【春のおすすめ野菜】野菜が進化?生きる術? <越冬野菜・雪下野菜>
「寒締めほうれん草は一般的なほうれん草に比べポリフェノールの量が多い」というのを前回書きましたが、寒締めほうれん草のように、この冬の時期にしかめぐり合えない「越冬野菜」は栄養価が高いだけでなくおいしさもアップしています。
「越冬野菜」とは、雪の下や土の中で冬を越した野菜のことです。“雪下野菜”などとも呼ばれ、白菜、キャベツ、ジャガイモ、ニンジンなどがあります。
冬の寒さで野菜は凍らないの?
野菜は水分が多いため、気温が氷点下になると凍ってしまいます。凍ると細胞が壊れるため、野菜は生きていけません。凍らないようにするため細胞内の「デンプン」を「糖」に変え、水ならば凍ってしまうところを糖にして凍らないようにします。糖はおよそマイナス10度まで凍結しにくいので、野菜は凍らず甘くなるのです。これは「凝固点降下」という現象で、純粋な水は0度で凍るけれども、食塩水や砂糖水のように、水に何かが混ざった状態だと、さらに低い温度まで液体として存在し、凍りにくくなるのです。
全国的に栽培されている「ちぢみほうれんそう」は宮城県東松島市(矢本地区)が発祥といわれています。露地で栽培しているほうれんそうは寒さに当たるので、凍らないように水分を減らし糖度を蓄えていきます。寒締め栽培といわれる方法です。一般的なほうれんそうの葉はつるつるしていますが、ちぢみほうれんそうの葉はギュッと縮んだようになっています。また、葉の厚さは厚くなり、地面に張り付くように横に平べったく育ちます。寒さに耐え、甘さと栄養分を蓄積しています。
一番外の葉を利用して白菜の上の部分を縛り上げ、凍らないようにしています。
テレビ朝日「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」番組内でも紹介したのが、北海道和寒町(わっさむちょう)の「越冬キャベツ」と清里町しのだファームさんの「2年熟成インカのめざめ」です。さつまいものようにねっとりとして甘みがあり、衝撃的なじゃがいもです。
雪の下は0度で温度が一定な上、湿度が95〜100%と高く、ニンジンが凍ることはありません。みずみずしく歯切れのよい食感で食べやすくなります。雪の下で越冬することによってアミノ酸が増加するだけでなく、ニンジン独特の香りが少なくなり、もともとニンジンが持っていた甘みが引き立てられたということも考えられます。
冬に不足しがちな野菜の確保のため、米沢藩9代藩主 上杉鷹山公が栽培を奨励した、雪の中で育つ珍しい野菜「雪菜」です(仙台雪菜とは別のものです)。雪菜は、雪の中で育つために自らの葉の栄養分を使い「とう(花茎)」を伸ばします。伸びたとう(花茎)を食べます。生で食べるとほのかに甘いですが、苦みもあります。一般的にはピリっと辛い「ふすべ漬」にして食べます。
冷蔵庫で白菜の糖度を高める実験
冷蔵庫で再現できるのか、チャレンジしてみました。
半分にした白菜をラップで巻き、冷蔵庫で立てて冷蔵しました。
2日間で中心部は6.3度から6.7度。外側は3.2度から3.8度になりました。若干糖度は上がりましたが、食べてみてもあまり分からない程度でした。当然雪下で保存する環境と冷蔵庫での環境は異なるのですが、今後も他のパターンを試していきたいと思いました。
これからスーパーにもいろいろな「雪下野菜」がお目見えするかと思いますので、その際には一度手に取って食してみてください。僕も3月にニンジンを掘りに行く予定です。