若者と高齢層で「老後の生活資金源」構想は大きく異なる
・老後の生活資金源は公的年金、就業収入、企業・個人年金・保険金がトップ3。単身世帯では金融資産の取り崩しがトップ3に割り込む年齢階層も。
・二人以上世帯、単身世帯ともに若年層ほど公的年金への信頼度は若年層ほど低く、将来働く意欲は高い。
・二人以上世帯では20代の1割近く、単身世帯では全年齢階層で1割前後が、自分の老後において生活保護などを受けることを前提として考えている。
「老後の生活資金源」構想、二人以上世帯の場合
公的年金、就業収入、子供などからの援助…老後の生活資金源に関する考え方は人それぞれ。その実情を金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。
まずは二人以上世帯における世帯主の年齢階層別・老後における生活資金源(の思惑)。場合によってはすでに老後に突入している人もいるため、「老後の想定」以外に「すでにその資金源で生活している」人も含まれる。特に高齢層は、現状を示している場合が多いと見てよい。
公的年金をもっとも頼る人が多いのは明らかだが、高齢者ほどその値が高い。見方を変えると若年層ほど、公的年金への期待ができないとの意識を持っていることになる(70歳以上の場合は身体の衰えから就業収入を望めない場合もあるだろうが)。一方、若年層ほど就業収入や企業・個人年金・保険金の値が高く、公的年金以外の手立てで老後を支えていくとの意志が見えてくる。金融資産の取り崩しは年齢を問わず、ほぼ一定率を維持している。20代で低めの値が出ているのは、まだ(ほとんど)具体的な蓄財をしていないからだろうか。
気になるのは絶対値としては少数だが、公的援助、具体的には生活保護などと回答する事例が一定率で確認できること。特に20代では9.2%と1割近い値を示している。今件は「主な生活資金源」として3つまでを挙げてもらった結果であることから、「20代の1割近くは、自分の老後において生活保護などを受けることを前提として考えている」ことになる。
調査結果の公開値には多様な属性の回答値が収録されているが、そのうち高齢年金生活者と推定できる属性、具体的には「世帯主の就業先産業別」で無回答、「(世帯の)就業者数別」で就業者無しの世帯における動向を確認したのが次のグラフ。
大よそ年金生活による夫婦世帯の生活資金源の内情を推し量れるが、公的年金がもっとも多く、次いで企業・個人年金・保険金や金融資産の取り崩しが続く。利子配当や不動産収入、子供などからの援助は、少なくとも主要な3資金源として挙げる人は少数。公的援助は5%強となっている。
単身世帯の場合
単身世帯の動向は次の通り。年齢階層別仕切りが60代までで、ほぼ年金生活者で占められる70歳以上の階層区分が無いのが残念だが、大よそ60代が類似動向のものとして判断できる。なお単身世帯向けの調査では高齢年金生活者と推定できる属性に関する調査は行われていないため、精査は省略する。
大勢は二人以上世帯と変わらないものの、公的年金への信頼感は一層低く、40代までは5割に届かない。さらに企業・個人年金・保険金への期待度も10~20%ポイントほど低め。金融資産の取り崩しはあまり変わらず、代わりに利子配当への期待がいくぶん高くなっている。
気になるのは公的援助の回答率の高さ。二人以上世帯では無かった1割超えだが、単身世帯では30代から50代にかけて1割超えの値を計上し、40代では13.2%もの高い値。20年前後は先になるであろう老後の生活資金源に係わる将来設計で、すでに生活保護を念頭にしている人がこれだけ存在している状況は、憂慮すべき話に違いない。
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※家計の金融行動に関する世論調査
直近分となる2017年分は二人以上世帯においては、層化二段無作為抽出法で選ばれた、世帯主が20歳以上でかつ世帯員が2名以上の世帯に対し訪問と郵送の複合・選択式で、2017年6月16日から7月25日にかけて行われたもので、対象世帯数は8000世帯、有効回答率は47.1%。単身世帯においてはインターネットモニター調査で、世帯主が20歳以上70歳未満・単身で世帯を構成する者に対し、2017年6月23日から7月5日にかけて行われたもので、対象世帯数は2000世帯。過去の調査も同様の方式で行われている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。