【京都市伏見区】10人で120人分!炊き出し体験で学んだこと|「KYOTO 学防災」体験レポート
2023年5月20日(土)に藤森神社(京都市伏見区)で「第2回 KYOTO 学防災(まなぼうさい)」が開催されました。
「KYOTO 学防災」は、東日本大震災で被災、京都へ避難された星さんご夫婦が発案された防災イベントです。「たくさんの組織・企業や地域の人たちの協力で少しずつカタチになって来ました」という星さん。
当日は、起震車による地震体験、消防車や自衛隊車輌の展示、炊き出し体験、写真洗浄体験、マルシェの開催などがあり多くの人が会場を訪れました。
実際の災害現場ではトラブル続出が当り前!エキスパートから学ぶリアルな炊き出し
全国各地の被災地で炊き出しの実績を持つ、NPO法人「BOND & JUSTICE」(通称:ボンジャス)の代表理事・大圡(おおど)さんの指導のもと、10人で120人分の炊き出しを体験するブースにわたしも参加しました。
※ 実際には炊き出しの作業をしながらお話しいただいた内容をインタビュー形式でまとめています。
炊き出しの配布時間は厳守
前日の雨で事前準備ができなかったため、当日は当初の予定よりも1時間半繰り上げた8:00に集合し、準備を開始しました。
──よろしくお願いします。
大圡: よろしく!じゃあ、レンコンの皮をむいて!(ピーラーと大量のレンコンを手渡される)
──あ、は、はい。
大圡: 人づかい荒いでしょ?被災地でもさ、よく言われる。(笑)
みんなに手伝ってもらわないと手が足りないからね。
──今日は12:00から炊き出しの配布なんですよね。
大圡: そう。炊き出しは時間厳守。避難所では食事の時間だけが楽しみだからね。
それに被災地ではみんなやることがいっぱいあるから、炊き出しの時間が遅れると迷惑がかかってしまう。
だから、炊き出しの配布時間は絶対に守らないといけないの。
──なるほど。このレンコンはなにに使うんですか?
大圡: 薄く切って、梅と和える。サイコロ切りにして、根菜スープ。カレー味のね。
被災地ではさ、集まってる食材でメニューを決めるの。カレーをつくろうと思って進めてても「あれ!ルゥが足りないんじゃない?」ってことがあって。急きょカレー味のスープに変更するとか。そんなことばっかりだよ。
被災地ではなにが起こるかわからない
炊き出しもいよいよ最終段階。約30人分のお弁当のケースにご飯やおかずを詰め終わったところで、お弁当のフタが届いていないということが発覚したのです。
作業スペースが限られているため、お弁当のケースにフタをして重ねないと次の炊き出しの準備が進まず、炊き出し体験に参加しているメンバーが右往左往する状況になりました。
「衛生上良くないから、とりあえずラップしておきましょうか?」
「作業スペースをつくらないといけないから、できあがっている分だけ先に配布しましょう!」
「じゃあ、用意できている数を伝えて誘導してください!」
突然のハプニングに戸惑いながらもなんとか時間通りに炊き出しの配布を開始することができました。
ですが、その後、大圡さんからとんでもない暴露が。実は、お弁当のケースのフタは用意されていなかったのではなく、大圡さんがあえて出さなかったとのこと。
──えー!フタ、あったんですね。
大圡: (ニヤリとしながら)被災地では全部そろっているわけじゃないからね。だから今日はあえていくつも“ミス”を用意しておいた。
たしかに、被災地だとお弁当のケースやおはしも用意できるかわかりません。数々の被災地をまわり、炊き出しを経験している大圡さんからの試練は強烈なメッセージとして心に刻まれました。
──大圡さん、今日はありがとうございました。勉強になりました。
大圡: 良い炊き出しができましたね。良いチームでした。
大人も子どもも、遊びながら、楽しみながら“災害に対する備え”を学べる防災イベント
「KYOTO 学防災(まなぼうさい)」の主催者である星さんは「地域力は防災力」をコンセプトに、地域の人と人とのつながりが一番の防災になることを発信し活動されています。
会場である藤森神社の参道には緊急車輌が並び、多くの人たちが防災イベントを楽しんでいるようすが見られました。
大人も子どもも、遊びながら「もしも災害が起きたら…」と考えるキッカケになったのではないでしょうか。
起震車による地震体験
起震車とは、地震を模擬体験できる自動車で、実際に地震が起きた時に冷静に対処できることを目的としているそうです。
震度7を体験した子どもたちの「キャー」という声が響いていました。ガタンガタンと激しく揺れ、椅子に座っているのも困難な状態。客観的にこの揺れを見るだけでもあらためて地震の怖さを実感しました。
消防車の展示
消防士の服を着て、消防車に乗れるとあって、行列が絶えないほどの大人気。
自衛隊車輌の展示
自衛隊車輌の展示にも多く人たちが行列をつくっていました。陸海空それぞれの制服を着用でき、写真を撮ったり、車輌に乗ったりできます。
会場では「自衛隊カード」が配布されたり、ステージでのトークライブが開催されたり、自衛隊の任務を正しく知ってもらいたいという思いが伝わって来ました。
「被災者にとってはヒーローなんです」(「TEAM 学防災」のInstagramより)
東日本大震災で被災され、自衛隊の活動を目の当たりにされた星さんの言葉の重み。リアルな声を聞けるのが、この防災イベントの特徴のひとつです。
docomoによる災害対策・移動基地局のトークライブ・ブース設置
唯一の民間企業として参加されたのが、docomo(株式会社ドコモCS関西)です。
災害が起きた時に、携帯電話をはじめとした通信手段の確保は生きるか死ぬかに直結する最も重要なテーマのひとつ。
会場では移動基地局車も展示されるなど、docomoの災害時の取り組みが紹介されました。
地域のお店や東北地方などの物産品が集まるマルシェ
星さんご夫婦が提唱する「地域力は防災力」に賛同する地域のお店や東北地方などの物産品が集まるマルシェも開催されました。
「チャコルマート墨染」の北側にある「Cali’s Bar(カーリーズバル)」も出店。
「BOND & JUSTICE」のブースでは東北地方の物産品や熊本の刃物などが販売されていました。被災地の物産品を販売することで、被災地を応援したり、活動資金に充てたりされているそうです。
「KYOTO 学防災」の情報はInstagramや「SMILE STAR」へ
「KYOTO 学防災(まなぼうさい)」の情報は、「TEAM 学防災」のInstagramや星さんご夫婦が経営されている「Cafe&Bar SMILE STAR(カフェ&バー スマイルスター)」で発信されています。
「Cafe&Bar SMILE STAR」は墨染通りにある(藤ノ森小学校の南門の近く)お店で、50年代のアメリカをイメージしたという店内はポップな雰囲気。ハンバーガーが美味しいので、ぜひ立ち寄ってみてください。