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「特攻平和会館に行きたい」と発言した早田ひなのウェイボー 中国人はコメント欄に何と書き込んだ?

中島恵ジャーナリスト
パリ五輪・卓球女子団体の表彰式で(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

パリ五輪の卓球女子で活躍した早田ひなが、帰国後の8月13日に行われた記者会見で「アンパンマンミュージアムと鹿児島(知覧)の特攻平和会館に行って、自分が生きているのと、卓球ができているのが当たり前じゃないことを感じたい」と発言したことが物議を醸している。

早田は8月12日、中国の卓球男子選手、樊振東のすすめで中国のSNS、ウェイボー(微博)を開設したばかりだったが、樊と女子のエース、孫穎莎の2人が早田のウェイボーのフォローを外したことを中国メディアが報道したことがきっかけだった。

奇しくも、8月15日の終戦記念日の直前で、日本では「戦争」や「平和」関連の話題が増えるというタイミング。日本では早田の発言について賛否両論、さまざまな意見が飛び交っているが、早田のウェイボーにはいま、中国人からどのようなコメントが書き込まれているのだろうか?

ウェイボー開設から5日間で3回投稿

8月12日に開設された「早田希娜」(早田ひなの中国語。ひらがな部分には漢字を当てている)のウェイボー(=以下の写真参照)を見てみると、日本語の「皆さんこんにちは!早田ひなです(絵文字)オリンピックでは沢山の応援ありがとうございました」という挨拶のあと、中国語で同様の挨拶が書き込まれており、試合中や表彰式、パリ市内で撮ったものなど5枚の写真が添えられていた。

この投稿には8月16日の13時(日本時間)時点で8万6000の「いいね」がつき、コメントは約9500あった。

早田ひなのウェイボー(筆者によるスクリーンショット)
早田ひなのウェイボー(筆者によるスクリーンショット)

続いて、同日にもう1回投稿しており、そこには早田と仲がよいといわれている樊振東とのツーショット写真1枚を掲載。中国語で、選手村で会った樊とピンバッジの交換をしたこと、樊のおかげでウェイボーで中国人と交流できることに感謝していることなどを綴っていた。

これは報道写真ではなく、プライベートで撮った貴重な写真だったこともあってか、約20万もの「いいね」と約1万2000のコメントがあった。

さらに翌13日には、喜んでいる絵文字とともに、卓球女子団体の表彰式で孫穎莎、陳夢とともに撮った写真を投稿。これにも約18万の「いいね」と約1万6000のコメントがあった。

コメント欄に書かれていたこと

早田はウェイボーを開設した8月12日から16日までのわずか5日間で11万人以上のフォロワーを獲得。約690万人のフォロワーを持つ孫穎莎、約450万人のフォロワーを持つ樊振東からのフォローもあって、にわかに注目を集めた。

開設日のコメント欄を見ると、中国でのニックネーム「苹果醤」(りんごちゃん)や「hina醤」(ひなちゃん)などを用いて、「りんごちゃん歓迎」「ひなちゃん、本当に大好き!」などの好意的なコメントが多かった。だが、13日の「特攻平和会館に行きたい」という発言後、コメント欄が徐々に荒れ始める。

3つの投稿それぞれに、この発言を知った中国人のフォロワーからネガティブなコメントが書き込まれた。たとえば、「どうして神風隊記念館に行きたいなどと言ったのか」「卓球をするだけでいいじゃない。なぜ政治に関与するの?」、「1945年8月15日 日本は無条件降伏」、「好感が持てない」、「731部隊のことを知っているか」「日本鬼子」などといったものがあった。

「ひなちゃん」を応援する声も

だが、13日の会見以降のコメントの中には、引き続き、早田を応援するコメントも少なからずあった。それらの一部は以下のようなものだ。

「りんごちゃんと小莎(孫穎莎のニックネーム)はどちらもこの世界でとくに美しい女の子だ」、「2人のかわいい00后(2000年代生まれ)、この先もしっかり歩んでほしい」、(孫とのツーショット写真とともに)「トップアスリートの競争は尊敬に値する」、「なんてかわいいあなたたち」、(早田の投稿時間が遅かったからか)「ひなちゃん、まだ寝ていないの?早く寝てね」

SNSでは常にネガティブな投稿が注目を集め、一部は誹謗中傷へと発展する傾向がある。しかし、コメント欄をよく見てみると、引き続き、早田を応援している中国人も多いことがわかる。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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