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MLBがシャンパンファイトを全面禁止に! 今年のポストシーズンで選手たちは心底盛り上がれるのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今年はポストシーズンの風物詩を見ることができない(写真:ロイター/アフロ)

【MLBがポストシーズンに関する文書を送付】

 新型コロナウイルスのため60試合の短縮シーズンで実施されているMLBが、各チームともに残り試合が10試合余りとなった。両リーグ8チームずつ進出できるポストシーズン争いは、いよいよ佳境を迎えようとしている。

 そんな中、ニューヨークポスト紙のジョエル・シャーマン記者が、ポストシーズンの風物詩の1つである「シャンパンファイト」が、今シーズンは禁止される見通しだと報じている。

 すでにMLBからチーム、選手に禁止事項を確認する文書を送付しているという。

【ソーシャルディスタンス確保とアルコール全面禁止】

 シャーマン記者によれば、MLBは、ポストシーズンへの進出が決まった際やポストシーズンの各シリーズでの勝利が確定した際、チーム内での祝勝行為そのものを禁止しているわけではない。

 ただ現在も米国内で新型コロナウイルスの感染が収束傾向にないことから、チーム内クラスターを回避するためにも、ソーシャルディスタンス確保を重要視している。そのためクラブハウスを使用せず、グラウンドで実施することを推奨し、祝勝行為中もマスクの着用を求めているようだ。

 さらにMLBは各チームに対し、祝勝会でのアルコールを全面禁止するよう通達している。祝勝会でのアルコール類はすべてチームの裁量に任されており、今シーズンは会場にアルコールを持ち込むことはできなくなるのだ。必然的にシャンパンファイトは、実施不可能になってしまうというわけだ。

【濃厚接触、アルコール無しでどう盛り上がる?】

 現在も濃厚接触を避けるため、乱闘騒ぎや試合後の勝利チームによるハイタッチなど濃厚接触行為が禁止されている他、様々な制限が設けられながらシーズンが実施されている。

 さらに念願のポストシーズンに進出できたとしても、選手たちは抱き合うこともできなければ、祝杯を挙げることもできないのだ。果たして彼らはどのように勝利の喜びを分かち合うことになるのだろうか。

 長年MLBを取材してきて、ポストシーズン取材の醍醐味の1つがやはりシャンパンファイトなのは間違いない。あの独特の雰囲気を現場で味わえるのは、記者冥利に尽きた。そんな風物詩を見られなくなることに、かなりの寂しさを感じている。

 シャーマン記者も記事内で、MLBの決定を「miserable(悲惨な)」と表現しているように、やはり多くのメディアも同じ思いを共有しているのではないだろうか。

 最初から最後まで異例ずくめのMLBに、違和感が強くなるばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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