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『若草物語』四姉妹の末っ子→4人の弟の姉で主演の畑芽育 「男性キャストの中にも飛び込めました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2024「うちの弟どもがすみません」製作委員会 (C)オザキアキラ/集英社

ドラマ『若草物語-恋する姉妹と恋せぬ私-』で四姉妹の末っ子を演じている畑芽育。6日公開の『うちの弟どもがすみません』では一転、両親の再婚から突然イケメンでクセ強な4人の弟たちの姉になる役で、映画初主演を果たした。昨年からドラマ出演が相次ぎ、今年はCMでもよく目にするように。実り多い1年を振り返りつつ、語ってもらった。

「お姉さん」には違和感と嬉しさと

――ドラマでは姉妹ものが続いていますが、芽育さん自身は5人きょうだいの末っ子とか。良いことはありましたか?

 小さい頃はないものねだりで、ひとりっ子が羨ましいこともありました。一番年が近い姉が三つ離れていて、よくケンカもしていたんです。でも、20歳を超えて、姉や兄と以前より話すようになりました。助け合う家族が多いのは安心感がありますし、にぎやかな日々も楽しいです。

――『9ボーダー』でも『若草物語』でも末っ子役でしたが、『うちの弟どもがすみません』で演じる糸は、親の再婚から4人の弟ができた役。「お姉さん」と呼ばれるのは、どんな気分でした?

 すごく違和感がありました(笑)。ずっと末っ子で、役でもお姉ちゃんはなかったので。でも、新鮮で嬉しかったです。頼れる存在でいたい気持ちが芽生えてくる感覚があって、糸ちゃん自身のいきなりお姉ちゃんになった境遇に投影しました。

――お姉ちゃんの大変さもわかりました?

 わかります。私も生まれ変わっても、絶対に末っ子がいいと思うので。姉3人と兄を見て育って、母に怒られない術も学んで(笑)、おかげで人づき合いの仕方も培えたような気がします。

やさしくて長女のお手本のようです

――糸を演じるに当たって、実際のお姉さんを参考にしたところも?

 リアルだとぶつかることのほうが多いので、実の姉を参考にすることはなかったです。糸ちゃんのようにやさしくて、長女のお手本のような子はいないだろうな、なんて思いながら演じていました。

――糸はお姉ちゃんというより、お母さんのような振る舞いに見えました。

 まさにそんな感じがします。「肝っ玉母ちゃん」を目指していました。

――エプロンをしてごはんを作ったり洗濯したりは、自分でも普段やっていることですか?

 実家に住んでいることもあり、私はあまりやりません……。ごはんはたまに作りますけど、自分のエプロンは持っていないです。衣装合わせで、糸ちゃんに合うエプロンをいろいろ試してみるのは楽しかったです。

守るべきものができた感覚が大きくて

――糸が急にできた弟たちのためにあそこまで頑張るのは、どういう心境だったか考えましたか?

畑 やっぱり、ものすごくやさしい子なんだと思います。かつ、自分が母1人に育ててもらって、弟ができたことで家族がいる温かさに感づいた部分があったかもしれません。そういう嬉しさを人一倍感じやすい子で、守るべきものができた感覚が大きかった気がします。

――長男の源には「普通にしててくんない?」と言われてました。

 弟たちに気に入られたいというより、家族として愛情を育みたい一心で、それが空回りしちゃったのかと思います。

――他には糸のキャラクターについて、どんなことを感じました?

 登場人物で際立って不器用なのは源くんですけど、糸ちゃんもすごく不器用だと私は感じていて。一生懸命なゆえにひたむきになりすぎて、視野が狭くなってしまう。周りが見えなくなって空回りするのも、人間らしくてかわいいです。ちょっとどんくさいところもあるから、応援してあげたくなるなと思いました。

ホームドラマの部分もあって違うときめきが

――昨年ヒロインを演じた『なのに、千輝くんが甘すぎる。』と同じチームだそうですが、ラブコメのテイストとしてはだいぶ違いますね。

 全然違いますね。お話がガラッと変わって、恋愛要素だけでなくホームドラマの部分もあるので。あと、言ってみればきょうだいの恋で、学校や職場での恋愛模様より現実的でない部分が大きいですよね。それで観る方が入り込めなかったら、絶対に届かないと思いました。急に姉と弟になって恋が生まれる。そこをリアルに感じてもらえるように、糸ちゃんの言動にウソがないことを意識して演じました。

――キッチンでロールキャベツを作ってからの告白も、学園ものにはないシーンでした。

 好きな人と一緒にごはんを作るのが、あまりないシチュエーションというか。そこはまた今までの青春映画と違うときめきを感じられて、この作品の魅力のひとつだと思います。

――糸が源に餃子を「あーん」と食べさせたあと、「あまりにも感動的」と言ってました。

 あまり心を開いてくれない源くんが、自分が差し出したものを受け取ってくれたのが、感動的な瞬間だったのかなと思いました。お互い立っていて、作間さんは背が高いので、一緒の画角に入るのが難しかったです(笑)。

ずっと混乱状態で「どうなっちゃうの?」と

――糸が源とぶつかりながらも惹かれていく気持ちは共感しました?

 私は男女問わず、わかりやすい人が好きです。思っていることが口に出てしまう人と、仲良くなることが多くて。無愛想でとっつきにくい源くんを翻弄する糸ちゃんは、ある意味、小悪魔(笑)。源くんにとっても、きっと今まで接することのなかったタイプの女の子で、そんな2人の関係性は素敵だなと思います。でも、私自身が源くん派かといったら、そうではありません(笑)。

――源と三男の柊に取り合いされる状況は、演じていても気分良いもの?

 むしろ困ります……(笑)。予告を観ていても思ったのが、糸ちゃんはずっと混乱状態だなと。環境が急激に変わって、自分が源くんに惹かれるとは思ってなかっただろうし、まして姉と弟同士の三角関係になるなんて。すべてが非現実的で「どうなっちゃうの?」というのが、常に糸ちゃんの中にありました。

夢を投影できても現実だったら…

――柊に「俺じゃダメかな」と言われるのは、恋愛ものでよくある定番ですが、憧れのシチュエーションだったりはしました?

 マンガ原作の青春映画だからこそ、ですよね。こういう作品の良さは、自分が体験していない夢のような状況を、ヒロインに投影して観られることだと思うんです。でも、リアルでそんなことを言われたら、どうなんでしょう……。ちょっと想像ができないです。

――四男の類はリアルにかわいかった感じですか?

 本当に弟のような感じでした。演じている(内田)煌音くんとは、空き時間に家族や学校のことを聞いたり、一番話したかもしれません。キビキビ動いてくれて、現場で一番しっかり者な印象があって、逆に煌音くんがどう思っていたのか気になりました。私も経験ありますけど、年齢的には一番下だったので、お弁当や差し入れを食べて楽しそうな姿を見ると、安心しました。

――源役の作間龍斗さんにはどんな印象が?

 同い年で前から作品を拝見していて、頼れる印象がありました。現場でも朝から晩までテンションが変わらず源らしくいてくれて、かつユーモアがあって。一緒にいる人を退屈させない方なのだろうなと思いました。

天候の試練の中でチームワークが高まって

――特に印象に残っているシーンはありますか?

 6月の雨降る中での撮影もありましたし、めちゃくちゃ暑い日も続いて、スタッフさんも大変だったと思います。そんな天候に左右されていたとは思えないほど、どのシーンも皆さんで協力して作り上げられました。試練が多い中でチームワークが高まって、出来上がった映像も素敵な仕上がりになっていました。

――庭の草刈りをしていて倒れたシーンは、実際にクラクラしたり?

 その日はたまたま過ごしやすい気候だったんです。前日は「外で本当に倒れちゃいそう」と話していたんですけど、順調に進みました。

――帰省して川でバーベキューをしていたシーンは楽しげでした。

 暑かったですけど、家でのシーンが多かったので、みんなで外ロケに出てリフレッシュできました。

全然違う気合いのスイッチを入れて

――映画初主演ということで、いつにも増して力が入りました?

 私は自信があるタイプでなくて、どちらかというと余計なことを考えてしまってネガティブなんです。現場でもなるべく皆さんに迷惑を掛けないように、スムーズに進むことばかり考えていることが多くて。自分から他のキャストの方に話し掛けるのも苦手です。空気を自分で作っていくのでなく、作られた環境に飛び込んでいく立ち回り方をしていました。でも、今回は全然違う気合いのスイッチを入れました。

――今までしなかったことをやったり?

 キャストの方に話し掛けるのも、今回は男性が多かったので、よりハードルが高い感じでしたけど、4人ともやさしくて穏やかで、飛び込んでいけました。私自身の意識も今までとは違っていたので、一歩踏み込んでみようと頑張る力が出ました。

――1本撮って、自分の中の変化もありました?

 ものすごくありました。作品を背負う感覚が全然違いましたし、今回は家族になる設定ということもあり、皆さんとのコミュニケーションをいろいろ考えて、弟4人もいい意味で私に気をつかわずに接してくれて。他愛ない話をしながら、スタッフさんも含めてお弁当を食べたり、本当のきょうだいみたいな空気感を作れました。

常に謙虚でいたいと思っています

――今年は連ドラ3本にCM出演も相次いで、大活躍でした。

 バラエティとか新しい挑戦もさせていただいて、満たされることが多い1年でした。

――陰での葛藤もなかったですか?

畑 いろいろ考えたり、新たなステップアップのためにどうしたらいいか、自問自答を繰り返す日々ではあります。でも、誰かと比べるより、きのうの自分、1ヵ月前の自分、1年前の自分と比べて、どこがどう変化したのかを考えています。撮影現場でもモニターで自分のお芝居を見て、どうしたらもっとお客さんに伝わるか日々反省しながら、成長していけたらいいなという気持ちです。

――何か努力目標があったりは?

 この役ではこれが壁になる、この現場ではこういたいと、1クールごとに環境が変わるのに対応していかなければ……というのはありました。私も22歳になって、『うち弟』でもそうでしたけど、自分より年下の役者さんやスタッフさんがいることも多くなって。そこで常に謙虚でいたいとも思います。

――主役をやっても謙虚さは忘れないと。

 急に偉そうになったら面白いですけど(笑)、そうはなりません。私は芸能界にいる時間が長い分、撮影に慣れてきちゃうのも良くないので、常に新鮮な気持ちで作品に入ることも心掛けています。

次のフェーズへ気持ちの準備はしていて

――知名度が上がってきたことは感じますか?

 外で声を掛けていただくことが増えたり、同級生や周りの友だちから「テレビで観たよ」と言われたりします。自分でもCMが流れて「あっ、私だ!」とハッとすることが多いです。やってきたことが実りになっていて、無駄がひとつもなかった1年だと感じています。

――これだけ出演作が続くのは、自分の何が求められていると捉えていますか?

 自分がどうかというより、出演させていただく作品とキャラクターに恵まれている気がします。何だか応援したくなるような役だったり、次に繋がることも多くて。努力してきたことを自分で認めてあげたいとも思いますが、運やタイミングが味方してくれることも大きいです。ヒロインや主役を任せてもらえるのは簡単なことではないので、その都度感謝しています。

――『若草物語』では今までなかった大人なシーンもありました。

 まだ学生役が多いですけど、もう少しでお仕事が絡んでくる役柄だったり、年齢に合わせて次のフェーズに行くと思います。何となく気持ちの準備はしているところです。

プライベートも楽しさいっぱいでした

――これだけ忙しいと、プライベートを楽しむ時間は少ない1年でした?

 そんなこともなくて、プライベートでも楽しさいっぱいの日々でした。ずっとドラマに出させていただいているので、会う方ごとに「忙しいでしょう」と気をつかってもらいますけど、お休みも十分取れていて。いろいろなところにお出掛けもして、息抜きもできました。

――そちらではどんな思い出がありますか?

 『9ボーダー』でご一緒した川口春奈さん、木南晴夏さんとはすごく仲良くさせてもらっていて。春奈さんの家にうかがったり、3人で毎月のようにごはんに行ったりしてます。あと、台湾旅行もしました。5年ぶりくらいの海外で日本と違う文化に触れて、感性も刺激されましたし、これからの人生にいい影響をもらえました。

――台湾は何かお目当てがあって?

 何となくずっと行きたかったんですけど、台湾のごはんを食べたかったです(笑)。

――年末年始はどう過ごすんですか?

 例年、親と『ゆく年くる年』を観て寝ます(笑)。出不精なので初詣にも行きませんし、穏やかに過ごしていて。春夏秋冬では冬が一番好きなので、1年の締め括りに母と温泉とか行けたらと思っています。『うち弟』も大ヒットして、最高の締めになったら嬉しいです。

Profile

畑芽育(はた・めい)

2002年4月10日生まれ、東京都出身。近年の主な出演作はドラマ『最高の生徒~余命1年のラストダンス~』、『たとえあなたを忘れても』、『パティスリーMON』、『9ボーダー』、映画『森の中のレストラン』、『なのに、千輝くんが甘すぎる。』など。ドラマ『若草物語-恋する姉妹と恋せぬ私-』(日本テレビ系)に出演中。12月6日公開の映画『うちの弟どもがすみません』で主演。

『うちの弟どもがすみません』

監督/三木康一郎 脚本/根津理香 原作/オザキアキラ

出演/畑芽育、作間龍斗、那須雄登、織山尚大、内田煌音ほか

12月6日より全国公開 公式HP

(C)2024「うちの弟どもがすみません」製作委員会 (C)オザキアキラ/集英社
(C)2024「うちの弟どもがすみません」製作委員会 (C)オザキアキラ/集英社
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埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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