(水)

「マングースバスターズ」を結成。さらに、マングースだけに反応するよう訓練された“マングース探索犬”を導入
出典:KYT鹿児島読売テレビ 2024/9/3(水)

エキスパートの補足・見解

1979年頃にハブ対策として奄美大島に約30頭のマングースが持ち込まれましたが、2000年には推定1万頭にまで増えました。

マングースは昼行性で、夜行性のハブの駆除にはほとんど効果がありませんでした。それどころか、アマミノクロウサギなどの希少な野生動物を襲うようになったのです。マングースはバッタやコオロギなどの小型無脊椎動物から、カエルやネズミ、ウサギなどの脊椎動物まで幅広く捕食し、そのうえ農作物にも被害を及ぼしました。

「マングースバスターズ」というマングースを専門に駆除する人、探索犬、わなや自動撮影カメラなどの機械を駆使した緻密な作戦により、マングースは根絶。

それには探索犬の能力が大きく貢献しました。探索犬には2種類おり、1つはマングースを見つけて追い込む生体探索犬、もう1つはマングースの糞を探す糞探索犬です。この2種類の探索犬もマングース根絶に大きな力を発揮しました。

アライグマなどの例でもわかるように、ペットとして外来種を日本に放つと、同様の被害が起きることを理解しておくことが大切です。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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