Yahoo!ニュース

なぜシティはJ・アルバレスを放出するのか?ハーランドの“2番手”に…アトレティコとシメオネの算段。

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶシティの選手たち(写真:ロイター/アフロ)

この夏の目玉になるニュースが、飛び込んでくるかも知れない。

フリアン・アルバレスを狙っているアトレティコ・マドリーだが、その獲得が現実味を帯びてきた。 アトレティコはマンチェスター・シティに対して移籍金7000万ユーロ(約112億円)を支払う準備を進めており、合意は目前といわれている。

■J・アルバレスのキャリア

J・アルバレスは2022年夏、シティに正式加入。移籍金2140万ユーロ(約34億円)が支払われ、アルゼンチンの至宝がイングランドに渡った。

欧州初挑戦だったJ・アルバレスであるが、その後、順調にキャリアを積んでいる。2022年のカタール・ワールドカップでは、アルゼンチン代表の優勝に大きく貢献。エースのリオネル・メッシを生かすため、チームプレーに徹していたのは記憶に新しい。この夏には、コパ・アメリカとパリ五輪にも出場している。

J・アルバレスとハーランド
J・アルバレスとハーランド写真:ロイター/アフロ

一方、シティでは、喜びと苦しみをどちらも味わってきた。同時期にアーリング・ハーランドが加入したことで、ジョゼップ・グアルディオラ監督のファーストチョイスは、そちらに傾いた。ただ、指揮官を責めるのは難しい。昨季のハーランド(38得点)とJ・アルバレス(19得点)のゴール数を比較してみても、決定力に関してはハーランドに分があるのは否めない。

■アトレティコの思惑

そのような状況で、アトレティコがJ・アルバレスの獲得に動いた。

アトレティコは、今夏、アルバロ・モラタとメンフィス・デパイが退団。モラタはミランに移籍し、デパイは契約満了でフリーの選手になった。スペイン代表とオランダ代表のストライカーが抜けて、ディエゴ・シメオネ監督はFWの補強を求めていた。

ロビン・ル・ノルマンを確保した後、アトレティコはアレクサンダー・スルロットを獲得した。スルロットは昨季、ラ・リーガ1部で23得点をマーク。ピチチ(得点王)こそアルテム・ドフビックに譲ったものの、ビジャレアルで獅子奮迅の活躍を見せた。

他ならぬドフビックに関心を示していたアトレティコだったが、彼はジローナからローマに移籍した。スルロットを手中に収めたが、“二枚獲り”を目指してJ・アルバレス獲得を検討している。

FW補強を必要としているアトレティコ
FW補強を必要としているアトレティコ写真:ロイター/アフロ

「僕は、昨シーズン、プレミアリーグで最もプレータイムの多い選手の一人だった。それは事実だ。だけど、ビッグマッチでベンチに座らないといけない状況は、選手としては嬉しいものではない」とはアルバレスのコメントだ。

「これから、決断する時間がある。冷静に考えたい。オリンピックが終わった後、自分が何を望んでいるかを明確にするつもりだ」

■シティの補強

他方で、シティは今夏、ここまでサビーニョを移籍金2500万ユーロ(約35億円)で獲得するに留まっている。J・アルバレスを売却すれば、ボーナスの1000万ユーロを含めて、8000万ユーロ(約128億円)の収入が見込める。まったく悪い話ではない。

その資金を当てに、さらなる補強に動くのも可能になる。エベレチ・エゼ(クリスタル・パレス)、ロドリゴ・ゴエス(レアル・マドリー)、フビチャ・クヴァラツヘリア(ナポリ)の名前がメディアでは踊っている。

選手たちに指示を送るグアルディオラ監督
選手たちに指示を送るグアルディオラ監督写真:ロイター/アフロ

「アルバレスが、将来について考えているというニュースを聞いた。考えて、その後、我々に決断を伝えてくれたらいい。彼は、多くの試合に出場した。より多くを望んでいる? 良いと思う。しっかり考え、決めたら伝えて欲しい」

「アトレティコの関心についてだが、私から言えることはない。アルバレスはシティの選手で、もうすぐ戻ってくる。オリンピックとコパ・アメリカの祝福をして、それから一緒に働く。彼は私の構想に入っている」

これはグアルディオラ監督のコメントだ。

新シーズンに向けて積極的に動いているアトレティコ
新シーズンに向けて積極的に動いているアトレティコ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

アトレティコはJ・アルバレスを獲得するにあたり、資金捻出のため、サム・オモロディンの売却を考慮している。売却先の候補はチェルシーだが、コナー・ギャラガー獲得にも動いており、そちらは少し複雑なオペレーションになっている。

いずれにせよ、アトレティコのJ・アルバレス獲得の意思は変わらない。マーケットは、最後まで何が起こるか分からない。それでも、アルバレスがロヒ・ブランコのシャツに袖を通すまで、カウントダウンが始まっている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事