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半年で連ドラ3本に主演。恋愛未経験のパティシエ役の畑芽育が「誰にも見せない」ノートに書いていたこと

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)「パティスリーMON」製作委員会

昨年7月、『最高の生徒~余命1年のラストダンス~』で連続ドラマ初主演を務めた畑芽育。さらに9月からの『女子高生、僧になる。』に、今月10日スタートの『パティスリーMON』と、半年の間に3本で主役を続けている。デビューは1歳で現在21歳。今回は劇中でも同じ年齢で、フランス洋菓子店で働く恋愛経験のない新人パティシエ役だ。鮮烈な躍進の背景にあるものは?

表情筋の使い方をマネするようになりました

――昨年夏から、主演3本を含め出演作が相次いでます。何かをするようにしたら、いろいろうまくいくようになった……みたいな成功の秘訣はありますか?

 こう言ったら面白くないかもしれませんが(笑)、主演をするために特別なことをしてきたというより、自分が大好きなお芝居を、ひたすら一生懸命にやってきただけなんです。こういう機会をいただけて、ただただ「ありがたい」という言葉しか出てきません。

――初主演の『最高の生徒』のときも、「タイミングが大きい」とのお話でした。

 このお仕事はきっと、運も必要なのかなと思っているんです。ずっと諦めずにここまでやってきたからこそ、見てもらえることが増えて、気づいていただくタイミングがあったんだなと。

――2年くらい前と比べて、自分の演技が変わったと思う部分もありますか?

 無意識かもしれませんけど、現場でご一緒する役者さんのお芝居を見て、「こういう部分は取り入れてみよう」と思うようになりました。もともと小さい頃から、ドラマを観て「この台詞いいな」と思ったらマネして言ったり、遊び感覚でしていたんです。鏡に向き合って、同じ表情筋を使えるか試すようにもなって、積み重ねで自分のお芝居に繋がったのかもしれません。いろいろな演技ができるようになりたいので、たくさんの役者さんから自然に学んできました。

間近で見た繊細なお芝居を取り入れようと

――小さい頃には、どんなドラマのマネをしていたんですか?

 めちゃくちゃ好きだったのは『メイちゃんの執事』です。私と同じ名前の役ということから印象深くて、今考えてもすごく良いドラマだったと思います。当時はラブコメが多くて、『花より男子』とか『(花ざかりの君たちへ~)イケメンパラダイス』とか観てマネしていました。いつか自分もお芝居の世界でこんなふうにドキドキしたいと、漠然と思っていたかもしれません。

――最近の現場では、どんな学びがありました?

 『たとえあなたを忘れても』では堀田真由さんのお芝居を間近で見て、繊細な表情筋の使い方とか、学ばせてもらうことが多かったです。

――瞳が潤んで涙が流れたり、本当に細やかですよね。

 堀田さんが培ってきたものを見よう見まねでは絶対できなくても、盗めるところは盗んで自分のお芝居に活かしたい意識は、どの現場でも常に持っています。

――あのドラマだと芽育さんの演技でも、記憶を失う前にいじめられていたと知るところや、心療内科の先生に「好きです」と言うところなど、すごく心の機微を感じました。

 演技レッスンで先生に習ったお芝居の仕方もありますけど、今お話ししたように近くの役者さんから学んで、自分に置き換えてみることを繰り返しながら、できるようになってきたのかなと思います。

悔しい想いが原動力にもなりました

――目標を紙に書いて、壁に貼ったりするタイプではないんですね。

 全然やらないです(笑)。大谷翔平さんがノートに細かく目標を書いていたというのを見て、私もやってみようかと思いましたけど、性に合いませんでした。でも、日記は書いています。20歳のときにマネージャーさんからプレゼントでもらったノートに、思ったことを書いていたり。そのノートは誰にも見せられません(笑)。

――何か危ないことを書いているんですか(笑)?

 目標ややりたいことも書きますけど、たとえばオーディションに落ちたときに「私を選ばなかったことをいつか絶対後悔させてみせる」と決意を書いていたり。そういう悔しさが原動力にもなるので、じゃあ次はどうしたらいいかと、改善点をメモしたりもしていました。闇のノートでもあり(笑)、私の救いでもありました。

――思い通りにいかなかった時期に?

畑 携帯にもメモしていて、見返すと、高校生の頃は思うことがたくさんあったんだなとわかります。悔しかったこと、しんどかったことなど、その当時の感情がいろいろ残っていて。その頃の自分に「今はすごく幸せで、楽しくお芝居できているから大丈夫」と伝えたいです。

(C)「パティスリーMON」製作委員会
(C)「パティスリーMON」製作委員会

1年の間に役で何回も入院しました

――ここ最近の作品では、難しい役も多かったのでは?

 そうですね。去年は役で何回も入院しました。『Dr.チョコレート』ではトラウマで笑えない女の子、『最高の生徒』では余命1年、『たとえあなたを忘れても』では記憶障害を持っていて。『女子高生、僧になる。』や『ノキドア(ノッキンオン・ロックドドア)』でコミカルな役もやりつつ、自分自身がしんどくなる役がたくさんあって、感情が目まぐるしくて。よくあれだけやってこられたと、自分を誉めてあげたいです。

――『最高の生徒』では病気が進行して文化祭に出られなかった辺りから、観ていても辛くなりました。家でも重い気分を引きずったりしました?

 余命が限られているとわかっている役を3ヵ月間演じてきて、「明日も泣くシーンだ……」というのがあったりしました。でも、正直あまり思い出せません。大変なシーンも多かったけど、成長もできて、すごく意味のある夏でした。いまだに「(役の)ひかりはどうしているだろう?」と妄想したり、共演したみんなが元気にしているかなと考えたりします。

――一方で、コメディの『女子高生、僧になる。』では明るくハッチャケた役でした。

 演じてみると監督が何でも面白いと言ってくださって、すごく伸び伸び撮影させてもらいました。楽しかった記憶しかありません。

――役者として新しい扉が開いた感覚も?

 ありました。演じた麦ちゃんは1人でペチャクチャしゃべる子で、モノローグを録ることが多くて。そのしゃべりのテンションに合わせて、表情をコミカルにするのが私は好きです。

生クリームをかけたフルーツを2皿食べました

――『パティスリーMON』で演じる山崎音女はフランス洋菓子店で働く役ですが、お菓子作りはしたことありますか?

 ほとんどないです。小学生の頃にバレンタインで母と量産した友チョコや、炊飯器に入れたらケーキができたりする簡単なスイーツくらいですね。作ってみたいんですけど、準備と片付けが苦手なので(笑)、なかなかできなくて。スイーツを作る動画を観たりはしています。

――スイーツを食べるほうは?

 大好きです! 今回は洋菓子のお話ですけど、私は和菓子にも惹かれます。あんこやきなこがおいしくて、日本に生まれて良かったなと。でも、生クリームもめちゃめちゃ好きです。マネージャーさんの前で大きな声で言えませんけど、この前、生クリームとフルーツを無性に食べたくなって。自分で大量の生クリームをカシャカシャ泡立てて、イチゴにドンとかけて、1人で2皿食べました(笑)。

――今回の役作りのためではなくて?

 この作品が決まる前でした。それくらい甘いものは大好きで、用意されたら、いくらでも食べる感じです(笑)。音女ちゃんも甘いものが大好きなので、お芝居に役立つかもしれません。

カスタード作りの練習で右腕がパンパンに

――撮影前にケーキ作りの練習をしたそうですね。

 共演者の皆さんと一緒にしました。音女ちゃんはパティシエ見習いなので、シュークリームとカスタードを作る練習をして、皆さんが作ったショートケーキを持ち帰らせてもらって、家族で食べました。本当にありがたいお仕事です(笑)。

――作るうえでは、何が特に難しかったですか?

 全部難しいです。ケーキにフィルムを張る作業すら、なんて細かいんだろうと。カスタード作りも右腕の筋肉がパンパンになります。思い出すだけでしんどくなって、本当に大変なお仕事だと思いました。

――劇中では、シュー生地を手際よく混ぜるシーンがあるようですが。

 それは意外とできていたみたいで、「上手だね」と誉めてもらいました。でも、最初はシュー生地を絞るのも、監修のパティシエの先生の見よう見まねでやったら、まあ汚くて(笑)。なぜこんなに違うのか。均等な厚さのきれいな丸にならず、いっぱい練習して、ひたすら絞っていました。

――1日何時間も練習したんですか?

 初日は9時から5時までやりました。シュー生地を混ぜて、ボウルに洗剤を入れて泡立てることから始めて、お昼休憩を1時間取ったら、午後はお菓子詰めや洗いもの。1日アルバイトをした気分で新鮮でした。

卵を割るのも素早さが必要で

――卵の黄身と白身を分けたりもするんですよね?

 はい! あれは楽しいです。得意になりました。

――片手で卵を割ったりも?

 片手は難しいです。先生たちも片手ではなくて、1個1個ていねいに割っていました。何より違うのは素早さです。私が普通に割ると、コン、コン、パカくらいのスピードですけど、パティシエの皆さんは1回でカツンと割るから、その手際をどう表現するかを意識しています。

――「お菓子作りは体力勝負」という言葉が出てくるのも、実感しますか?

 パティシエは力も要るし、神経も頭も使います。監修の先生はタルトの飾り付けが一番難しいとおっしゃっていました。私はマニュアルみたいなものがあってパパパとやるのかと思っていましたけど、フルーツもひとつひとつ形が違っているから、それに合わせてきれいな見栄えにするのは苦労みたいです。

――食べる側はそこまで考えませんけど。

 かわいいね、パシャッと写真を撮ったりしていますけど、パティシエさんがどれだけ時間を掛けて、飾り付けをしてくれたのか。そう考えたら、大切に食べるようになりました。

現場のスピード感が染み付いてせっかちに

――音女は「そこいらの男よりタフ。根性もある」と言われますが、芽育さんもそうですか?

 最近、友だちにはせっかちだと言われます。衣装部さんにも「芽育ちゃんは着替えるのが早すぎて、こっちが追い付けない」と言われてしまうくらいで、バタバタしているんだと気づきました。本当はマイペースで、のんびり行きたいんですけど、現場はスピード命なところがあって。小さい頃からこのお仕事をやってきて、そのスピード感が染み付いてるみたいです。

――子どもの頃からやっていると、気づかないうちにそうなるのかも。毎クール主役級が続く中で、タフでもあるんですか?

 体力があるかはわかりませんけど、気持ちの面ではタフだと思います。いっぱい寝たいし疲れはしても、お芝居している時間が一番楽しいので。タフというより、楽しいことは苦でないのかもしれません。役者が天職というか、自分の体に合っているのはすごく感じます。

運命の出会いに憧れはあります

――原作マンガも参考にしていますか?

 原作に寄せて巻き髪にしたりするうちに、だんだん自分が音女に見えてきました。表情もマンガからインスピレーションを重ねています。

――音女のように、運命の人との出会いは信じます?

 わかりませんけど、今のところはないですね(笑)。ドラマやマンガでそういうのを見てきたので、本当にあるんだろうなとは思っていて。役との出会いでは運命というか、自分以外の誰かが演じていたらきっと悔しかったと感じることはあるので、恋愛でも憧れはあります。意外とロマンチストなので(笑)。

――かつて音女の家庭教師だったシェフの土屋幸平を巡って、恋のライバルとなる片岡雪役は山崎紘菜さん。原作通り、背が高い女優さんですね。

 私にないものを持ってらっしゃる方で、あまりに素敵な女性すぎて、私が惚れてしまいそうです(笑)。

小柄で親近感を持ってもらえるのは大きくて

――ご自分が小柄なことは、武器だと思っていますか?

 武器にもなると思う反面、コンプレックスを感じることもあります。パンツを買うと毎回丈を詰めないといけないし、コンサートでせっかくアリーナ席が当たったのに、厚底の靴でジャンプしないと見えないとか(笑)。「小柄でかわいらしいですね」と言ってもらえるのは良かったですけど、私自身はスタイルがいい方に惚れ惚れします。山崎さんもそうですし、小顔でスラッと脚の長い方を見ると、私にもこうなる人生があったのかなと考えたりもします(笑)。

――先ほど出た『メイちゃんの執事』を観ていた頃は、自分が榮倉奈々さんみたいなスタイルになると思っていたり?

 そうなんです。榮倉さんと生でお会いしたとき、神様は不公平だなと思いました(笑)。でも、最近は“ラブ・マイセルフ”ができています。スタイルがいい人の良さもあれば、私は小柄で親近感を持ってもらえるのが大きくて。自分を認めてあげて、容姿をどうこう思うことはあまりなくなりました。

――『パティスリーMON』に関しては、スイーツに囲まれる現場で「体型を崩さないように気をつけようと思います」とコメントされていました。

 本当にケーキは常に現場にあって、廃棄してしまう前に「皆さん食べてください」とビュッフェみたいにしてくれるんです。それを食べたいために、ごはんを少なめにしたり、逆に汁ものを食べてお腹を満たしてからケーキを食べたり、細かな調整をしています。なるべく歩くようにもしていて。

自分の機嫌の取り方を覚えました

――去年は仕事以外でも、良いことはありましたか?

 バタバタした1年ではありましたけど、『たとえあなたを忘れても』の神戸ロケの間は、お休みの日に街を散歩したり中華街に行ったり、時間をどう有効活用するか考えました。おいしいごはんを食べることも日々の癒やしですし、張り詰めた緊張感を解いて自分の機嫌の取り方を覚えた1年でした。

――大事なことですよね。

 ピラティスに通って自分の体と向き合って、精神統一やストレス発散の方法も見つけましたし、1人の時間も楽しめるようになりました。同年代の友だちは就活中だったり、もう働いていたりで、こちらの仕事は不規則だからスケジュールが合わないことが多かったんです。そういう中で1人で何をするか考えて、映画やごはんに行くのも楽しかったです。

ギャップを見せて知っていただけたら

――今年は『パティスリーMON』から、さらなる飛躍が見られそうですね。

 やりたいことはたくさんあります。ずっと言っていますけど、声のお仕事をしてみたくて。声優だったり、ラジオが好きなのでパーソナリティだったり。役者としての畑芽育より素に近いおしゃべりをして、知ってもらうきっかけになればいいなと。

――役者として、さらに磨きたいこともありますか?

 今まで心に闇のある役柄が多かったのが、去年は『(なのに、)千輝くん(が甘すぎる。)』や『女子高生、僧になる。』のコミカルなお芝居で、「こういう面もあるんだ」と言ってもらえました。バラエティやインスタライブでは、素の部分でドラマと違う印象も持っていただいて。そういうギャップを、これからも見せていけたらと思います。

Profile

畑芽育(はた・めい)

2002年4月10日生まれ、東京都出身。近年の主な出演作はドラマ『最高の生徒~余命1年のラストダンス~』、『女子高生、僧になる。』、『たとえあなたを忘れても』、映画『森の中のレストラン』、『なのに、千輝くんが甘すぎる。』など。1月10日スタートのドラマ『パティスリーMON』(テレ東系)に主演。

ドラマNEXT『パティスリーMON』

1月10日スタート テレ東系・水曜24:30~

出演/畑芽育、濱田崇裕(WEST.)、中川大輔ほか

公式HP

(C)「パティスリーMON」製作委員会
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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